天英院の卑劣な罠が徳川吉宗の想い人・竹姫を襲う。彼女を護るのはなんと女忍? ー 上田秀人「御広敷用人 大奥記録 7 操の護り」(光文社文庫)

徳川吉宗と竹姫(2019年3月にフジテレビ系列で放映された「大奥 最終章」で浜辺美波ちゃんが熱演したキャラ)の悲恋物語と吉宗に大奥を取り仕切る御広敷用人に任命された水城聡四郎の活躍を描く、江戸中期を舞台にした上田秀人ワールド満載の時代小説の第7弾。

深川八幡宮での代参やお茶会など様々な機会を狙って「竹姫」を陥れようとするのだが、ことごとく失敗した天英院であるのだが、とうとう、少女マンガにでてきそうな「最終手段」を考え出すのだが、果たしてどうなる、というのが今巻の大きな事件である。

そして、聡四郎や竹姫を深川八幡宮で襲撃した「袖」も大きな転機を迎えることになるのだが、彼女が仕えることになったのはなんと・・・、という展開である。

操の護り: 御広敷用人 大奥記録(七) (光文社時代小説文庫)

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【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 女忍の誇り 第二章 五菜の嘆き 第三章 吉宗の策 第四章 紅の願い 第五章 竹姫の危機

となっていて、まずは郷忍の頭から毒針を与えられ、屋敷内での聡四郎の暗殺を命じられた「袖」がどう対応したのか、が一番目のポイント。この毒は「斑猫(はんみょう)の煮汁にぶすの根を加えたもの」で「斑猫は虫からとれる毒で、ぶすは鳥兜の根を煎じた毒で ともに心の臓の動きを止める強力な作用を持つ」ものらしく、成分を聞いただけで「毒」っぽいですね。ただ、いくら強力な毒でも、は刺さなければ効かないわけで、袖がこうした行動をとったのは、「紅」の看病と教育が効いたのだろうな。聡四郎は、伊賀者を警戒して務めを暫く休むのだが、簡単に騙されて聡四郎の策にのってしまう伊賀者は、吉宗が探索の用務から外すのも無理ないな、と納得する。

この袖を屋敷に置いておくと、江戸城から追放された、御広敷伊賀者の元頭領の藤川や伊賀の郷忍から狙われるので、竹姫付きの女中として大奥にあがるのだが、京都一条家から派遣された「鈴音」、伊賀の女忍がすりかわった「孝」、そして「袖」と竹姫周辺は「武」の達人ばかり揃えたスゴイ布陣が布かれることになる。

こんな状況になっていることも知らず、館林名松平家が潜り込ましている「五菜」の「太郎」一人で竹姫を局(つぼね)内で乱暴して、傷物にしようと、天英院と姉小路が謀略をめぐらすのだが、この二人は意気込みは誰にも負けないのだが、どうも相手をなめすぎて失敗をする傾向があるな。

とはいうものの、五菜の太郎が、竹姫を襲いに行って、簡単に袖の手によって返り討ちになるあたりは、襖に心張り棒をかまして開けられない状態にしたり、裏側に板張りをして力任せに蹴破られないように工夫するなど準備万端でもあるのだが、現場ででかくて力の強い男を翻弄するさまは、伊賀者の中でも「いささかあの美貌は惜しいが」といた評判をとる美人であるのだが、さぞや「恐ろしい」様であったのではないでしょうか。

最後は、惚れた女に悪さを仕掛けられて、天下の将軍様が怒り心頭になったところで次巻へ続くのでった。

【レビュアーから一言】

聡四郎を深川八幡宮で襲った「女忍」はしっかりと味方になって、これまた少年マンガによくある設定なのだが、そこは「紅」の人徳というものでありましょうか。

天英院や館林松平家の江戸家老の策略がことごとく失敗していくのも、刺客や配下を「モノ」のように扱っているところにあるような気がしている。やはり、人徳というのは、人を動かす「基礎」の「基礎」であるようですね。

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