現役女子農業高校生が、戦国時代にタイムスリップして、持ち込んだ種子や後世の農業技術な器具を駆使して、尾張の信長のもとで大活躍する、時代改変もの「戦国小町苦労譚」のコミカライズ版の三〜四巻。
前巻までで、信長の厳しい作物の増産命令を難なくこなし、これで安泰か、と思いきや、信長から新たな難題が下されるし、静子の知識の秘密か引き寄せるのか、隣国から本多平八郎、前田慶次、竹中半兵衛といったこの時代を彩る新たな登物人物が静子を訪ねてやってくるし、といった展開である。
【構成と注目ポイント】
構成は、第三巻が
第十一幕 拠点
第十二幕 侵入
第十三幕 看病
第十四幕 攻城
第十五幕 八角
第四巻が
第十六章 追及
第十七章 馬廻
第十八章 鍛錬
第十九章 開発
第二十章 混乱
となっていて、まず、信長が静子の作物増産計画に味をしめたのか、彼女の村を中心に大農産物生産拠点をつくれ、という命令が下される。

このため、静子の知識を広めるための勉強会が開催されるのだが暦や地番といった概念もまだ庶民には浸透していない時代のため、連絡ミスが相次ぐ。さて、この状況を打開するため、静子の策は・・・といったのが、三巻の最初の工夫ですね。

今では当たり前のシステムが、実は当時としては、画期的なシステムであったことにまず驚いてください。
そして、信長はいよいよ斉藤龍興の治める稲葉山城の攻略にとりかかります。ここで、信長は断続的攻撃で、斉藤勢を精神的に消耗させ、その後に総攻撃をかけるのですが、ここに静子の「ストレス論」の進言か生きています。

ちなみに、本シリーズででてくる「斎藤龍興」は宮下英樹さんの「センゴク」シリーズで、信長包囲網の策を考案したような策士ではなく、ちょっとぼんやりとしたお殿様です。
そして第四巻では、静子の知識と技術を存分に利用するために、彼女は「織田家相談役」に任命されます。その少し前に、信長は彼女が今の時代の人間ではないことに気づくのですが、彼の合理主義のもとでは、そんなことは小さな事であるようです。

まあ、三巻の美濃攻めの序盤で、斎藤勢の砦攻略で静子の考案(?)したクロスボウを使って、部隊を編成して成果をあげているので、その御蔭もあるのでしょう。
さらに、四巻の後半では、三巻で、織田領に迷い込んだしまった本多平八郎が、榊原康政や本多正重らと再び登場します。彼は彼女のところに綿花を持ち込んで、彼女に求愛するのですが、

作物にしか興味のない静子によって、話はあらぬ方向へ逸れていきます。ここらは原書で、確認してください。
このほか、信長の息子・奇妙丸が成長してからの知将となる基礎を静子から教わったり、

織田家随一の勇将・森可成の息子の勝蔵、のちの森長可が静子のトレーニングで大レベルアップするのですが、

静子がどんな方法を使ったのか、なんてところもしっかり原書のほうで。
もっとも、最後のほうでは、静子以外にも戦国時代にタイムスリップした現代人がいるようで、といった展開が始まっていて、ここらが次巻以降の、新しい揉め事の種になっていくんだろうな、と推測されるところであります。
【レビュアーからひと言】
四巻の後半部分では、静子が生活用品をつくる技術者たちを集めた「技術街」というものを作って、砕石を敷き詰めて押し固める「マカダム舗装」といった道路舗装や竹製のマグなどの生活に関連した新技術の開発を進めます。織田家の家臣たちからは、戦闘に直接関係ないものに力を入れる事に反対もあるのですが、目先のことに目を奪われてしまいがちになるのは、いつの時代も変わらないようです。
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