公取委の凸凹バディで、ホテルのカルテル疑惑をつきとめろ=新川帆立「競争の番人」

お金儲けが大好きで、上昇志向の強い美人弁護士・剣持麗子や、リッチで優雅な生活をおくるために、玉の輿に乗れるよう日夜努力を続ける、努力系弁護士・美馬玉子といった魅力的な弁護士探偵を世に送り出してきた筆者が次に送り込んできた探偵は、なんと事務系の「国家公務員」。

しかも、国家権力のトップを目指してひた走るエリート官僚や、凶悪な犯罪者に果敢に立ち向かう敏腕検事といったところではなく、独占禁止法に違反するカルテルや下請けいじめの摘発を所管する、どちらかと言えば、弱小で地味な(関係者の方がいらしたら失礼の段お詫びします)公正取引委員会の女性係官の奮闘を描くのが本書『新川帆立「競争の番人」(講談社)』です。

あらすじと注目ポイント

構成は

第一章 弱くても戦え
第二章 タピオカを踏むな
第三章 水に流してください
第四章 本当に幸せなのか
第五章 ヒーローはいる
第六章 悪だくみの終わり

となっていて、まず冒頭では、この物語の主人公・白熊楓が担当官として事情聴取し、公共工事の談合情報をゲロしたあと、市役所の屋上から飛び降り自殺した市職員の葬儀で、その娘・豊島美月から「お父さんは悪いことをしていたのか」と詰問されます。

この女の子は物語の後半部分で重要な役割を果たしていくので覚えておきましょう。

今回の物語の主人公となる白熊楓は、もともとは警察官志望で、警察学校に入校していたのですが、警察官をしていた父親がその時、交番強盗にまきこまれて怪我をし、楓が警察官となれば同じような事件に巻き込まれることを心配した母親に任官を猛反対されて断念。その後、国家公務員試験を受けて、公正取引委員会に入局したという変わった経歴に持ち主です。

警察官になるために小さなころから空手をやっていて、大学時代も空手部所属で、全国大会でもそこそこの成績をおさめているという、ねっからの体育会系です。

なので、デスクワークよりは「現場」という性格なのですが、同僚として、公務員総合職試験でトップ合格した東京大学首席卒業のキャリアで、公認会計士試験、司法試験にも現役合格し、官費派遣でハーバードロースクールに留学していた「小勝負勉」という男性が配属になったことから、「水と油」のごとく反発し合いながら、事件捜査に取り組んでいくことになって・・という筋立てです。

で、摘発捜査のほうは、まず栃木県のホテル三社のカルテル疑惑の捜査です。この三社は毎年、結婚式の費用の値上げをしているのですが、値上げ幅がピッタリ同じであったため、話し合いによる談合疑惑が持ち上がり、立入捜査にはいることとなった、という筋立てです。

ところが、立入捜査に入るホテルの一つで、オーナー社長の安藤が、ホテルのエントランスを出たところで何者かに刃物で刺されて重傷を負うという殺人未遂事件がおきます。さらに、他の大手ホテルチェーンの専務で、今回のカルテル疑惑のある栃木県内のグループホテルの統轄をしている「天沢雲海」という男性も、楓たちの目の前で刃物を持った男に襲われて・・と展開していきます。

この暴漢は、楓の空手の技で取り押さえることができたのですが、彼女たちに助けられた恩などは意に介せず、この雲海という男、立入調査は拒否するは、裏から操作妨害をしかけるは、とあくどいことを仕掛けてきます。さらに、裏で暗躍しながら、表向きは経営が悪化した飲食店などを支援して地域の発展に頑張っているという表の顔を持ったいかにも「イヤなやつ」という雰囲気をぷんぷんさせています。

このカルテル疑惑の解明は、雲海の邪魔と安藤の怪我もあって遅々として進まない中、雲海を襲ったとして逮捕された男が、三社のホテルに花を納入している業者で、ホテルのブライダルが無理難題をいうとこぼしていたことから、ホテル側の納入業者いじめの線でも捜査を進めることとなります。

しかし、納入業者いじめをきっかけにカルテル疑惑まで一挙に捜査を進めようとする、楓たち公取委の捜査陣に対し、雲海は逆に、納入業者の花屋たちが結託して新規業者を締め出したり、納入価格を吊り上げているという記者発表をぶちかましてきて・・という展開です。

この後、権謀術数にたけた雲海の妨害作業と偽装工作で、楓が容疑者を見逃した疑惑をかけられたり、最初にでてきた豊島美月が、ホテルオーナー・安藤の殺人未遂の容疑者として追われたり、とかなりアゲインストな展開となっていくのですが、これらを跳ね返して、大金星に向かっていく、楓と小勝負の活躍を本書でご堪能ください。

ちなみに、この上に五年間つきあった彼氏と結婚間近の楓に、元カノが怒鳴り込んできたり、とかプライベートでのトラブルもふりかかってくる、大騒ぎのミステリーとなっています。

競争の番人
弱くても戦え! 『元彼の遺言状』著者、注目の新鋭が放つ面白さ最高の「公取委&...

レビュアーの一言

本作品は、2022年夏に白熊楓役に「杏」さん、小勝負勉役に「坂口健太郎」さんというキャストでフジテレビでテレビドラマ化されています。

筆者の新川帆立さんにとっては、綾瀬はるかさんと大泉洋さんが主演した「元彼の遺言状」に連続してのテレビドラマ化ですね。こうなると「倒産続きの彼女」の主人公である婚活弁護士・美馬玉子の登場も待たれるところなのですが・・。

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