「PDCA」理論の実践に即した変化球 — 小山昇「儲ける社長のPDCAのまわし方」(KADOKAWA)

ダスキンのフランチャイズビジネスと、中小企業の経営サポートを事業内容とする「武蔵野」の社長・小山昇氏の著作。「PDCAのまわし方」という表題であるが、いわゆる「PDCA」の理論的なものではなく、実際の中小企業経営者による「PDCA」の「現実的実践法」といった色合いが強い。
 
構成は
 
第1章 「PDCA」が回る会社をつくることを決定する
第2章 「PDCA」は、「D」から回すことを決定する
第3章 会議の「フォーマット化」を決定する
第4章 コミュニケーションの「PDCA」を回すことを決定する
 
となっていて、「現実的実践法」というのは、
 
デタラメでもいいから計画(利益目標などの数字)を立て、その目標に向かって行動を起こすと「実績」がでます。
そして、計画(利益目標)と実績を比べて「なぜ、デタラメな計画(利益目標)よりも実績が少ないのか(あるいは多いのか)」、差が生じた理由を読み取りことができれば、次に打つ手が見えてきます(P30)
 
 
最初から完璧な計画を立てようとしても、必ず市場ニーズとのギャップは出てくる。
だとすれば、最初は仮説としての計画をデタラメに立て、その仮説に基づいて実行し、結果を見てそのあとで対策を練ればいい(P34)
 
といったところで、普通、PDCA理論では「P」のところをしっかりして後でぶれないように、と言われることがあるのだが、実は現場のところでは、そうそう「P」に時間がかけられなかったり、「P」の根幹の「イシュー」が不明瞭なこともある状況に対応している。
 
そして
 
「今までと違うこと」や新規事業を始める時は「P」よりも「D」を起点にしたほうがいい。
「PDCAサイクル」ではなく「DCPAサイクル」を回す(P72)
 
といったところもそういう類の現れで、読むほどに「PDCA」の指南書というよりは、「PDCA」というツールを利用した「組織運営論」の色合いが強くなってくる。もちろん、それは悪口ではなくて、
 
どれほど「良いこと」であっても「コストはどうやって回収するのですか?」と社員に問うようにしています。
そして、コスト回収の見込みのない計画に対しては、どんなに「良い計画」でも、「やりたい」とは言わなくなりました。
中小企業の社長は「良い計画」ではなく「成果が出る計画」を立てるべきです(P129)
 
 
質より量を重視する。強制的にコミュニケーションの場をつくる
実行計画書と評価シートを使って、全従業員が毎月行う
コミュニケーションは「質」よりも「回数」
(P168)
 
といった実践的な手法の披瀝は、ともすると机上の論理になりがちな「PDCA」論に血肉をいれるものとして積極的に評価したい。
 
なんにせよ、「PDCA」を始めとした手法は、経営の現場に導入されて、現場を活気づけたり、経営状況を改善して収益を上向きにしてナンボの世界。理論書ばかりにかじりつくのではなく、こうした町場の経営者による変化球を読んでおくのも必要でありますね。
 

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