美濃・斎藤家の落ち武者から国持大名にまで出世したのに、自らの突出によって島津との戦に敗戦して改易。一家離散のどん底から再び国持大名まで出世。さらには徳川二代将軍のときには「秀忠付」に任命されるなど徳川幕府の重鎮となった「仙石久秀」のジェットコースター人生を描く「センゴク」シリーズの第4Seasonの第6巻
四国攻めで豊臣家の貴公子・宇喜多秀家の軍勢の中で持ち前の前へ前へ出る攻め方は長宗我部軍の前で不完全燃焼ながら、戦中でのちょっとした発言で、黒田官兵衛が長曾我部の策の裏をかく戦略を思いつく絶妙のアシストをしたセンゴク権兵衛。
今巻はその後の彼への論功行賞やそれがもたらした家中の、変化に描かれた後、主眼は、これからセンゴクのジェットコースターの原因となる、島津四兄弟が九州支配へ向かう様子、とりわけ稀代の戦術家・島津家定についで描かれる。
【構成と注目ポイント】
構成は
VOL.40.夢
VOL.41.十万石
VOL.42.家督
VOL.43.この将
VOL.44.中書家久
VOL.45.邂逅
VOL.46.長篠前夜
VOL.47.大友宗麟
となっていて、まずは土佐以外の所領を豊臣秀吉へ明け渡す決意をした長曽我部元親が
と、その息子信親にかける思いと
といったセンゴクを讃岐十万石へ加増するシーンが、印象的。
戦国の加増は、石田三成や大谷刑部といった「官僚群」の猛反対
を豊臣秀吉が押し切ったもので、このあたりに豊臣秀吉没後の文治派と武断派の対立の萌芽が見えます。そしてこの時に、蜂須賀小六は息子の家成に阿波を譲って、秀吉の御側衆となって隠居します。秀吉と豊臣政権下で力を伸ばし始めた石田三成などの官僚群と距離を置き始めたということですね。ちなみに、この蜂須賀家家政は箕輪諒さんの「殿さま狸」の主人公ですね。
「VOL.40 十万石」から「VOL.41 家督」までは、拡大成長を続ける秀吉配下の武将たちの典型的な姿がみてとれます。千石の一家や家来たちが加増になった所領からの収入をどう使おうか、と大騒ぎする様子
に、日本の高度経済成長時代に似たような高揚感が豊臣政権下にあることを知らせてくれるし、センゴクの家臣となった「某」が仙石家で登用されていくことに、何か取り残された感を抱いた、「某」の実家の田宮家の嫡男」秀富が一揆に加担し、結果、「某」が家督を継ぐことなるあたりには、
秀吉政権が日本統一を進めていく過程で、昔ながらの家や一族がすり潰されていく悲哀を感じます。
巻の中程からは九州征伐で戦国の運命を大きく変えることとなる島津家の興亡が描かれてます(もっとも、秀吉に膝を屈する「亡」のところはまだ先なので、今巻のところは島津四兄弟の手による「興」のところが中心ですね)。特に中心的に描かれるのは、センゴクとガチにぶつかる「島津家久」で、「政治」の島津義久、「弓箭」の島津忠平。「謀」の島津歳久に対し、祖父・日新斎が与える「子犬」の試練に対面する様子
や成長してからの京都駅で京都の有名人たち、里村紹巴ら茶人たちとのやりとりや、設楽が原の戦前夜の明智光秀との出会いと対決
を見ても、その激しさと武略の才能が買い見えます。
そして、物語はいよいよ当時の九州の覇者、大友宗麟との対決が始まります。
島津四兄弟に敗れたせいか一般人の印象は薄い武将なのだが、大友氏は鎌倉時代から続く名門で、六カ国を支配し、外国との貿易も盛んで、当時の最新の武器・仏狼機砲をはじめとする大量の武器と7万3千人もの大軍を擁する、まさに大国ですね。さて、この強敵をどうやって倒したかは、次巻に続きます。
【レビュアーからひと言】
加増の沙汰を受けての、主人から家臣あげて加増分を何に使おうかの大騒ぎが、この頃の急成長する時の豊臣政権の様子を表しているのだが、このあたりは、息子家督を譲り、息子・家政の手で着々と領国統治を始める蜂須賀家と大きく違うところである。
そして、これに対する
という秀吉の述懐と石田三成など官僚群の登場シーンが増えてきて、豊臣政権の中身が変わってきていることを感じますね。ただ、秀吉の言う「蜂須賀小六が前にでるのを恐れるようになった」というのには当方は異論があって、ここは、秀吉と長らく一緒に戦ってきた戦友が、政権の変質を察知しての行為とみるのですがどうでしょうか。
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