宇佐山城の戦で破れ、織田軍大苦戦。静子は殿軍を務めるが疲労困憊=「戦国小町苦労譚11 志賀の陣・終結」

現役女子農業高校生が、戦国時代にタイムスリップして、持ち込んだ21世紀の器具や技術を駆使して、織田信長の治める尾張・美濃の農業生産や織田軍の武器のレベルをとんでもなくUPさせて、信長の「天下統一」を助けて大活躍する、時代改変もの「戦国小町苦労譚」のコミカライズ版の第11弾が本書『夾竹桃・平沢下戸・沢田一「「戦国小町苦労譚11 志賀の陣・終結」(アース・スターコミックス)』です。

前巻では、野田・福島城に籠もる三好三人衆への攻撃をしかけた織田軍だったのですが、石山本願寺の攻撃をうけ、本願寺に呼応した浅井・朝倉勢の兵を「宇佐山の戦」で迎え撃ちます。ここで、静子をタイムスリップからずっと支援してきてくれていた森可成が弓で射られるなど大打撃を受けた後の、織田軍の再起が描かれます。

あらすじと注目ポイント

構成は

第五十一幕 撤退
第五十二幕 詭計
第五十三幕 休息
第五十四幕 再起
第五十五幕 再生

となっていて、静子の策略で優勢に攻め込んでいた織田軍だったのですが、本願寺勢の参戦と浅井・朝倉勢の反撃で一挙に形勢が逆転します。ここで、息子の森勝蔵をばって、織田軍有数の勇将・森可成が敵勢の弓攻撃で倒れてしまいます。史実では、ここで森可成は戦死してしまうのですが、静子たちのタイムスリップで歴史改変が始まっている、この「苦労譚」の世界ではどうなるか、は物語の中盤辺りで明らかになります。

ともかく、この敵勢の一斉攻撃で敗色が濃厚となった織田軍は兵をひくのですが、この撤退の殿軍を、静子は兵五百を率いて務めることを決意します。殿軍は戦の中で最も采配が難しく、全滅必至といわれる役割で、静子のここで戦死を覚悟するのですが、可児才蔵たちの働きで、なんとか織田本隊を無事撤退させるとともに、静子もなんとか落ち延びることに成功します。

この後、信長は浅井・朝倉との和議を結ぶ交渉の仲立ちに比叡山の僧侶を使うのですが、彼らを脅す材料に「森可成」が使われるのですが、詳細は原書のほうで。

そして、宇佐山城の戦から生還した静子は蓄積した疲労を癒すため、しばらく静養するのですが、戦況のほうは織田軍不利の状況が続きます。この不利な戦況の中で、信長から延暦寺に味方する村落の攻略や長島の一向一揆の鎮圧を命じられた勝蔵(森長可)は、やる気MAXとなるのでですが、これが行き過ぎて、あちこちの村で暴走が始まってしまいます。彼は非常に気性の激しい武将として有名なのですが、その片鱗が表れています。史実でも、命令違反や軍令違反が多いといわれているのですが、信長の処分は文書叱責など軽い処分がほとんどで、彼の乱暴な行動をかえって好んでいたような感じですね。

さらに織田軍は「堅田の戦」で比叡山の物流拠点の攻略を図るのですが、これも失敗し、浅井・朝倉包囲陣はますます膠着をしていきます。

ここで、信長は将軍・義昭と朝廷を動かして、なんとか浅井・朝倉勢、比叡山勢力との講和にこぎつけるのですが、原書では、信長の正室・濃姫が、以前に静子が本名の「綾小路」を使って朝廷から授けられた官位と「仁比売」に名前をしっかり使って裏工作をしたように描かれています。

戦国小町苦労譚 志賀の陣、終結 11【電子書店共通特典イラスト付】 戦国小町苦労譚 【コミック版】 (アース・スターコミックス)
静子が戦国の世に来て以来、常に見守ってもらっていた織田家の重鎮・森可成が敵&...

レビュアーの一言

今巻は、前巻の後半部分から継続しての、織田軍の苦戦の日々が描かれています。史実では、この時期、反信長勢力が勢いづいていて、織田・朝倉の和睦でも人質交換を朝倉勢の築いた壺笠山城で行ったり、一説によると、信長が「天下は朝倉殿に、我二度と天下を望まず」といった起請文を朝倉義景に出したといった話もあるほど、織田の権威は大きく失墜しています。
それに呼応してか、織田の快進撃の原動力となっていた静子たちのもとへ調略の手が伸びてきたり、信長も引き留め策を講じ始めるようですが、これは次巻以降の展開となるようです。

【スポンサードリンク】

コメント

タイトルとURLをコピーしました