二代目の女性社長の意気地、ここにあり — 諏訪貴子「町工場の娘 主婦から社長になった2代目の10年戦争」(日経BPS社)

起業家がブームになった時があって、とにかくアントレプレナーを目指せ、なんて風潮があった。最近では、サラリーマンが定年を迎えそうになる時に、起業を進めるアドバイスもあったりするのだが、そういった声に惹かれる人は、この本に目を通してから決断したほうがよいかもしれない。
 
構成は
 
第1章 突然、渡されたバトン
第2章 手探りの会社再生
 1 生き残りのための「3年の改革」
 2 体当たりの「人材育成」
 3 明日のための「フロンティア開拓」
第3章 私の仕事論
 
となっていて、第3章は、受け継いだ会社を、軌道にのせた現在の、仕事術、仕事論であるので、当方として読み応えのあったのは、やはり、第1章、第2章の、急死した父親に代わって外車を引き継ぎ、経営者として歩み始めたあたりであろう。
 
それは、引き継いだ途端、取引銀行に吸収合併を勧められたり、
 
父が亡くなった時、幹部も含め、社員の多くは私に「社長になってほしい」と言ったが、だが、それはあくまでも”お飾り”のつもりだったのだろう。・・私の「経営してほしい」とは思ってなかったのだ
 
という社内環境の中で、リストラを進めて幹部から罵倒されたり、といった「引き継ぎ劇」である。
 
そして、そんな彼女が
 
創業者は地震が示す方針や理念が先にあり、それに共感して後から入ってきた人たちと一緒に仕事を進めていけばいい。
それに対し、2代目は創業者の下で働いていた人が納得し、ついてきてくれるような方針を新たに掲げなくてはならない。
 
とさまざまな会社改革を進め、
 
「いや、社長はたまたま女だっただけですよね」
 
と社員に信頼され、支持されていく過程を読むと、いやいや会社を引き継ぐ、特に「モノ」を扱う製造業を引き継ぐというのはなかなかの苦労であるよな、と筆者の頑張りに賞賛するほかない感じを抱く。

さて、女性で父親の会社を継ぐということには、男性が継ぐ場合に比べて、より多くの苦労もあったと思うが、それを跳ね返しての社長業は見事としかいいようがない。サラリーマンから会社の継承を目指す方々、この苦労を背負えますかな。
 

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