「農業は国の基本だ」なんて、都会民が言うんじゃねぇ — 荒川 弘「百姓貴族」1〜5(新書館)

「鋼の錬金術師」「銀の匙」で売れっ子漫画家となった荒川 弘氏の自伝的農家マンガである。第1巻の初版は2009年、第1作が「ウンポコ」で初出となったのが、2006年。現在の5巻目が2017年刊行、60話目が2017年であるので、おおよそ11年にわたる長期連載ではあるし、初刊の頃の農業トピックは、バター騒動であるので、現在の農業情勢とは隔世の感があるのは確かである。

 

シリーズを一貫しているのは、荒川一族、特に親父さんが九死に一生を得た時は、必ず一家の家畜が一頭突然の死を遂げるといった家族のぶちまけ話と「裏百姓貴族」話。

 

特に、「裏百姓貴族」話は、規格外の農作物の旨さであるとか、新車を毎年買い換える「貴族」様のお話など、ほほーっ意外と◯◯なのね、といった話もあるのだが、やはり、読みどころは、農業は大事、心の故郷といいながら、実際の所は全く理解の範疇外にある「都会民」を明るく嘲笑する「うちあけ話」と、農業や畜産の労働の大変さと農業経営の困難さを、明るく「笑い飛ばす」あたり。

 

薬味のかたまりのようなシリーズであるので、全巻を一気読みすると、熱が出てしまいそうになりながら、次の巻に手を伸ばしてしまう中毒性はかなりのもの。そろそろ、2月も終わり。季節の変わり目と年度の変わり目で、様々に変化があるときではあるが、なにが起きようと明るく笑い飛ばして、人生をおくるに必携の書であるかもしれんですね。

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