アップルの「破壊的イノベーション」の胆を見つけようー河南順一「THINK DISURPTION」

日本の企業活動における「イノベーション」の大事さや必要性はかなり以前から声高に主張されてはきているのですが、さて、実態の方は、となると首を傾げたくなる場合が多いのではないでしょうか。とりわけ、新型コロナ関連の政府対応でも見られるように、周囲の利害調整に時間と労力をとられ、速度も効果も薄いことを繰り返す「悪手」を打ってしまうこともままあることです。
しかし、こうしたイノベーション、特に今までの常識を覆して絶大な効果をあげる「破壊的イノベーション」を実現するとなると、本書でいうように

今ほどディスラプション/破壊的イノベーションが注目される時代はありません。・・・新たなテクノろしーが台頭する歴史的な転換期にいるのです。変革をしない選択は、すなわち衰退を意味します。
一方でディスラプションにまつわる冷徹な真理は、苦難をさけられない点にあります。しかも、ディスラプションの時代に熟した果実はどこにもぶらさがっていません。「正解」もありません。

とあるようになかなか難しいのは間違いありません。

そんな「ディスラプション/破壊的イノベーション」をおこし続けていたスティーブ・ジョブズ時代のアップルがどうしておきたのかを解説し、それが再現できるかをアドバイスしてくれるのが本書『河南順市「THINK DISRUPTION アップルで学んだ「破壊的イノベーション」の再現性」(KADOKAWA)』です。

構成と注目ポイント

構成は

第1章 創造のための破壊
第2章 不可能を可能にする
第3章 霊感を研ぎ澄ます
第4章 想像力の「融合」で革新を生む
第5章 情熱→ビジョン→オブセッション
第6章 信頼できる仲間の見つけ方
第7章 フォーカス&インパクトの実践
第8章 ブランドを精錬する
第9章 自分の強みを最大化させる
第10章 「勇気」ある千t買うで世界を動かす

となっていて、大筋的には、筆者のアップルでの「Think different」のブランド戦略を通じて得た、スティーブ・ジョブズが主導したアップル流の「ディスラプション/破壊的イノベーション」を解説していく流れとなっています。

なので、一時期、どん底にあったアップルが一挙に高みに上がっていった動きをトレースしているために

自分が何かを好きでたまらなくなってオブセッションを抱くときに、自分が周りにどう見えるか、皆に受け入れられるかは気になりません。周りの意見を機器ながら「型」にはまて作ったものは、だいたい「つまらない」ものになります

であったり

そもそも、お膳立てができるのを待って行動をおこす人が、オブセッションを抱くことはないでしょう。そういう人に「最高のもの」が作れるとは思えません。

と「洞ヶ峠」的なスタンスをとる人には、かなり強い口調になっているのは否定できないですね。ただ、こうした意識は、「ありきたりのもの」でないものを産み出すには欠かせないものであるらしく

目先のKPI(業績評価指数)を追いかけるのではなく、スティーブがよく口にした「Insanely great」なものを作るという目的意識を持てるようになると、障壁になるものはすべて排除していくのが当然だという考えに帰結するからでしょう。

とし

おそらくスティーブのアイデアのほとんどは、開発するエンジニアや製造部門の担当者からすると実現可能性に乏しい「妄想」でした。しかし破壊的なディスラプションのプロセスにおいては、この妄想が重要な起点になります

としていて、破壊的イノベーションをおこすためには、数字分析の積み重ねではなく「熱情」に基づく「妄想」が一番大事なこととされているのは注目しておくべきでしょう。
特に

いつまで経ってもKPIのみを追いかけるだけの組織では、イノベーションを起こす以前に、持続的な事業の推進力も萎えてしまうでしょう。

といったことは、いわゆる「秀才型企業」の多くが辿ってしまった途を暗示しているようです。もっとも、「そうは言われても、天才ではないし・・」という感情をもつ我々に

たしかに常識を覆すためには、いまだかつてないゴールやソリューションなどを思いつかないといけません。しかし、それらは必ずしも天才的な発明が前提とは限りません。アイデアの組み合わせが要です。

と助け舟を出してくれているので安心しておきましょう。大事なのは「ディスラプションに関わる人たちの意識と行動を「融合」すること」とされているので、破壊的イノベーションは、天才だけが実現できるものでもないようです。

ただ、こうした破壊的イノベーションが起きるときに必ずでてくる「反対勢力」「抵抗勢力」への対策として

トップが強烈なリーダーシップでディスラプションを起動するチームを支える必要があります。
そして、自分が最高のものを作ることに心血を注ぐと同様、チームとその周りの組織にも同様のコミットメントを要求して、組織を超えてインパクトを最大化する文化とプロセスを確立することも欠かせません

となっているのですが、ここはちょっと楽観的に過ぎるかもしれません。

このほか、自分ブランドの作り方、とか信念の持ち方とか、メンタル部分でのアドバイスもありますので、詳細は原書のほうで。

レビュアーから一言

「イノベーション」を産み出している組織は、最初の頃は、「天才的な才能」が創り上げたところもあるのですが、長期間にわたってそれが続けられている組織には、それなりの秘訣や特徴があるのは間違いありません。アップルのような「破壊的イノベーション」を産み出すことは難しいかもしれませんが、その手法を研究することによって、それより小さいながらも、それなりに「破壊的なイノベーション」を産み出すことは可能ではないでしょうか。

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