宮下英樹「センゴク権兵衛 26」=センゴクは徳川家に食い込むが、豊臣政権は斜陽への一本道

美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Season『宮下英樹「センゴク権兵衛」』の第26巻。

前巻では、領国である小諸の支配を隣国の真田昌幸の影を感じるとともに、地元の豪農や国人侍の顔色をみながら進めているセンゴクの一方で、秀吉の豊臣政権では、関白の秀次との対立が鮮明になり、彼と彼の家族を処刑するなど、豊臣政権が大きくゆらぎ始めています。今巻では、センゴクは領国から再び呼び出されるのですが、家康の後継者となる秀忠との関係を再構築。しかし、豊臣政権のほうは、秀吉の老害がひどくなり、ますます落日の感が強まります。

あらすじと注目ポイント

構成は

vol.221 護衛任務
vol.222 輿入れ
vol.223 私心なき政道
vol.224 交渉の争点
vol.225 惣無事成就
vol.226 天下人の病
vol.227 泥沼の戦役
vol.228 最後の仕返し
vol.229 永劫の英雄
vol.230 贈る言葉
vol.231 真心の芽

となっていて、まず冒頭では、小諸で領国を固めることに専念していたセンゴクのもとに豊臣政権の重臣・浅野長吉がやってきて、茶々の妹・お江を江戸まで警固してほしいと依頼してきます。秀忠とお江の婚姻が整ったのですが、このセンゴクに警固役を指名したもともとは徳川家康らしいので、家康はセンゴクのことを自分の陣営の武将と思っている気配です。秀忠とは、北条攻めの時に知り合いになっているので、ここらからセンゴクが外様ながら徳川政権初期に重く用いられる基礎が出来上がっているようです。

で、お江と結婚する秀忠は通説どおり「堅物」なのでですが、長男の家光を嫌い、次男の忠長を跡継ぎにしようとして、春日局と対立したエピソードから冷酷な母親というイメージが定着してしまった「お江」なのですが、この巻ではかなり「お茶目」な姿で描かれています。

政権から少し離れたところにいるセンゴクは、今のところ平穏な様子ですね。

しかし、秀吉政権中枢の石田三成たちのほうは、徳川家康の茶会を利用しての有力大名との関係強化に脅かされながら、講話失敗を願う宣教師たちや、明国内の権力闘争の間で、明国との和平交渉をこなすという難題にぶつかっています。このためには。勘合貿易に拘っている秀吉をなんとか説得しないといけないのですが、これも浅野長政の意を受けた家康によって邪魔され、講和断念か?というところまで追い詰められてしまいます。

ここで情勢が急変。息子の豊臣秀頼に政権を譲ったときに政権が不安定化するのを怖れた秀吉が翻意し、講和成立かと思わせるのですが、日本だけでなく、アジアの「天下人」となる妄想にとりつかれた秀吉が再び・・という展開です。秀吉の老害に三成はじめ豊臣政権がゆさぶられている状況ですね。

この危機を脱し、家康に政権を奪われるのを避けるには、明智光秀がやったように、三成が主君(光秀は信長、三成は秀吉)を弑する謀反を起こし、謀反人として葬られるのが一番の策なのですが、といったあたりが本書では描かれています。もちろん、史実どおり、本シリーズでもトンデモ歴史は展開されていないのでご安心ください。
巻の後半にむけて、いよいよ秀吉政権が斜陽の時を向かえていきます。この様子を見て、センゴクは、決死の覚悟で秀吉に諫言を試みるのですが、普段の行いが乱暴なせいか不発に終わってますね。

これを含めて、豊臣秀吉の晩年の権力模様の詳細は原書のほうでどうぞ。

Bitly

レビュアーの一言

今巻では、センゴクの妻の「お藤」が亡くなっています。浅間山の噴火のあたりから体調を崩し、今までの心労が重なったのが原因のようですが、最期までセンゴクを叱咤しているのが彼女らしいところです。
設楽原の戦で武田勝頼を破った後の戦乱のあいまに結婚してから、センゴクが戸次川の戦の敗戦の責をおって改易され、浪人している間も一緒にいて、センゴクと浮沈を共にしてきた女性でしたね。今回は、結婚当時のお姿をお見せしておきます(「センゴク天正記5」のセンゴクの嫁取りのシーンです)

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