リスク狂・妄が快進撃。借金取り立てと国宝(疑)の争奪戦勃発 ー 河本ほむら・柊裕一「賭ケグルイ・妄 2、3」

賭ケグルイ

日本の政財界の有力者の師弟が集まる私立百花王学園を舞台に、学園の支配権を巡って可愛い風貌ながら天然のギャンブラー「蛇喰夢子」が、生徒会長の桃喰綺羅莉などの生徒会メンバーや百喰一族とギャンブルでの闘いを繰り広げる「賭ケグルイ」シリーズの狂乱のリスク好き娘・生志摩妄の活躍するアナザーストーリーの第2弾と第3弾。

前巻で、同級生のイカサマの犠牲になりそうだった「濡羽綾女」の危機を救った、美化委員長「生志摩妄」であったのだが、その「綾女」を美化委員会の新メンバーに加え、「妄」を慕う副委員長・羽々斬直愛とともに、学園のトラブル解決に乱暴に乗り出していく展開ですね。

【構成と注目ポイント】

第2巻は収録の第16話から第29話までが「取り立てる女」となっていて、「生志摩妄」と「羽々斬直愛」によって”なし崩し”的に美化委員会のメーバーに補機刷りこまれた「濡羽綾女」が取り立てに向かうシーンからスタート

取り立てる相手は一年山茶花組の「寺須美栗霧」。おじいさんが警察官僚ということになっているので、根っからの官僚・政治家一家の子供ですかね。

彼女が賭金を払わない、という苦情が生徒会にあったので、美化委員長が乗り出してきたようですが、資金は潤沢に持っているようなので、かなり悪質な踏み倒し常習犯ですね。で、この返済の支払い「銃」を使った「受動ロシアンルーレット」で決めることとなります。勝負にのってこようとした「栗霧」を誘い込む、「妄」の乱暴さがよろしいですなー。

で、通常のロシアンルーレットは自分が銃のシリンダーを回すのですが、今回は

のあと後攻が1から9の数を指定して、先攻が指定されて数だけシリンダーを回して自分に向かって撃つというゲームです。
本来なら、死亡者が出てもおかしくないロシアン・ルーレットなのですが、提唱者の「栗霧」は平気な顔で自分のターンをこなしていきます。銃にこめられているのが実弾であったことは、彼女が実際に鏡を撃ち抜いて証明するのですが、まあここにも仕掛けがないはずはありませんね。

ただ、この栗霧の姿を超えてすごいのは、勝負に参加するのを渋る「綾女」に対して

と自分の身を犠牲にして(本人はリスクを負うことに快感を覚えているようですが)誘う「妄」と「キレて」しまうと突然腹をくくってしまう「綾女」の狂乱ぶりですね。
ただ、臆病で怖がりの「綾女」がこういう勝負に出るのは

という、栗霧の「怒った顔」にこの勝負になにか仕掛けがあると感づいているからなのですが、さて何が仕込まれているかは本書のほうでご確認を。

続く第3巻は、第30話から第31話が「保ちうる女」1~9、第39話から第42話が「刺す女刺される女」1~4となっていて、まず前半部分は生徒会役員で「伝統文化研究会会長」の西洞院百合子との対決。別シリーズの「双」の情報によれば、百合子は学園の一番のイベント「繚乱祭」で最高の売上を達成して、桃喰綺羅莉の抜擢を受けた人物ですね。

百合子は教養がなくてガサツな「妄」がキライなのようですが、

彼女が借金の代金がわりに取り立てた「曜変天目茶碗」のレプリカの茶碗を賭けての勝負です。この茶碗は百合子がレプリカだと見立てていたのですが、割ってしまおうとする「妄」の挙動に俄に「本物かも」と思い、勝負を受けてしまいます。

勝負は茶碗の石づきを使った「ダイス・ゲーム」なのですが、浅くて狭い「石づき」にダイスを投げ入れて、出目の数の大小をきめる単純なものながら、「妄」の妨害行為と、あくまでプライドを何より重視し、正道をいく百合子の性格の違いがくっきりと描かれています。まあ、賭け代に、命代わりに乙女の命である「黒髪」をかけるという百合子も相当なものであるますが。

後半部分は、第一巻で「妄」との勝負に「羽斬」が敗北したため、今までの美化委員が全員脱会したため、手駒が足りなくなった「妄」が自分の取り巻きたちを美化委員に加えようと画策したところからの羽々斬とのトラブルが勃発します。

この「妄」の取り巻き3人と

と主張する羽々斬+綾女の間で、1から30までの数字が輪になっている台を使った「チキンサークル」というゲームが始まります。このゲームは、最初に「自分の数字」を決めて、その数字のところに指をおき、

とするのですが、「コマが自分の数字に止まったら負け」ではなく、カードを引いたものはコマの止まった数字をナイフで刺して、その時、先に数字から手を離してしまったものが「負け」という、「M」の傾向値の高い「妄」や彼女のとりま気には「魅惑」のゲームのようですね。
そして、このゲーム絶対に負けない、と羽々斬は、怯える「綾女」を鼓舞するのですが・・・

といった展開です。

【レビュアーから一言】

生徒会長・桃喰綺羅里を中心とした勢力と蛇喰夢子とのギャンブルを使った「権力闘争」の色合いの強い本編や、早乙女芽亜里の幼馴染の救済に端を発した「成り上がりもの」の「双」シリーズに比べ、リスク狂の「生志摩妄」を主人公にしているだけあって、一番、退廃的なのがこのシリーズのような気がします。その分、登場する清純派も不良も、蠱惑的なキャストがたくさん出てくるので大人好みっちゃ大人好みでありますね。

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