遺産相続の揉め事はお任せあれ、の探偵ハイエナ登場=西荻弓絵・幾田羊「相続探偵」1〜3

「ケイゾク」や「SPEC」といった人気テレビドラマの脚本をつとめた西荻弓恵が原作を担当している、ほとんどの人の死後についてまわり、「争続」とも別称される「相続」の揉め事を解決していく、遺産相続専門の探偵の活躍を描いた、前代未聞の相続ミステリ・マンガが『西荻弓絵・幾田羊「相続探偵」(イブニングコミックス)』。今回はその第1巻から第3巻を紹介いたしましょう。

登場人物たち

主なキャストは、東京の裏通りにある古びたビルの一室にある遺産相続専門のc調査事務所を経営する「灰江七生」と、助手の「三富令子」、証拠分析を担当する「朝永」の三人です。

灰江七生

元弁護士で、何かの事件に関わったため、弁護士会から追放されて、実質的に弁護士は廃業状態となっています。父親に関係した多額の借金を抱えているようで、いつも町金から返済を迫られているのですが、無類のコーヒー好きと遊ぶ好きのため借金は一向に減らないようです

三富令子

元医大生で灰江調査事務所のアシスタント。大学の医学部は休学中で、いつか復帰するつもりで学資を貯めているのですが、どうやら父親の医療スキャンダルの関係で、大学から復学を拒まれているようです。
車とバイクの改造とドライブテクニックはプロ並みの腕前な上に、武道の心得もあるようです。

朝永秀樹

元警視庁科学捜査研究所のエース研究員でしたが、民間の鑑定会社から倍の給料を提示されるとあっさり転職した「お金大好き」な分析と鑑定の専門家。投資のほうでもかなりの実績をあげていて、灰江にもお金を貸している様子。
一方、女性には免疫がなく、清楚な女性にはすぐ一目惚れします。

福士遥

テレビや講演でひっぱりだこの売れっ子弁護士。灰江が弁護士であった頃からにお知り合いです。会員となっているトレーニングジムで令子に密着指導をされてから、彼女にぞっこんで、令子の頼みなら断りません。

各巻の収録話とあらすじ

相続探偵 第1巻のあらすじと注目ポイント

構成は

第1話 或る小説家の遺言①
第2話 或る小説家の遺言②
第3話 或る小説家の遺言③
第4話 或る小説家の遺言④
第5話 鎌倉の屋敷と兄妹と①
第6話 鎌倉の屋敷と兄妹と②

となっていて、「或る小説家の遺言」では、人気ミステリ作家の今畠忍三郎の相続問題です。彼はガンで亡くなったのですが残された遺言状では、全財産を秘書に譲るとなっていて、今畠の三人の娘が反発して相続の話し合いは大荒れに、という筋立てです。娘たちは遺言の無効を訴えようとするのですが、そこに、「財産のうち1億円を家政婦さんに、残りをすべて貧困問題の解決のために活動している財団に寄付する」という新たな遺言状が見つかって・・という展開です。
今畠氏には、堅い棒で殴られたような虐待の跡もあり、その犯人探しと一緒に、正当な遺言がどっちなのか、灰江が推理をくりひろげます。

相続探偵 第2巻のあらすじと注目ポイント

第2巻の構成は

第7話 鎌倉の屋敷と兄妹と③
第8話 鎌倉の屋敷と兄妹と④
第8・5話 センチメンタル・ジャーニー
第9話 借り逃げ、どえりゃあアカン!①
第10話 借り逃げ、どえりゃあアカン!②
第11話 借り逃げ、どえりゃあアカン!③
第12話 その女、危険につき①

となっていて、「鎌倉の屋敷と兄妹と」は、灰江の行きつけだったラーメン屋の元店員でシングルマザーの城丸葉月の相続話。そのラーメン屋は店主の急死で廃業し、突然職を失った城丸は生活に困って、家出状態だった鎌倉の実家に頼ろうとするのですが、三ヶ月前に両親は相次いで亡くなっていることをしります。相続人は彼女と彼女の兄二人なのですが、その実家は先祖から家を売ってはいけないという家訓が残っています。しかし、古い家なので維持費も高額で、彼女は相続を放棄しようとするのですが、灰江が調べてみると、城丸の兄がこっそり家を売る相談を不動産屋にしていて・・という展開です。
彼女が書いてしまった「相続放棄」の書類をどうやって無効にするか、灰江の手腕が問われるところです。

「借り逃げ、どえりゃあアカン!」は、SEの依頼者が情報工学の天才科学者に貸した金を死後に科学者の息子たちから取り戻そうとする相続話です。その息子たちは、父親には多額の借金があるので相続放棄をしたと言い張るのですが、無職であるにもかかわらず、ギャンブルやガールズバーに多くの金を使っています。その金の出処はどこから?、という筋立てです。

相続探偵 第3巻のあらすじと注目ポイント

第3巻の構成は

第13話 その女、危険につき②
第14話 その女、危険につき③
第15話 その女、危険につき③
第16話 その女、危険につき④
第17話 マリー・アントワネットの相続①
第18話 マリー・アントワネットの相続②
第19話 マリー・アントワネットの相続③

となっていて、「その女、危険につき」は、いわゆる「後妻業」の女性の犯罪を暴く話。その「紗流」という女性は、今まで結婚3回、養子縁組を1回していて、その度に夫や息子が死亡して、保険金と巨額の遺産を手に入れているのですが、すべて病死か事故死として処理されています。今回、その死に不審を抱いて、保険会社から内密の調査が依頼された、という次第です。
しかし、今まで尻尾を全くつかませなかった女性なので、ガードは非常に固いため、ホームヘルパーを偽って令子が紗留の自宅に潜入します。そして、紗留は前夫の喪があけないうちに、次のターゲットに接近し始め・・という展開です。

「マリー・アントワネットの相続」は、「将棋のかおり堂」という将棋道具の店を営業している「加藤香車」という店主が急死します。彼は息子とはあることがきっかけで疎遠になっていて、現在は「まり坊」と呼ばれる保護猫と暮らしています。
急死だったので、遺産のことなどは何も残していなかったと思われたのですが、「すべての財産をマリーアントワネットに遺贈する」という遺言書がでてきて・・という筋立てです。
灰江が調べると、加藤の飼っていた「まり坊」という猫の本名が「マリーアントワネット」であることがわかり、おそらく猫の世話をしてくれる人に遺産を残したかったのでは、と皆が推測するのですが、実は・・という展開で、真相は次巻4巻で明らかになります。

レビュアーの一言

本業が脚本家の人の原作らしく、なんとなくドラマっぽく感じる仕立てになっています。1〜3巻では、灰江が弁護士を廃業したり、令子が医学部を休学した理由はほとんど明らかになっていないので、詳細な経歴や家族関係の分析はできないのですが、双方ともかなり複雑な「過去」を抱えているのは間違いないようです。

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