缶詰は意外に侮りがたいものの象徴であるか ー 『日本全国「ローカル缶詰」驚きの逸品36』(講談社+α文庫)

美食もの、食い物本は数々あるが、本書のように「缶詰」のみを取り上げたものは見当たらないといっていい。

取り上げられている缶詰は

むきそば、またぎ汁、極上いちご汁、本格鯖、がめ煮、タコライス、ふくちり、つぶ水煮、金目鯛、炙りビントロオリーブ油漬、鱒財缶、やきとり柚子こしょう味、オイルサーディン、かきくん醤油づけ、缶つま 北海道ししゃも&子持ちししゃも、味付巻ゆば、そぶくめ、ご当地コンビーフ、デコポン、鯖のへしこ、だし巻き、金華さばみそ煮、宝うに エゾバフンウニ、ごぼう「いわし煮付、日本橋鍋、いなご甘露煮、サバタケ、清水もつカレー、入れ炊く 国産桜えび、貝付流子、さざえ味付、伊達の牛タン大和煮、ミニとろイワシ、ハッシュドビーフ、こだわりせんべい汁

の36缶。

一缶2900円のウニ缶や4200円のサザエ缶など高級なものもあるのだが、親近感をもてるのは500円以下のお値ごろな焼き鳥缶や鯖缶、金目鯛缶などであろう。

当方の基本意識として、缶詰というのはどうしても非常食あるいは救荒食といった感覚が抜けないので、どうにも高級カニ缶とか、高級フルーツ缶というのは馴染めなくて、やはりサバ、イワシ、サンマといったあたりを基本に据えておきたい。

その点、本書の紹介されている缶詰は、ごく一部の例外を除いては、高いものでも一缶あたり600円程度のものなので、まあ、たまにする贅沢の範囲と言えなくもない。

といったところで、本来ならば缶詰の様子を記述したところを引用するのだが、食べ物そのものを取り上げた本の引用をすると、ネタバレもいいところであるので、ここは静岡の「鱒財缶」というニジマスの缶詰という変わり種の味

皮と身の間には脂の層があり、この脂には独特の美味しさがある、あっさりとして、それでいてコクもあるという、川魚独特の美味しさなのだ。

背身のほうはこっくりとした歯触りがあり、もぐもぐやっていると、切り身ひとつでもけっこう食べごたえがあることに気づく

といったところだけ引用して、他の缶詰を想像してもらうこととしよう。読んだだけでも「缶詰侮りがたし」と思うのは間違いないのである。

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