覚醒したクヌート王子はイングランド王位に手を伸ばす=幸村誠「ヴィンランド・サガ」7・8

11世紀のイングランドからノルウェー・デンマークにかけたヨーロッパ北部を舞台に、その猛々しさと強さで巨大な北海勢力圏を築き上げたヴァイキングの戦いと、アイスランド生まれのはぐれ者のヴァイキング「トルフィン」の軌跡描いたシリーズ『幸村誠「ヴィンランド・サガ」(アフタヌーンコミックス)』の第7弾から第8弾。

前巻で、たった一人の忠臣・ラグナルを亡くしたショックから、「王」として覚醒したクヌート王子が、自らを戦乱の中で始末しようと企んでいた父・スヴェン王のもとへ帰還し、ンマーク王国内の王位継承争いが俄かに激しくなるとともに、トルフィンが仇とつけねらうアシェラッドの運命の大きな転機が訪れます。

第7巻のあらすじと注目ポイント

第7巻の構成は

第43話 王子生還
第44話 王冠の呪い
第45話 二匹の虎狼
第46話 英雄不在
第48話 再会
第49話 カルルセヴニ

となっていて、イングランド軍によって殺されてしまうと見込んでいたクヌート王子が、イングランドに寝返っていたトルケルを自らの臣下とした帰還するのを信じない、スヴェン王の近臣・フローキなのですが、彼はこれから後も、クヌート王子の邪魔をしてくるので、信じたくないというのが本音のところでしょう。

さらに、クヌート王子が急にしっかりとしてきていることに驚くフローキなのですが、クヌート王子はそれに構わず、スヴェン王から王位を奪うつもりで、デンマーク国内の多数派工作を始めます。デー人の族長たちの抱き込みは、トルケルが設ける酒席でなんとかなっていきそうなのですが、スヴェン王の暗殺計画をその警備状況から難航しそうですね。

巻の後半では、スヴェン王と側近のフローキの目をそらさせるために、アシェラッドの考えで、クヌート王子の偽装暗殺事件まで仕掛けています。

ここでは、すっかりクヌート王子の参謀格に収まったアシェラッドの変身ぶりが印象的ですが、この巻では、ウェールズの美姫を母にもつアシェラッドの過去が描かれるのですが。彼がいかに這い上がり、父親を殺すに至ったかの詳細は原書のほうで。

さらに、最後半で、トルフィンが一緒に船出をし、トールズの死によってはぐれてしまった故郷の「レイフのおっちゃん」に再会します。レイフはトルフィンに一緒に故郷へ帰ろうと誘うのですが、トルフィンはアシェラッドを討つまでは帰らないと拒絶します。レイフの望みが叶うのは、次の「農場篇」が終わったあたりからですね。

Bitly

第8巻のあらすじと注目ポイント

第8巻の構成は

第50巻 謀略
第51巻 誤算
第52話 英雄復活
第53話 ブリタニア王猛る
第54話 ENBD OF THE PRPLOGUE
第55話 奴隷
第56話 ケティル農場

となっていて、前巻の最後で起きたクヌート王子暗殺事件がスヴェン王の差し金だったという噂を流して宮廷内の空気を疑心暗鬼にさせておいてから、スヴェン王の開催するデンマークの族長たちを招いた大宴会にクヌート王子たちは出席します。

この席上でスヴェン王は、クヌート王子のイングランド征服の功を讃えた後、彼をマーシア伯領の統治を任せます。マーシアはイギリス中部のイングランド七王国から栄える古い地域でロンドンをその支配下においているため、イングランドで最も豊かな土地、といわれているところですね。この場面だけ見れば、クヌート王子はイングランド王国の王位に一歩近づいた感じで、アシェラッドの思惑どおり、というところですね。

しかし、ここでアシェラッドの計画に誤算が生じます。イングランド征服の後はてっきりアイルランドへ手を伸ばすかと思いきや、スヴェン王はアイルランドの前にウェールズに攻め込むと宣言します。

仮にウェールズへデンマーク軍が攻め込むとすると、クヌート王子脱出の際にウエールズの諸侯との約束が保護になるとともに五、アシェラッドにとっては、母の故郷を戦乱に巻き込むこととなります。必死になったウエールズ侵攻に利がないことをスヴェン王に説くアシェラッドだったのですが、王が出した条件は「ウェールズか、クヌートかどっち選べ」という究極の二者択一です。

ここでアシェラッドのとった究極の選択は、そのどちらでもなく・・ということで、第1seasonmの「イングランド篇」に驚く結末が訪れるのですが、それはトルフィンの運命を大きく変えていくことになります。

巻の再後半部分では、イングランド篇の最後で、クヌートの左ほほを傷つけたトルフィンが、反逆罪に問われ、奴隷に落とされ、デンマーク農場に売られていくのですが、ここからの第2season「農場篇」は次巻以降で。

Bitly

レビュアーの一言

このシリーズではあちこちに「奴隷」の人々が登場するのですが、ヴァイキングたちが他地域を侵略した目的の一つは、金銀財宝や食料の略奪ということのほかに、奴隷の確保というのが大きな目的の一つでした。

キリスト教徒には奴隷売買は宗教上許されていなかったので、非キリスト教徒であるヴァイキングほかの北欧人がこれを独占していた状況だったようです。ここらへんにも、キリスト教が北欧になかなか入っていかなかった理由があるのかもしれません。

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