南町と北町の懇親が進むも、腕利き与力が過去の事件の犠牲になる — 和田はつ子「料理人季蔵捕物控 21 蓮美人」(時代小説文庫)

前作で、当方的には気に入っていた逸材の「さと香」を喪ってしまって、ちょっと残念なところで、今巻でのゲスト・キャラは、名門出の南町奉行である。
 
第一話 風流鮨
第二話 禅寺丸柿
第三話 蓮美人
第四話 牡蠣三昧
 
第一話は、南町奉行が北町との融和を図るために、「親睦会」を開くというもの。もともと、競い合いと汚職防止のために、南北両奉行所がつくられていたと思うので、「親睦」ってのは幕府上層部が面白く思わないと思うのだが、幕府も開府後経過すると、その辺は安きにつくという設定であろうか。もっとも、作者のちょっと意地悪なところは健在で、名門出で気位の高い、南町奉行の家付き娘「律」様というキャラをつくっておくのは流石である。事件の方は、塩梅屋が仕入れている鰹節問屋の土佐屋のお内儀殺しと黄金の煙管ほかの盗み、これに加えて、廻船問屋の大前屋の女隠居の殺しと金剛石の盗みである。
もっとも事件は第一話では解決せず、次話以降に続く。
 
第二話は、第一話の事件の続きなのだが、二話目の注目点は、南町の同心・島村蔵之進。昼行灯という評判なのだが、なにやら「食えぬ」存在らしき様子を随所に見せる。
事件のほうは、土佐屋の主人が殺されて、さらに混迷という展開。
 
第三話の「蓮美人」では、第一話で登場した、南町奉行所の与力・伊沢真右衛門と北町奉行・烏谷とが旧友であったという意外なエピソードが語られる。もちろん、こういうエピソードが出てくるのは、訳があって、伊沢が霊岸島で謎の自害をする訳と、烏谷の想い人「お涼」さんの過去のすきっとしたエピソードの呼び水。「蓮美人」のいわれは、「お涼」さんが、外様の大藩の大名の側室にしようという企みを打ち砕くためにとった策に由来するのだが、詳細は本書で。しかし、どの話でも共通して「お涼」サマというのは別嬪で、しかも気っ風が良いものですな。
 
第四話の「牡蠣三昧」はこの巻で起きる事件の解決編。死人はたくさん出るのだが、なんとも消化不良な解決のまま、最終話で決着をつける感じ。ここまで引っ張るからには、単純な欲得ずくの事件ではなく、伊沢真右衛門が以前関わった抜け荷事件を発端に土佐屋、大前屋を巻き込んだ事件の決着は、季蔵の裏の任務に任されるのだが、このついでに、昼行灯・島村
蔵之進の隠された役目がはっきりする。
 
ただまあ、第四話の最後の方で、季蔵の仕事を邪魔をするような仕掛け矢も仕掛けられていて、次巻以降でなにやら陰謀の網がはりめぐらされていそうな今巻の終わりでありますな。
 

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