経営の肝にレバレッジをかける ー 本田直之「レバレッジ・マネジメント」

「レバレッジ・リーディング」「レバリッジ・シンキング」などでブームとなった「レバレッジ(てこ)」本シリーズの「マネジメント編」が本書『本田直之「レバレッジ・マネジメントー少ない労力で大きな成果をあげる経済戦略」(東洋経済新報社)』である。

【構成は】

第1章 経営者のレバレッジ
第2章 戦略のレバレッジ
第3章 営業のレバレッジ
第4章 ブランドのレバレッジ
第5章 仕組み化のレバレッジ
第6章 組織のレバレッジ

となっていて、マネジメントについて筆者が重要と思われるポイントはまとめているが、本書の冒頭に

「会社がどうなるか、その鍵は経営者が握っている」  いかなるトップ、役員、幹部であるか。つまり、経営陣がどういった人物であり、何を考え、どのように行動しているか。端的に言えば、「経営者の思考」がいかなるものかが、うまくいく会社とうまくいかない会社の違いを作り出している。
(略)
「思考」というOSを整えない経営者は、やるべきこともわからないままテクニックだけをやみくもに取り入れることになり、そこにはさまざまな誤解が生じてしまう
(略)
本書は読むためではなく、「考えるツール」である

とあるように、本書は、マネジメントの知識を得るハウツー本ではなく、マネジメントに携わる者が、自分の頭脳と自分の言葉で「考える」ための「道標」として読むべきであるようだ。

【注目ポイント】

本書は「考えるためのツール」とのことなので、レビューをアレコレするというより読者それぞれが、その環境に応じて必要なところを逐次レファンレンスして、自分で「考える」のが本旨なのだろうが、あえて、当方が気になったところを抽出しておこう。

◯経営者がすべきことは「考えること」

まずは、「経営者がすべきこと」が明確に示されていること。本書では、「経営者」となっているが、ここは広く「マネジメントを担当する者」の心構えとして考えておくべきであろう。そして、その「すべきこと」は

経営者にしかできない、経営者がやるべき仕事とは、本質的に考え、意思決定することである。

というとした上で、「忙しくて時間がない」と言いがちな輩に対しては。

「考えないから時間の余裕がない」ということ
(略)
皮肉なことに、「永遠によく働く経営者」は、必ず会社を駄目する。 「お客さんの相手もしなくちゃならないし、クレームは来るし、なかなか任せられる社員もいない。営業にも一人で飛び回らなきゃならないし、考える時間なんてない」  創業して数年経ってもこう述べる経営者はみな、「追われる経営」をしているのだ。
(略)
今のような非連続の時代において、人生で一番貴重な資産とは、お金よりも時間である。お金の投資より先にすべきが、時間の投資といえる。そして「観上げ、意思決定すること」こそ、時間を投資する行為であり、読書や人脈作りもまた、投資であるというのが私の意見だ

といった風に、「忙しくする」ことが、けっして「善」ではないこと。むしろ、ジリ貧に至る一本道かもしれないことに気付かせてくれる。

◯俯瞰的思考が重要

さらに、この「考えること」に関しては、「俯瞰的思考」と「順行思考」という二つのパターンをあげ、特に「すぐにできそうなところから始めよう」と、まず動くことから始めてしまいがちなところを牽制していて、そのやり方は、「地図を見ないで目的地に行こうとしている」と戒めている。で、筆者の推奨するのは、「俯瞰的逆算思考」というもので

俯瞰逆算思考とは、まず地図を見て現在地と目的地を確認し、「このルートで行くのが一番近い」ということを考えたうえで、スタートすること。つまり、ゴール、すなわち時間軸の長いところから見て、決めていく。そして、短期に落とし込んでいくので、長期的視野といってもよい

であり、

柳井さんに限らず、うまくいっている経営者の多くは何かを始めるとき、「だいたい、こんな具合になりそうかな」という道筋を頭の中で思い描いている。

といったもので、やることや道のりを明確にして、しっかり考えることの大事さが、口を酸っぱくして言われている。
で、「考えること」が大事と言われても「とても、そこまでは・・」と弱音を吐いてしまうのが人の世の常なんであるが、そこのところは

「シミュレーションできているか?」という問いは、「突き詰めて考えているか?」という問いでもある。もし、あなたがシミュレーションなんてできないと言うのなら、それは考えが足りないことを意味する。真剣に突き詰めて考えていないから、目に浮かぶようにイメージできないのである。
シミュレーションできるようになるためには、あらゆる事象に対して「想像する癖」をつけるとよい。企画や戦略を「考える」だけではなく、「シミュレーションする」という思考法を身につけよう

と厳しく注意されているので肝に銘じておこう。

◯二〇:六〇:二〇の法則

そして、組織の運営面、人への手間のかけ方についてユニークなところは、「二〇:六〇:二〇の法則」をあげて

最初の二〇%というのは、会社の状況が良くても悪くても、組織の中身が良くても悪くても、給与体系が良くても悪くても、一生懸命頑張る人を指す

もう一つの二〇%というのは、会社の状況が良くても悪くても、組織の中身が良くても悪くても、給与体系が良くても悪くても、常に文句を言っている

上の二〇、下の二〇に挟まれた真ん中の六〇%は、状況によってどちらにもいく人

と、組織に属する人の能力やモチベーションなどについての分類をしているのはよくあるのだが、

一般的に、組織が大きくなってくると全体をケアするのが難しくなる。しかし、上の二〇%のケアに力を注げば、彼らが六〇%の人を教育してくれるので、レバレッジが効く。仕事の切り分けと同じで、経営者が直接ケアすべき社員、部下にケアを任せても良い社員を区別することも必要だ

と注力すべきところを明確にしているのだが、これを実践するのは結構「割り切り」が必要になるなー、と我が身を振り返って思うところ。もっとも、「どんなに良い組織でも、下の20%は存在し続ける」に反論する物証があるわけではないんですが・・・。

【まとめ】

「リーディング」「シンキング」に引き続いてに「マネジメント」ということで、「レバレッジ」という視点からとらえる、このシリーズも、ビジネス活動の多くの部分をカバーすることとなった。
本書によれば

本を読んでメモを取るメリットは、そこで良かったものをミーティングなどでみんなに共有してもらえるようになるからだ。経営者たるもの、人に会って聞いて良かったことや、セミナーで学んだことなどを社員に教える義務がある。
(略)
こうして人に教えながら勉強したことこそ、最もレバレッジが効く。知識・ノウハウを社員に伝えることは、社員にも武器を与えることにもなる。

とのこと、こういう類の本は、「読んで満足」ではなく「教えて満足」まで進まないといけないらしい。頑張りましょう、お互いに。

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