癌の女将を支える孫娘と岸が大喧嘩。間瀬と火箱は古巣に復帰して暗躍中=「フラジャイル」15〜17

臨床にでることなく、生体検査や病理解剖などを通じて、病気の原因過程を診断する専門医が病理医。都会の大病院・壮望会第一総合病院の病理部診断科長・岸京一郎と女性見習い病理医・宮崎、病理部たった一人の敏腕臨床検査技師・森井を中心に、臨床をもたずに患者を治療する病理医たちが、臨床医たちの誤診と傲慢や医療業界の理不尽に立ち向かっていく姿を描く医療コミック・シリーズ「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」の第15弾から第17弾。

前巻では、透析患者の数に比べなかなか増加しない腎移植の理由と、父親からの腎移植の不適合の原因をつきとめて、移植を受けた娘の命を救った宮崎医師の活躍と、ガイドラインすれすれの腎移植をネタに、壮望会を脅していた国の役人の旧悪を暴いた岸の姿が描かれたのですが、今回は遺伝子治療によって翻弄されながら、それに立ち向かっていく家族と宮崎たちの姿が描かれます。

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あらすじと注目ポイント

第15巻 緩和医・稲垣は、蕎麦屋の老女将の遺伝子変異性の病に立ち向かうが・・

第15巻の収録は

第58話 祖母の選択
第59話 新たな選択肢
第60話 リンチ症候群
第61話 冷たい選択肢

となっていて、冒頭話では、慶楼大学近くにあって、慶楼の遺伝子ラボの腕利き検査技師・円の行きつけの蕎麦屋の老女将・作山が、自らの癌の抗がん剤投与をやめて緩和医療を選択する、と壮望会緩和病棟の稲垣医師に告げる場面から始まります。そのことを稲垣は病理部の岸たちに報告しにきたのですが、彼のもってきた作山の検体のプレパラートを見て、岸は「遺伝子変異性の癌じゃないか」と光学顕微鏡でみただけで診断を下します。

顕微鏡で遺伝子変異性かどうかなぜ判断できたのか、というところあるのですが、もうしそうなら他の抗がん剤以外の治療法も視野に入るので、精密検査をしたところ、遺伝子変異性の、リンチ症候群であることが判明。そこで周囲の医者たちは、設備や体制と整った慶楼大への転院を啜円るのですが、作山はあくまでも稲垣に診てもらうことを選択します。

そこには、リンチ症候群が子供や孫の遺伝する可能性が高く、孫たちが癌を発症する可能性が高いかもしれない、ということを案じた、祖母の思いが隠れていて・・という展開です。

しかし、現実の治療というのはそううまくはいかないもので、稲垣が望みをかけた治療薬は残念ながら効果がでず、かれは医者の無力感を感じてしまいます。そんなとき、前半で女将(作山)の検査を行ってリンチ症候群を見つけた慶楼大の円検査室長から情報が入ります。

それは、岸の後輩で京都の大学で細胞研究をしている手嶌と共同研究をしている薬で、癌の進行を抑える効果の高い薬なのですが、未解決の問題がたったひとつ残っていて治験の段階に至っていません。その突破口を開きそうなのが、あのバコちゃんが関係していたある薬で・・という筋立てです。

Bitly

第16巻 遺伝子治療の特効薬を巡って、間瀬と火箱が暗躍する

第16巻の収録は

第62話 創薬の機
第63話 できること
第64話 未来は始まっている
第65話 岸先生、不明熱です!

となっていて、円と手嶌が開発中の薬とアミノ製薬が治験中のJS1のセットで適用することで、蕎麦屋の女将・作山の治療の可能性を見出した稲垣は、藁をもつかむ思いで、現在はジェネリック専門のビフィズス製薬にいる火箱に相談をもちかけます。

円たちが開発している核酵素薬にはJS1が使えないだろうことを承知している火箱なのですが、ここは愛想よく稲垣の相談にのって協力することを約束します。どうやら、ここは「黒」いバコちゃんが出現しているようですね。

結局のところ、火箱に薬の配列設計を持ち出すよう唆され、円検査室長から聞き出そうとした稲垣は彼女に成敗されてしまいます。

火箱の悪計も間瀬によって阻止され、結局二人の企みは潰えるのですが、間瀬から核酵素薬にも使える新型のJS2の利用が条件付きで提案されます。それは、今までの研究成果をそっくりビフィズス製薬に売ってくれ、という提案です。業界三流のビフィズス製薬が買ってどうするのか、そして円たちの判断は・・と驚く展開がまっていますので、詳細は原書のほうで。

ちなみに、祖母の遺伝子由来の疾患があることがわかって、一族の関係が不安定になったり、孫娘が遺伝子病の治療法を探して岸とトラブルになったり、と少しゴタゴタが出るんですが、蕎麦の名店「さくやま」の味を受け継ごうとする一人の後継者が出現することとなります。

Bitly

第17巻 アミノ製薬に復帰した間瀬と火箱は、社長の創薬撤退をぶっ潰す

第17巻の収録は

第66話 反逆者の帰還
第67話 反逆者の暗躍
第68話 反逆者の憤激
第69話 反逆者の原点
第70話 岸先生、慰安旅行です!

となっていて、慶楼大の遺伝子ラボの円と岸の後輩で京都分子研究所の手嶌が共同開発している画期的な癌治療薬を手土産に、ビフィズス製薬をアミノ製薬に吸収させ、古巣に復帰した間瀬と火箱なのですが、間瀬のほうは元の営業部に平社員として復帰したものの、火箱は内部告発をした張本人という前科が祟って、総務部の庶務に回されています。

不満を抱きながらも勤務している火箱なのですが、間瀬から火箱がJS1にのめり込むきっかけとなった創薬の首席研究員の十文字が来月一杯で退職するという情報を知らされます。さらに、研究用の薬用植物園も廃園となり、ここにはアミノ製薬が新薬の完全自社開発から撤退する、という社内事情が絡んでいるようなのですが、その引き金となったのが間瀬と火箱がアミノ製薬に売った、円と手嶌の「新薬候補」で、という筋立てです。

さらに、現社長による創薬部門の大幅リストラと監理ポストを大幅削減する経営計画も発表され、創薬撤退に怒った火箱は、社内の反社長派と結託して、社長追放の動きを始めます。「反逆の火箱」の本領発揮ですね。彼女は、反社長派に株式を集めさせるアシストをしたり、アミノ製薬が経済性の観点から創薬から手を退こうとしていることをマスコミにリークしたり、とあの手この手をつくしていきます。

しかし、そんな「火箱」の陰謀も最後の最後でドンデン返しをくらいます。株主総会で糖尿病や認知症分野への特化がアミノ製薬の経営に好影響を与えることと、それにあわせて株主配当を増配するという社長演説は株主たちの賛同を集めていきます。

「バコちゃん、大ピンチ」というところで、間瀬の切り出す最終兵器が炸裂していくのですが、詳しくは原書で。少しネタバレしておくと、日本人大好きな「暴れん坊将軍」的逆転劇です。

あ、でも今回は相当ヘコむかと思われた火箱は見事に復活してますので、「バコちゃん」ファンはご安心を。

Bitly

レビュアーの一言

第15巻、第16巻の遺伝子編の患者は、東京の蕎麦屋の女将で、蕎麦を自ら打ちながら、店を切り盛りしている女丈夫です。

「江戸の蕎麦、上方のうどん」というぐらい、古くからの東京のファーストフードと言えば「蕎麦」なのですが、江戸初期は「うどん」が主流だったというのが定説です。

なぜ、うどんより蕎麦が好まれるようになったかについては、江戸周辺では小麦があまり収穫できなかったこと、うどんより茹で上がりの早い蕎麦が江戸っ子の好みにあったこと、「江戸患い」と呼ばれた脚気予防に効いたことなどが挙げられているのですが、江戸で蕎麦屋の数が急増した寛延から安永の頃の18世紀後半は、安くて味の良い関東特産の醤油である「濃口醤油」が、江戸市中に大量に出回り始めた頃でもあって、この醤油を使った蕎麦の出汁が、当時の蕎麦の味を飛躍的に向上させたおかげかも。

この「黒い出汁」の蕎麦は、関西出身者にはなかなか馴染めないもののようで、この出汁汁を飲み干せるかどうかが、江戸っ子かどうかの分かれ道かもしれません。

(参考サイト)

そばの散歩道「江戸はそば」

江戸monoStyle「江戸では蕎麦が大人気 その理由とは」

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