お茶屋の小町娘が手折られる話は悲しいね — 和田はつ子「料理人季蔵捕物控 涼み菓子」(時代小説文庫)

シリーズも12弾目となると、登場人物に少々の変更というか、環境変化が欲しくなるところなのだが、本作で、季蔵の弟分・豪介の身の上に変化が起きる。
収録は
第一話 涼み菓子
第二話 婿入り白玉
第三話 夏の海老
第四話 乙女鮨
となっていて、まずは豪介が、「みよし」という甘酒屋の看板娘・おれいの婿取りのコンテストに立候補するところから始まる。そのコンテストというのが、この店に出す「冷やし甘酒」に合う「涼み菓子」を考案するということ。
で、豪介が季蔵の助けを借りながら考案するのが、西瓜糖を使った菓子なのであるが、その菓子ができて、婿取りコンテストの結果も、ってなところで、この甘酒屋の小町娘に不幸が訪れる、といった展開となる。
総体に、このシリーズは、好事魔多しというか、上げ潮にのって調子づいていると、それと同じくらいに下げ落とされるというのが常で、今回の話も、後半は、その小町娘の事件の謎を解くというもので、彼女に限らず、幾人かの美人娘が殺されるので、少々気が滅入ってくるものではある。なんにせよ、若い美女が死ぬってのは良くないよね。
まあ、この巻の清涼剤は、豪介と季蔵の考案した、黒砂糖、ざらめ、水を煮詰めた黒蜜に西瓜糖を一匙加えて白玉にかけた「涼み菓子」と、最後の話の各々牛蒡のシャクナギ、蓮根の揚げ牡蠣、茄子の昆布締めが詰められた「乙女鮨」であろうか。
最後の方で、豪介の身の上の変化にちょっと救われた気がするので、最後まで読んでくださいな。

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