「メモ」で仕事を変える、「メモ」で人生を変える ー 前田裕二「メモの魔力」(NewsPicks×幻冬舎)

幼少期の貧乏生活やDeNaの南場社長とのエピソード、SHOWROOMの経営や有名女優と浮名を流したことなど、あれやこれやで有名であるとともに精力的な企業活動をしている若い実業家による「メモ」に関する啓発本である。
「啓発本」と書いたのは、筆者が「おそらく、人が1週間、いや、1ヶ月かけてとるメモの量を、平気で1日のうちにとります」というほどのメモ魔であって、そのメモをとるノウハウを記すとともに、

この本で述べるような、知的生活を目的にした本質的な方法で「メモをとる」こと自体が、仕事をすることです。そして、仕事に人生を、命をかけている僕にとっては、もはやそれは、生きることです

といったように、「メモ」というものを通して語られる仕事術、自らのビジネススタイルについての記述でもあるからである。

【構成と注目ポイント】

構成は

序章 「メモの魔力」を持てば世界に敵はいない
第1章 メモで日常をアイデアに変える
第2章 メモで思考を深める
第3章 メモで自分を知る
第4章 メモで夢をかなえる
第5章 メモは生き方である
終章 ペンをとれ。メモをしろ。そして人生を、世界を変えよう

となっていて、大まかには、第1章、第2章が「メモ術」、第3章からが「メモ」を通じたビジネス論といった構成となっている。

 

まず筆者にとれば、「メモの底力」は「記録のためのメモ」よりも、「知的生産のためのメモ」にあって、その効用は

①アイデアを生み出せるようになる。(知的生産性の向上)
②情報を「素通り」しなくなる(情報獲得の伝導率向上)
③相手の「より深い話」を聞き出せる(傾聴能力の向上)
④話の骨組みがわかるようになる(構造化能力の向上)
⑤曖昧な感覚や概念を言葉にできるようになる(言語化能力の向上)

といったことにあるのだが、そのための「ノート」の使い方は、無造作に書きなぐっていけばいいものではなく、

①ノートは原則「見開き」で使う
②ノートの左側に横線と縦線を一本づつ、右側には縦線を一本、なるべくまっすぐに引く。
③左側には「ファクト=客観的な事実」を書く。右側のところはこの段階では何も書かない。
④次に右ページの左側には「抽象化」した要素、「ファクト」に書かれている具体的な内容を抽象化する。(この「抽象化」というのは要約が難しいのだが、記述した客観的に事実を一般化したり、特徴の深掘りをしたり、事実の裏側にある原則を拾い出す、と言った作業のように当方は解釈した。)
⑤最後に、右ページの右側に、④で出した気づきや分析を、他のことに適用して、〇〇を△△に変えてみよう、といった実際に起こすアクションまで抽出する(本書では「転用」といってますね)

といった使い方で、少々トレーニングが必要ではあるのだが、実践段階まで落とし込めれば、多くのビジネスシーンで威力を発揮しそうですね。

で、ここらあたりの具体的な手法が詳細にかかれているのだが、詳細は原書で確認してくださいな。

そして、この辺のテクニック、メモ術・ノート術で終わらないのが本書の特徴で、

大きなトレンドや世の流れなら、ある程度の予測はできます。
一つ僕が予測している流れは「個」へのフォーカスです。インターネットが可能にする個のエンパワーメント(要は個人が自助努力でフェアに力をつけやすくなった、ということ)によって、これから、今以上に個人が取り沙汰される時代になると考えています。

という時代認識を基礎において、筆者が就活時代に実践した「自己分析ノート」による自分自身の掘り下げであるとか

一つは、マインドシェアの問題です。つまり、その夢について、まず紙に書いた時点で、潜在意識に刷り込まれる度合いが高くなります。書く瞬間に脳が受けるインパクトは思いのほか大きく、その結果、紙に書く行為は記憶に残りやすいためです。
(略)
しっかり脳に染み込ませる意味では、情報量が多く右脳でも記憶しやすい、アナログの文字にして一度見つめてみるべきだと思います。
夢へのマインドシェアが高くなるほど、すなわち、夢について考える時間が長ければ長いほど、夢をかなえるために必要なことをブレイクダウンして考えたり、現在地点との距離を測ってその差分を埋めるための努力方法を見極めたり、また、妨げになりそうな障害や課題をつぶしていこう、という問題意識も芽生えます。

といったところから、メモで夢をかなえていく手法が後半部分では語られていくので、「前田裕二」的なメモ術を総ざらいしたい人は、前半だけでなく、後半部分も必読ですね。

【レビュアーから一言】

一言でいうと、「メモをとること」によって「人生を変えていこう」というかなり熱い本である。なので、特に後半部分については、好みが分かれるところで、そこがAmazonでの評価のブレにもなっているのだろう。
ただ、当方としては、「熱い思想」の部分はおいといても、「メモ」に関するかなり有効なテテクニカルな知識が入手できたり、活躍している起業家が「メモ」を使ってどう思考し、どうビジネスを回しているか、といったところが詳しく語られているという点で、押さえておくべき一冊であると思う。

若く、よりスキルアップしたいビジネスマンにオススメであります。

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