竹姫の危難をきっかけに徳川吉宗決意。聡四郎はここからが働きどころ ー 上田秀人「御広敷用人 大奥記録 8 柳眉の角」(光文社文庫)

徳川吉宗と竹姫(2019年3月にフジテレビ系列で放映された「大奥 最終章」で浜辺美波ちゃんが熱演したキャラ)の悲恋物語と吉宗に大奥を取り仕切る御広敷用人に任命された水城聡四郎の活躍を描く、江戸中期を舞台にした上田秀人ワールド満載の時代小説の第8弾。

天英院による「竹姫」襲撃に大ショックを受けて、彼女の嫁取りに吉宗が本腰をいれ始める。とはいうものの竹姫は二人の婚約者を結婚前に病死させている「不運」な娘である上に、綱吉の養女という複雑な姻戚関係になっているのでそうそう簡単には、物事は進んでいかない。

そして敵をたたきつぶそうとすると、敵は敵で他に助力を頼むのは「戦」の常で戦線がだんだんと拡大していく発端がこの巻となる。

柳眉の角: 御広敷用人 大奥記録(八) (光文社時代小説文庫)
柳眉の角: 御広敷用人 大奥記録(八) (光文社時代小説文庫)

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上田 秀人
光文社 (2015-07-09)
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【構成と注目ポイント】

構成は

第一章 将軍の復讐
第二章 死者の仕事
第三章 家族の想い
第四章 女の報復
第五章 待ち伏せ

となっていて、まずは前巻で竹姫が天英院の罠にはめられて大奥内で襲われそうになった事件の落とし前をつけるべく、吉宗が静かに動き始める。狙う相手は、天英院と手を結んでいる、かつて吉宗と将軍位を巡って争った「館林松平家」である。

館林松平家の江戸屋敷を使者として派遣されるのは、もちろん、水城聡四郎で、元館林藩士であった五菜の太郎こと野尻力太郎が竹姫襲撃に失敗したことと、これ以上手を出すなという牽制なのだが、その結果は、屋敷を出てからの藩士との「大バトル」というのはお決まりの流れである。ただ、残念なのはどこの藩士たちも「弱い」ことなんだよね。

そして、館林を牽制した後、吉宗の矛先は天英院に向うのだが、黙って従う彼女であるはずもなく、しっかりと京の実家に吉宗を抑えてくれるよう根回しを始める。それに対して、吉宗がうった手が「聡四郎を竹姫を側室とする根回しに京へ派遣する」という手段で、これでまた東海道で伊賀者をはじめとした敵方との争闘アクションが期待できるという設定である。

もっとも水城がその役目で派遣されたのは、吉宗によると

水城は公用とはいえ、身分が軽い。その言は、さほどの重みを持たぬ。万一、躬と竹野「間に故障(異議)を言い立てる者が出て、婚姻を長さなえればならなくなったとき、若年寄などを京へやっていては、躬の名前に傷がつく

ということで、彼の能力を評価してというところでないのが聡四郎にとっては悲しいところなのだが、道中の刺客のことを考えると彼以外には無いような気がするのだが、どうであろうか。

で、本巻のもう一つのバトルが京都への道中で、襲ってくるのが御広敷伊賀者の脱走者たちが主力とあってなかなかの強敵である。ただ、元頭領の藤川への忠誠心が薄くなっているのと、聡四郎には玄馬のほかに伊賀者の山崎伊織が加勢しているので備えは万全ですね。もっとも襲撃の周到さは、館林藩のやっつけ仕事とは段違いのできの良さと誉めておきましょう。

【レビュアーから一言】

大奥内でのどろどろとした権力争いや忍を中心とした話が続くと、どうも話が暗くなってしまうのだが、今巻でスカッとさせてくれるのが、やはり聡四郎の奥方の「紅」と女忍の女中の「袖」。竹姫の見舞いで江戸城へ行き、意地悪をしかけてくる天英院付きの中臈を脅したり、大奥取次に殺気を浴びせて怯えさせたりと強気である。もっとも仕返しをしてやると天英院を脅迫する「竹姫」も大したお姫様でありますが・・・。

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