世界は「10の思い込み」に溢れている ー ハンス・ロスリング「FACT FULNESS」

自分は「事実」や「最新の情報」に基づいて、最良の判断をしていて、自分が思っている「世界観」や「世界」や「国内」の情勢についての知識はほぼ間違っていない、なんてことを思い込んでませんか?

そういう自己診断が、多くの場合間違いで、我々がもっと「事実」の情報を入手したり、「事実」に立脚して判断・行動することの大事さを改めて教えてくれるのが本書『ハンス・ロスリング「FACT FULNESS」(日経BP社)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

第1章 分断本能
 ー「世界は分断されている」という思い込み
第2章 ネガティブ本能
 ー「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
第3章 直線本能
 ー「世界の人口はひたすた増え続ける」という思い込み
第4章 恐怖本能
 ー危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
第5章 過大視本能
 ー「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
第6章 パターン本能
 ー「ひとつの玲がすべてに当てはまる」という思い込み
第7章 宿命本能
 ー「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
第8章 単純化本能
 ー「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
第9章 犯人探し本能
 ー「誰かを攻めれば物事は解決する」という思い込み
第10章 焦り本能
 ー「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
第11章 ファクトフルネスを実践しよう

となっていて、冒頭のところで、「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を終了するでしょう?」や「世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう代わったでしょう?」「いくらでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう?」といった世界の事実に関するクイズが12問出題されるんもで、まず立ち読みでもいいから問いてみてほしい。
実は、このクイズ、いずれも常識天判断力と知識さえあれば簡単に解けてしまうと思いきや、2017年に世界14カ国・1万2000人に行ったオンライン調査では、平均正解数は2問/12問、全問正解者なし、12問中11問正解者がたった一人、といった結果。しかも、学歴が高い人や、国際問題に興味がある人でも大多数がほとんどの質問に間違えていた、という結果を示していて、我々が学歴や興味にかかわらず、以下に事実に基づかないで、「世界を認識」しているかを証明するものとなっている。

では、なぜそんな間違いをしでかしてしまうのか、という原因は、本書によれば「ドラマチックするぎる世界の見方」にあって、これは

人間の脳は、何百万年にもわたる進化の産物だ。わたしたちの先祖が少人数で狩猟や採集をするために必要だった本能が、脳には組み込まれている

というものでもあるのだが、この本能の実体を10個の「本能」に分解して、それぞれに対する処方箋をアドバイスしてくれている。

たとえば、その1つ目の「分断本能」は「何事も2つのグループに分けて考えたがる、二項対立を求める」本能で、良いか悪いか、正義か悪か、自国か他国か、と世界を2つにわけて、双方を対立軸で考えてしまうという特徴をもっているのだが、あなたにも思い当たるところがありませんか?この本能が蔓延すると、分断がないのにあると思い込んだり、対立がないのに対立があると思い込んだりして「歪んだデータの解釈」につながる、と本書では指摘している。

で、この本能を防止するためには、「平均の比較」「極端な数字の比較」「上からの景色」という3つのポイントが大事になるようなのだが、詳しいところは原書での確認をおすすめします。

さらに、「人はみな、物事の大きさをはんだんするのが下手くそ」で、数字を一つだけ見て、その大小にとらわれて、ひとつの事例を重要視してしまう「過大視本能」とネガティブ本能が合わさると、人類の進歩を過小評価しがちになるってなあたりは、心当たりのある人も多いのではないでしょうか。

このほか、物事のポジティブな面よりネガティブな面に注目してしまう「ネガティブ本能」のもたらす「世界はどんどん悪くなっている」という妄想とその防止法であったり、今まで人間が「身体的な危害」「拘束」「毒」という自らの生命の危険からから免れるために身につけた「恐怖本能」がメディアの報道する「大げさな」恐怖を刺激する報道に反応して「世界は怖い」という印象を植え付けてしまうことによる思い込み、などなど事実に基づかない「幻想」にいかに取り巻かれて生きているかを押し言えてくれるかということと、それからの脱却法をアドバイスしてくれているので、特に、子どもたちに「世界の姿」を教える立場にある「教育者」の方にはぜひとも目を通しておいてほしい一冊ですね。

【レビュアーから一言】

今ちょうど感染症の猛威が世界中を襲っていて、おそらく、これかたいろんな「隠された真実」やら「陰謀」やら、事実に基づいているのかどうかわからない話が老杉されてくるのだろう、と思います。そんな時であるからこそ、本書にいう「FACT(事実)」を掴んで行動するスキルを大事に育てていきたいですね。

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