静子は浅井長政裏切りの歴史改変に成功する?・・ー「戦国小町苦労譚」9

現役女子農業高校生が、戦国時代にタイムスリップして、持ち込んだ21世紀の器具や技術を駆使して、織田信長の治める尾張・美濃の農業生産や織田軍の武器のレベルをとんでもなくUPさせて、信長の「天下統一」を助けて大活躍する、時代改変もの「戦国小町苦労譚」のコミカライズ版の第9弾。

前巻で宣教師たちをじゃがいも料理で味方に引き入れたり、森勝蔵に新しい武器を与えて、伊勢平定時に彼が手柄を立てられるよう助けてやった静子なのですが、今巻では、浅井・浅倉との戦乱など敵対勢力による「信長包囲網」という信長の天下統一の最大の障壁となった危機脱出のために奔走します。

あらすじと注目ポイント>浅井家裏切りは歴史改変できるか?

構成は

第四十一幕 訓練
第四十二幕 裏切
第四十三幕 半旗
第四十四幕 完成
第四十五幕 秘策

となっていて、冒頭では信長が後ろ立てになった擁立した15代将軍・足利義昭の評判が最悪になりはじめ、織田勢とも仲が悪くなり始めるところから始まります。史実では、これからしばらくすると、浅井、浅倉、延暦寺あたりが手を結んだ第1次信長包囲網にはじまり、敵対勢力の信長への反攻も厳しくなっていく時期ですね。

信長への反攻を準備する将軍・足利義昭の画策はまず近江の雄・浅井家に伸びてきます。もともと、浅井家は、長政の祖父・亮政の時に勃興した武家なのですが、まだ勢力が脆弱な初期勃興期の頃から、越前の名門・朝倉氏から援助されていたという関係で、家中も多数派の浅倉派と少数の織田派に分かれていたという政治情勢です。

この家中の対立関係が、信長による朝倉討伐の開始によって一挙に激化し、史実では、浅井長政が。親朝倉派に擁された父・久政に押し切られる形で信長を裏切り、「金ケ崎」で織田軍を背後から攻撃します。
信長は大きな犠牲を出しながらボロボロになって撤退するのですが(これが「金ケ崎の退き口」ですね)、これが後の延暦寺の焼き討ちや浅井親子や朝倉義景の頭蓋骨を盃して酒を呑む、といった蛮行の原因となってきます。

この物語では、静子が信長に浅井家の裏切りの可能性をチクって、信長から浅井長政に朝倉討伐の目的を説明させることによって長政の反乱を防ぐのですが、結局のところは、親朝倉派の久政のクーデターを招いて、長政が追放されるだけという結果を招いただけ。浅井・朝倉が織田家と敵対して戦となった、という大きな歴史の流れは変えることができず、「姉川の合戦」が始まろうとするのですが・・ということで次巻に続いていきます。織田家を守るために今までは、後陣に控えることの多かった静子が何かを決意した気配の見える後半部です。

ちなみに、今回もコンパウンドボウガン、フィールドスコープ、卵かけご飯といった21世紀の品物が乱暴に導入されているのですが、戦国時代の人間の評判がどうだったかは、原書のほうでご確認ください。

Bitly

レビュアーから一言>宣教師との交渉材料は「もやし」

織田包囲網への防戦体制構築の一環として、静子が担当するのは各種の物資の調達体制の整備なのですが、ここで彼女は宣教師を通じた欧州諸国との関係樹立を目指します。この代償措置として、彼女が提示したのが、当時、長い航海の一番の問題であった「壊血病」の治療法です。

彼女は提示したのは、「もやし」の船内栽培によるビタミンCの補給だったのですが、これは大正7年のシベリア出兵のときに日本軍内に導入された壊血病防止策と同じです。もやしによるビタミンC補給は太平洋戦争の戦時下でも推奨されていたようで、まさに非常時のビタミン補給剤といえるかもしれません。

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