ヴァイキングの大アクション巨編の始まり、始まり=幸村誠「ヴィンランド・サガ」1・2

日本では摂関政治の最盛期を迎え、中国では北宋が遼や西夏といった北方民族の侵攻を抑えて中国本土の支配を固め、ヨーロッパでは東ローマ帝国がブルガリア王国を征服して支配地を拡大する一方で、西ヨーロッパでは教皇権と皇帝権力との対立が明確になっていた11世紀。

当時、辺境の地といっていい、イギリス、北ヨーロッパでは、船を巧みに操り、武勇が自慢の「ヴァイキング」があちこちに侵攻を続けていました。

その中でも最も辺境の地、アイスランドに逃亡してきた父を出身の地から派遣されたヴァイキングたちに殺されたことから、デンマーク・イギリスを舞台にしたヴァイキング征服戦争に巻き込まれていく青年・トルフィンの活躍を描いたのが、ヴァイキング叙事詩『幸村誠「ヴィンランド・サガ」』シリーズ。

今回は、そのスタートとなる父・トールズの戦死が描かれる第1巻から第2巻までを総解説します。

第1巻のあらすじと注目ポイント

第1巻の構成は

第1話 北人
第2話 ここではないどこか
第3話 海の果ての果て
第4話 解かれ得ぬ鎖
第5話 戦鬼
特別編 ヴァイキングッ娘猛将伝「ユルヴァちゃん」

となっていて冒頭部分では、現在のフランスの大西洋側の海岸沿いの地から始まります。

当時、この地域を支配していたフランク族の地方豪族たちが小競り合いをしているところに、アシェラッドと名乗る首領に率いられたヴァイキングの兵士たちが、戦利品の半分の報酬とひきかえに攻め手側に味方するという取引を申し出てくるところから始まります。

取引の軍師をしているのが、この物語の主人公となるトルフィンで、彼は、この後、戦が始まると敵方の砦の中に単身で乗り込み、大将首を狙って凄まじい攻撃を始めていきます。

さらにこれを上回るのが、アシェラッドの指揮するヴァイキング軍で、内陸部の湖の入江に築かれた敵方の砦を攻撃するためには、峠を隔てた海岸部に停泊させていた戦闘船を湖内へもってくる必要があるのですが、ヴァイキングたちは船に山越えさせるという驚くべき力技を使い、という展開です。

中盤では、ほかを圧倒するヴァイキング兵の強さと、主人公・トルフィンとヴァイキングの首領・アシェラッドとの間になにかの因縁があることが描かれています・

そして、その因縁が明らかになっていくのは巻の後半から次巻にかけてで、それはトルフィンの父・トールズがかつて、北海最強の傭兵軍である「ヨーム戦士団」のリーダーの一人であったことが発端となっているのですが、詳細は原書のほうで。

Bitly

第2巻のあらすじと注目ポイント

第2巻の構成は

第6話 戦場よりの使者
第7話 剣
第8話 旅の始まり
第9話 絶海の罠
第10話 夜の航跡
第11話 檻
第12話 化け物以上
第13話 匂い
第14話 トールズの剣
第15話 本当の戦士
第16話 トールズの死

となっていて、前巻の最後で、トールズがかつて加わっていた「ヨーム戦士団」の参謀・フローキがアイスランドへやってきた目的が、トールズを、デンマーク王のイングランド侵攻と行動をともにする「ヨーム戦士団」の先陣に加えるためとわかり、それを断ろうとするトールズだったのですが、村人たちの命を担保にとられ、やむなくフローキの要求の呑むこととなります。

この時、フローキはトールズ参戦の手土産に軍船を提供すると宣言し、村の若者達は戦争で手柄をたてて出世や賞金をえようと沸き立つのですが、戦の悲惨さを知っているトールズは打ちひしがれた様子です。さらに、彼の苦悩を知らず、幼い息子・トルフィンが村から出陣する軍船に密航してしまったことも誤算の一つですね。

そして、トールズの軍船は、途中、水や食料の補給のため、アイスランドとノルウェーの真ん中にあるフェロー諸島に立ち寄るのですが、ここの入江の中で、アシェラッドたちヴァイキングの海賊の待ち伏せに遭います。

彼らの目的は、この軍船の食料や軍資金を奪い、乗っている若者の兵士を奴隷にすることのように見えるのですが、実は、トールズを誘いにやってきたフローキがトールズを亡き者にするために考えた闇討ちです。軍船に乗る村の若者達の命を救うため、トールズは海賊船の首領アシェラッドに一騎打ちを申し込み、かれを圧倒するのですが、ここで、アシェラッドの部下に、幼いトルフィンを人質にとられてしまい・・という展開です。

眼の前で、父親をアシェラッドたちの一味に殺されたトルフィンの復讐劇が、ここから始まっていくわけですね。

Bitly

レビュアーの一言

物語の主人公・トルフィンの父トールズが若い頃属していたと設定されている「ヨーム戦士団」の首領はシグヴァルディとされ、その本拠地はヨムスボルグにあるとされているのですが、10世紀から11世紀にかけてイングランドやスカンディナヴィアを荒したヨムスヴァイキングの傭兵集団で、当時のイギリスやノルウェーの戦役で重要な役割を演じています。本拠地のヨムスボルグはバルト海南岸にあったとされているのですが、いまだに正確な場所は不明のままのようです。

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