「響〜小説家になる方法〜」は「青春マンガ」の掘り出し物

「欅坂46」の「平手友梨奈」初主演の映画化で話題になっている、女子高生小説家を主人公としたのが、この『柳本光晴「響」〜小説家になる方法〜』。映画化を記念して、KindleやKoboで2018.10.09まで、1〜3巻が期間限定無料本、4〜5巻がお試し増量版の対象となっている。

【第1巻から第3巻までのあらすじ】

主人公は東京近郊らしい公立高校に通い始めた「鮎喰 響(あくい ひびき)」という女子高生。彼女が高校に入学したところから物語はスタート。

彼女は幼馴染の椿了太郎とともに、高校に文芸部に入部するが、そこは不良の溜まり場。入部させるさせないの騒動の中、響は上級生の「タカヤ」の指の骨を折り・・・、と言った感じで、およそ、「文芸マンガ」とは思えないスタートなのだが、主人公の「奇人」ぶりは十分表現されている。

一方、「木蓮」という文芸誌の主催する文学新人賞に、直筆で、しかも作者プロフィールもなし、連絡先もなし、といった規定外の応募原稿が送られてくる。規定外なので「ゴミ箱」行になる運命なのだが、今の出版界、特に純文学をめぐる状況に不満を抱く若い女性編集者・花井の目に偶然とまり、その「凄さ」に注目する。

彼女は、この作家を探し出そうとし・・・、といったところで、二つの話が交わっていく。

最後のほう、文芸部に入部した響は、部長の「凛花」や他の部員とともに「部誌」を作成を始め・・・、といったところが第1巻。

第2巻は、第1巻の滑り出しを受けて、部誌を作成し、図書館で供覧するところから、物語が加速を始める。

部誌に掲載した「響」の作品を読んだ、中堅作家が筆を折ったり、「凛花」の父親が有名な作家であることが判明したりといったといったことが「響」の日常の出来事。

一方で、新人賞の選考作業では、かなりの風を巻き起こし始めていて、多士済々の選考委員たちの評判でそこを表現しているのだが、サクセスストーリーの成功前夜という感じがしてきてワクワクするところであるんこだが、そこは原書でご確認を。

途中、花井が、「響」の作品の扱いに関連して、編集長と言い合う場面で、編集長が

文芸が売れなきゃいけない時代は、もう終わってる。
今の純文学の仕事は売れることじゃなく、存在すること。
文化の礎を築く「芸術」として、存在し続けることが僕たちの仕事だ

ってあたりは、編集長の自己弁護にすぎない言葉ではあるが、今の純文学や「本」を取り巻く状況を表しているし、このマンガが気勢を上げる隙間を示してもいる。

そして、「響」の乱暴癖はおさまる気配を見せず、文芸部長で親友の「凛花」が父親(祖父江秋人)の引きで作家デビューすることをよく思わない先輩作家・鬼島にいびられているところを救出すべく、彼を蹴り飛ばすところで、第2巻は幕。

第3巻は、第2巻の、鬼島への乱暴のフォローをすべく、「響」が「鬼島」のいる文壇バー(かなり古い用語だな)へ出向くとこからスタート。

このバーでの一時期の勢いを失ってしまった「鬼島」に対して言う

面白い小説が書けなくなって
生きてる意味がなくなっても、
生きなきゃいけないだよね・・

といったところや彼と同席していた、大きくて「美」に恵まれない作家「吉野桔梗」と原宿で買い物をするところでの、

あなたは
どうして
小説家になったの

といったところは、「作家」「小説」というものに、純粋な畏敬と憧れを抱いている「響」に言わせてはいるが、著者の「小説家」を始めして(自身を含めた)クリエイターに対して「存在証明」を求めているようでもある。

今巻は、この二人の作家、鬼島と吉野と「響」とのやりとりで、彼女の「小説家」としての姿が描かれるのと、新人賞の審査会の様子とかが、本筋。

このほか、「涼太郎」の「響」への想いとか、文芸部の合宿の「タカヤ」と「花代子」のやりとりとか”高校生”チックなところもあるので、本筋以外にも、「響」や「凜花」の高校生活の一コマとしても楽しめますな。

【まとめ】

「無料本」と「映画化」ということで読み始めたのだが、なかなかの「出来物」でありました。

「小説家」特に純文学の作家というのは、正直な所、ひと昔の綺羅びやかさを失っている気がしていて、芥川賞の際には話題になるが、あとは・・・、という感じがしている。
そんなところで、「小説家の卵」が主人公のマンガってのは、いろいろ難しいところもあるのだろうが、「響」という主人公をはじめとしたキャストで、青春ストーリーに仕上がっております。

当方は、無料本でお試しする予定が、結局、全巻、有料版で書い直しました。

 

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