天英院の意地悪が実って徳川吉宗と竹姫の「悲恋」完成 ー 上田秀人「御広敷用人 大奥記録 12 覚悟の紅」(光文社文庫)

水城聡四郎と紅夫婦の支援を受けながら、恋愛の成就に向けて頑張ってきた徳川吉宗と竹姫(2019年3月にフジテレビ系列で放映された「大奥 最終章」で浜辺美波ちゃんが熱演したキャラ)の恋愛の結末が出るのがこの最終巻。

前巻で、吉宗が、自ら大奥へ乗り込んで天英院と対決し、彼女をとことんやっつけてしまったのだが、いささか追い詰めすぎた感があって、天英院が捨て鉢の行動に出るのが本巻。こうなると失う所のない天英院相手では、将来に向かって護りたいものが増えてしまった吉宗が少々、不利でありますね。

【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 権威崩壊
第二章 策謀の文
第三章 品川の騒ぎ
第四章 長袖の変
第五章 想いの末

となっていて、前巻で吉宗によって権威も権力も丸裸にされてしまった天英院と姉小路が、吉宗への復讐を企むところからスタート。復讐とはいっても、「武力」沙汰では、すべて負けを喫しているので、最後の嫌がらせは、吉宗と「竹姫」との結婚を邪魔することで、このへんは実家が京都の有力公家・近衛家の娘の天英院の得意分野でありますね。

そして、前巻で「竹姫」の味方となったと思っていた「女番衆(めばんしゅう)」が実は朝廷の意をうけて、御台所の候補者となる竹姫を取り込もうとしていることがわかるのだが、竹姫は竹姫で負けてはいません。このお姫様は肝が座ってますな。

戦闘シーンは、館林松平家へ聡四郎が「詰問」にいくところなのだが、うまくごまかさないと、自分はおろか主家まで罪を得てしまうと必死に防戦に入る江戸家老・山脇帯刀の気持ちも知らずに、藩士たちが聡四郎たちを襲ってくる場面が、この巻では一番のおおがかりなもの。もっとも、聡四郎のほかに家士の玄馬、師匠の無手斎が揃っているので、館林家の藩士たちがかなうわけはないですな。

天英院の頼みを受けた、彼女の親父の近衛基熈が娘の恨みを晴らすのと、朝廷内での自分の失地回復を図るため、捨て身の邪魔を図るのだが、その結末は・・といいながら「史実」のとおり、吉宗は将軍としては生涯独身ですな。まあ、そうでないと「久免」の方の美談が成立しませんのでね。

【レビュアーから一言】

徳川吉宗と竹姫と恋愛は悲恋に終ってしましました、ということで本書でも、最後は竹姫の嘆く声で終わっている。
もっとも、将軍家の安泰ということを考えると、長男の長福丸が言葉が不自由になったが、一命をとりとめていて、次の跡目は彼であるのは変わらないので、吉宗と竹姫が結ばれて男子でもできた日にはお家騒動間違いなしなので、まあ仕方がないのかも。次男が将軍家が継げなくて不満たらたらで吉宗から謹慎を命じられているぐらいですからね。
このシリーズは、聡四郎の役目が変わってまだ続くので、引き続きお楽しみください。

覚悟の紅: 御広敷用人 大奥記録(十二) (光文社時代小説文庫)
覚悟の紅: 御広敷用人 大奥記録(十二) (光文社時代小説文庫)

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上田 秀人
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