「時短」のためのテクニックを改めて整理してみよう ー 清水久三子「外資系コンサル流 「残業だらけ職場」の劇的改善術」(PHP)

まず最初の「はじめに」のところで

「本書は、日本企業へのダメ出しと理想論を述べた本ではありません。」
「本書は、楽な生き方、ゆるい働き方を提案する本ではありません。」
「本書は、外資だからできる方法を語る本ではありません。」

等々とあって、こいつはやけに強気な時短本だな、というのが第一印象なのだが、本書の書かれた目的の一つに

「制約職員」だらけのチームで、残業なしで成果を出さなければならなくなる。私が経験したことは、今後どの職場でも起こりうることです。

「残業できない時代」を前提に、働き方を変えていかなけくてはいけないのです(P11)

といったところは、よくある時短本が、いわゆる若手か中堅の正規職員をターゲットにしていることが多いに対し、年齢や家庭環境、国籍など、様々な条件をもった多様な職員が働くことを前提として書かれていいるところは、極めて現代らしいポイントをおさえていると評価できる。

 

 

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめにーこれまでの「時短本」と何が違うのか?
劇的改善ポイント1
 長時間マインドー「成果」ではなく、「生産性」で評価される時代に
劇的改善ポイント2
 無駄な業務ー次々と降ってくる仕事を、どう「引き算」するか
劇的改善ポイント3
 仕事の受け渡しー「手戻り」の発生を、最小限におさえるには
劇的改善ポイント4
 不毛な会議ー「でも、どうにもならない」とあきらめる前に
劇的改善ポイント5
 過剰品質な資料ーいかに無駄を省き、適正品質で完成させるか?
劇的改善ポイント6
 回らないPDCAー「問題解決=ゴール」に最短最速で辿りつく秘訣
劇的改善ポイント7
 ギスギス職場ー「制約社員」がいても不公平感を産まない工夫

となっていて、残業の分析であるとか、「働き方」についてのあれこれはおいといて、「時短」のためのノウハウに特化しているあたりは潔い。

それは

「長時間マインド」を脱するための第一歩。それは、「1日6時間で働く」ということです。1日の仕事時間は6時間であるという前提のもとに、タスク(やるべき仕事)とイベント(会議などの予定)を配置し、スケジュールを立てる習慣をつけるのです(P24)

長時間労働を抜け出すための思考方法は「仮説思考」(P186)

といったソフト面に重点を置いたものもあるのだが、

仕事を受ける時は、IPOを必ず確認する。
①INPUT 何を使ってその仕事をやるのか。必要な情報や関係者
②Process どのような手順で、どんな工数でその仕事をやるのか
③Output その仕事でどんな成果を出せばいいのか。どんな仕上がり状態を実現すればいいのか。

とか

仕事の「場」を改善する第一歩(P222〜)
①机の上には何も置かない
②紙を減らす
③デジタルデータはファイル名で管理
④よく使うものはセット化する

といったところにむしろ特徴があって、会議における「パワポ死」を防止する手立てなどは、ほぼ全てのビジネス現場で参考にしたほうがいいな、と思わせる。

【レビュアーから一言】

こうした時短テクニックのほかに、外資系コンサルタント経験から

一般には、コンサルタントというのは大規模なプロジェクトやシステム導入を提案するもの、と思われがちですが、実は、顧客に提案する解決策が小さければ小さいほど「すごい」と評価されます(P63)

とか

コンサルタントの経験則としてよく言われるのが、「日本企業は真ん中を選ぶ」ということ。積極的、中庸、消極的という3つのオプションがあったら、真ん中の中庸の案が選ばれやすい(P128)

といったどこかに使えそうなTipsがでてくるあたりは、「おまけ」として得した気分になりますね。

残業に関する本といえば、「働き方改革」の影響なのか、理念論がはいりこんでくるものが多いのだが、こういった「テクニカル」なことを中心とした本は、実際に「時短」をする上できちんとおさえておかないといけない類のものであろう。理念論争に疲れたら、この種の本を読んで、気分転換してみてはいかがであろうか。

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