腕利きの出張料理人の隠された真の姿は? — 和田はつ子「料理人季蔵捕物控 22  ゆず女房」(時代小説文庫)

長く続くシリーズものの登場人物は、とかくマンネリ化してくるもので、読者としては定期的に新キャラの投入を望みたいところなのだが、それが定着するキャラに育つかどうかは、作者のお好み次第というところであるらしい。
 
収録は
 
第一章 冬どんぶり
第二章 河豚毒食い
第三章 漬物長者
第四章 ゆず女房
 
となっていて、今巻の読みどころは、武藤多聞がキャラとして定着できるかどうか、といったところであろうか。
 
まず第一話は、「冬うどん」こと「鶏団子うどん」で名物ランチの評判をとった塩梅屋が、今冬のランチで再びの高評判を勝ち得る料理をつくれるかというもの。料理を考案する過程で、長崎屋のお内儀が酒浸りになっている、という相談事の解決を図るのだが、女の嫉妬とは粘っこいなと想わせる結末。さらには、今回名物ランチになる「冬どんぶり」こと「葱たま丼」に必要な卵の仕入先も巻き添えにしてしまう。年寄りが熟れ頃の女性に惚れ込んでも甲斐がないかも、という決着はちょっとさびしいな。
 
第二話は、北町奉行の烏谷の依頼を受けて、季蔵と武藤が、セレブが通うふぐ料理屋の宴席の手助けをする話。もちろん、宴席が無事に終わるはずもなく、旗本のお家騒動も絡んで、血なまぐさい展開になるのは、捕物帳の宿命か。
 
湯引きは三枚に下ろしたふぐの上身を、厚めにそぎ切りした後、皮と一緒に湯に潜らせ、水で晒して、紅葉ろしや酢醤油をつけだれにして食べる。
(中略)
かね炊きとのほうは骨付きぶつ切りの身を、つぶしたにんにくと梅干しと一緒に醤油で煮つける
 
といったふぐ料理に免じて、話の陰惨さも我慢しようか。
 
第三話は、季蔵の旧友・豪介の女房おしんの取引先の漬物屋・野もと屋の主人の失踪事件の解決譚。この主人、仙台が旅の途中で連れ帰った出所不明の人物で、漬物の仕入れにも一人で旅するという変わり者。彼の失踪の陰に隠された過去は、といったもの。これに役者くずれの煮売屋の亭主の失踪+死亡事件がからんでくる。およそ関係なさそうな二人なのだが・・、といった展開。
作中の
 
柿なら何でもいいから、熟れたら、へたを取って、砂糖と焼酎、それに刻んだ唐辛子を放り込んで、漬け床をつくるんです。三月もおいておくと、これ、柿酢になるんです。
 
という柿酢で大根をつける「大根の蒸し柿漬け」のように少々複雑な人間模様である。
 
最終話の「ゆず女房」は、扇屋・錦堂のお内儀の「ちぐさ」が庭先で凍死するのだが、彼女の身体にはひどい折檻を受けた後が残っていて・・、というところから始まる。もちろん、彼女を利用して性欲を満足しているゲスなセレブがいるのだが、彼女を死に導いたのは、なんとあの・・、といったところで手を下した人物とその正体は原本で確認あれ。
話を彩るのは、武藤の妻・邦恵の「ゆず料理」で柚子味噌、柚子大根、ゆべしと種類豊富なのだが、どうしても侘しさが漂うのは、話のすじのせいか、あるいは柚子の性格のせいであろうか。
 
さて、20話あたりから、新キャラが登場するも、この巻あたりまでで精算が相次ぐ。健在な女性キャラは。「おき玖」と「瑠璃」。さて二人と季蔵との関係はいかなることになりますやら。
 

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