アートを生み出す企業の発想法・仕事のスタイルを見てみるのも悪くない — 宮津大輔「アート☓テクノロジーの時代」(光文社新書)

チームあるいは企業で「アート」を生み出し、大きな注目を集めている、日本企業4社について、その作品のなどを通じながら、行動原理と特徴的な考え方について紹介かつ分析をしたのが本書。
 
構成は
 
第1章 チームラボ
第2章 タクラム・デザイン・エンジニアリング
第3章 ライゾマティクス
第4章 寒川裕人と座・ユージーン・スタジオ
第5章 最先端アートの過去・現在・未来
 
となっていて、多くは、これら4企業の活動のレビューなのであるが、当方的に「ふむふむ」と思ったのは、クリエイティブ系企業の
 
(チームラボ)では極力複雑な制度や規約を排し、メンバーの自主性にまかせています。したがって組織に関しても非常にフラットで、・・・専門分野ごとのチームに分かれていますが、これらのチームには部長や課長といった固定的な役職は存在しません。・・・プロジェクト・チームごとにリーダーを決めて仕事を進めています。
各チームやプロジェクトにリーダーは存在しますが、組織はいわゆる上下関係のないフラットな状態(P58)
 
といったところもあるのだが、それよりは
 
最近多くの起業、殊にIT系で積極的な導入が図られている在宅勤務やノマド・ワーキンうを、チーム・ラボでは一切許可していません。
猪子代表をはじめ同社の役員が異口同音に唱えているのは、「ネット会議を含め、一緒に仕事をするメンバーが離れ離れな状態は、チームで成果を上げるためには不向き」(P39)
 
 
現在のテクノロジー技術では、やりとりできる情報量がフェイス・トゥ・フェイスに比べて圧倒的に少ないため、非効率であるといいます。顔を合わせることで、気づいていない領域を含めた大量の情報交換が可能となり、結果的にクリエイティブなアイディアが生み出せるからであり、業務スピードの向上にもつながるからでしょう(P40)
 
といったように、「フィジカルなつながり」を積極的に評価している点で、IT技術やAIの進化が進む中で、人間が「人間らしい」創造性を発揮するのは、意外とアナログなところを大事しないといけないのかな、と思った次第。
 
そしてそれは、「非言語が生む新しい価値」という
 
言語化される時点で多くの情報が抜け落ちるため、データ量が多く自由度の高い(加工前の)ローデータの方が優れている点。さらに言語化、記号化された時点でコピーが容易になる点から、情報伝達における優先順位が、体感(写真)言語になるという考え方(P40)
 
を重要視することにも繋がっていて、「手書き」に代表される「アナログ性」の再評価でもあるようだ。
 
このほかにも
 
彼らの仕事、そしてチームとしての理念を考える時に忘れてはならないのが、「振り子の思想」と呼ばれている考え方です。同施行法は、ある時はデザイナーとして、また、ある時はエンジニアとして鑑上げるといったように、いつも頭の中で「振り子」を左右に動かしながら、二つの異なった視点間を行き来することを意味しています。
 
二視点間の移動・反復運動がもたらす価値とは、物事を二項対立で捉えることなく、相対化して考えることにあります。(P80)
 
とか
 
「ものづくり」と「ものがたり」
従来のプロトタイピングは、ものづくりにおける可能性を広げてきましたが、そこには「なぜ、その製品やサービスが必要なのか」という、製品開発上の最も根源的な問いに対する解決手段は包含されていませんでした(P89)
 
といった「デザインの仕事」とは異なった仕事分野にも応用可能な手法のヒントも隠されている。
 
「デザイン」という言葉が注目されて久しいが、自分の仕事には関係ないよね。と思っている方々が大半では。そういった方も、今までとは、ちょっと違った発想法や仕事術のヒントを得るために、ざっくりと目を通しておいても良いと思いますね。
 

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