手帳の使い方で、仕事は激的に変わる — 谷口和信「仕事が速くなる! PDCA手帳術」(明日香出版社)

月80時間の残業が当たり前で、1日のほとんどを会社で過ごすといった「ブラック」な仕事ぶりをしていた筆者が、手帳を使うことによって、残業も減り、「手帳の使い方を工夫することで仕事の効率は簡単に上げることができ」たことをもとに、実際にやってきた「手帳術」を紹介するのが本書。

【構成は】

第1章 何のために手帳を使うのか
第2章 手帳の基本
第3章 仕事が速くなるタスク管理術
第4章 仕事が速い人の手帳の使い方(基礎編)
第5章 仕事が速い人の計画の立て方
第6章 仕事が速い人の改善方法

となっていて、見てのとおり、手帳の使い方だけではなく、後半あたりは、「手帳術」の範囲を超えて、「仕事術」の領域に及んでいる。もっとも手帳を使いこなす目的は「仕事をうまく回す」ことが目的であるから、これはこれで無難な展開ではありますな。

【手帳を使う目的】

当方は、今はスケジュールもToDoも、ほぼスマホ移行をしているので、参考意見にしかならないが、筆者として手帳を使う目的は、

「あとで読み返したくなる手帳にする」というコンセプトを決めました。

ということであるようだが、むしろ

学生のときは覚えるためにノートを使いましたが、社会人は積極的に「忘れる」ために、手帳やメモ、ノートを使うのです。
そのことで、脳は身軽になり、高いパフォーマンスが発揮できるようになります

「記憶力」を高めるのは限界がありますが、「記録力」はすぐに高めることができます。

というあたりが、一番同調できるところ。
手帳は(当方としては「ノート」の範疇まで「手帳」と考えているが)いわゆる「記録」の集合体、他のファイルも含めた「記録」のナビの役割が一番求められるところではないだろうか。

【手帳の使い方】

そして、では、手帳に何を書くかというと

最初に書くことは「予定」です。
予定といっても、会議やミーティング、懇親会などの他人との約束だけでなく、自分だけの行動予定、作業計画、つまり自分とのアポも書くようにしてください。

私は手帳のメモページにはその日の課題と結果を書いています。
したがって、先ほど紹介したような事柄は付せんやA7サイズのメモ帳に書いたあと、行方不明にならないように日付順にまとめてノートに貼りつけています。

といった鉄板的なところを踏まえつつも、

おそらくあなたも、会議やプレゼンなど、他の人との約束は手帳に記入していることでしょう。
では、それ以外の時間帯に何か記入していますか?
多くの人が、他人との約束を除くと、記入棚が空白になっています。
時間割を作るとは、この空いている(ように見える)時間帯に自分の行動予定を記入する。

というように、空き時間に自分のスケジュールを埋め込んでしまうというやり方は、空き時間ができたから、さて・・、といったことのない、無駄な時間をなくすには有効である。もっとも手帳を使いこなそうと考えている向きは、とても真面目でありょうから、自縄自縛にならないよう気をつけないといけないところではある。

結構難しいのは「いっしょにやっていただきたいのが、実際に行動した結果を書くことです」といったところで、どうしても、スケジュールはアポが入った時に記入して終わりとなるのが通例で、なかなか振り返りまではできないよね。

このほかにも「スケジュール管理は1ヵ所で」、「記号を使ったり、仕事とプライベートを色分けするということも有効」や、「スケジュールで最初に決めるのは退社時間」といったあたりは参考になるので、具体の処方箋は本書で確認あれ。

【プロジェクトをタスクに分解する方法】

で、手帳に人からのアポや自分の決めた行動を入れ込んでいくにしても、そのもととなる「タスク」をハッキリさせないといけないわけで、ここらあたりは記されているのが、本書の後半部分。

例えば、本書でページを割いているのが、プロジェクトをタスクに落として、さらにそれをタスクリストにして管理する、というオーソドクスな手法で、そのやり方を簡単にまとめると

①そのプロジェクトのゴールを設定し、それに向かってやるべきことを1項目ずつ付せんに書き出す。そのとき、できるだけ細分化して具体的に書く。
目安としては、1項目を処理するのにかかる時間30分以内、長くても1時間。そのときにタスクといっしょに「どれくらいかかるのか(所要時間)」も合わせて書いておく。

②思いつく限り書き出したあとは、その付せんを並べ替える。このとき注意する点として、他の作業と並行で作業できるのか、それとも前の作業が終わらないと始められない直列作業なのかなどを考慮しながら並べ替える。

③並べ替えながらも、他にも必要な作業があることに気がついたときには、それも付せんに書き出して、いっしょに並べていく。

④書き出したら、どういう順番でやるとうまく流れるかを考えながら並べてる。
⑤最後に、付せんを貼ったシートをそのままタスクリスト代わりに使ってもいいし、各項日をタスクリストに入れても、ガントチャートに書き込んでもよい。自分が使いやすい形で保管すればOK

というもの。これで難しいのは、

タスクリストの大事な役割は、ひとつひとつのタスクを処理するのに必要な時間を把握することです。
タスクリストとタスク管理の本質は「やること」の管理だけではなく、この「所要時間」をコントロールすることにあるのです。

というところで、所要時間の見積もりの仕方、方法論は、「所要時間は、自分で考えた時間の1.5倍見込む」とかいくつかのアドバイスはあるが、ここは、各々が実践で鍛える以外ないと思う。

【自分締切を設定することが大事】

そして、プロジェクト管理、タスク管理の面で本書で参考になるのは「自分締切」という考え方。

自分締切とは、上司やクライアントから示された「締切」ではなく

仕事が速い人は、期限よりも前に余裕をもって仕上げるように計画を立てます。この本ではこれを「自分締切」と呼ぶことにします

ということで、

自分締切を設定して前倒しで作業をする。与えられた時間の80%の時間で提出できるレベルまで作り上げることを目標にする。

この場合、「求められる品質+α」まで達したら、その仕事はさっさと終わりにする。過剰な品質まで高めない。

といったことが提案されている。
「期限を守ること」「一定の品質を確保すること」はビジネスの基本ではあるが、期限を守ろうとすると急ぎ仕事が入るものだし、時間をとれば凝りすぎてしまうこともよくあること。かける時間は「8割」、品質は「1割増し」あたりが目安になるような気がしますね。

【まとめ】

手帳術というと、手帳の紹介や、デイリーやらウィークリーやらの「フォーム」の紹介が多い本が多い中で、本書は、結構、「本筋」のところに絞って書かれている。

さらに、手帳を使う「考え方」に力点が置かれているので、当方のように紙の手帳ではなくスマホ利用者にも応用可能なところが多いというが読んでの実感。

こうした「〇〇術本」は、一冊に絞るよりも、複数読んで、使えそうなところを自分流にアレンジしていく、というのが楽しいところでありますね。

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