ヤノハは秦の秘密武器を入手し参戦準備。事代主は出雲大社に立て籠もる=「卑弥呼ー真説・邪馬台国」12

古代史最大の謎「邪馬台国」を舞台に、日向の巫女の娘が、権謀術数の限りを尽くして、生き残り、山社の国の女王「日見子」として成り上がり、九州諸国を束ねて、倭統一へと動き出す漫画版・卑弥呼物語『リチャード・ウー・中村真理子「卑弥呼ー真説・邪馬台国」』シリーズの第12弾。

前巻で、ナツハとの間にできた我が子・ヤエトを天ノ岩戸の中で産み落としたヤノハは、我が子をチカラオ(ナツハ)に託し、岩戸を出ます。そこで彼女は、日下国の侵攻を受ける出雲の金砂国の国王・事代主の救援に向かうことを宣言し、いよいよ、山社(ヤマト)を中心とする九州諸国連合と、九州出身の古族・サヌ王ゆかりの畿内の日下国との戦争前夜を迎えていきます。

あらすじと注目ポイント

第12巻の構成は

口伝87 古の邑
口伝88 勝利を得る者
口伝89 不死の邑
口伝90 秦の邑にて
口伝91 最強の武器
口伝92 始皇帝の隠し武器
口伝93 真の敵
口伝94 豊日別会議

となっていて、冒頭ではヤノハの故郷・日向での回想から始まります。彼女が住んでいた集落の近くの浜で暮らしていた中国からの漂流民・ハウが菟狭と穂波の境界にある中国の遺民の集落を目指して村を離れるエピソードから始まります。この「ハウ」がヤノハの本州侵攻への鍵を握る人物となりそうなので覚えておきましょう。

本編のほうでは、天の岩戸から出たヤノハは5つの同盟国の長を集め、出雲の金砂国に侵攻を進めている、鬼国攻撃への戦略を練ります。その方法は、那国と日向の国の間に位置する「穂波」の国から船で兵を本土へ送る、というものなのですが、それとあわせて、日下国の鉄製武器に青銅の武器で勝つ、秘密の武器を持っているといわれる伝説の集落を訪ねて、その武器を手に入れることを目論むのですが、その集落こそ、幼い頃出会っていた、中国遺民「ハウ」が目指していた村で、という展開です。

実はこの村が、始皇帝の命をうけて、徐福が不老不死の仙薬を求めて訪れた、という伝説をもつ、秦の遺民が流れ着いて作った村で・・という展開です。

卑弥呼の即位が紀元189年頃、秦滅亡が紀元前209年とされていますのでおよそ400年の間、この地に隠れ住み、中華の文明を伝えてきたということになります。まあ、実質のところは、大陸からの亡命者を受け入れて、前漢・後漢の新技術も導入しながら、中国遺民の独立国を守ってきた、というところではないかと思われます。

ここで、ヤノハは村の長老から、鉄の武器を上回る武器を供与されることになるのですが、それが何かは、原書のほうで。

一方、出雲の国の祭王・事代主は、鬼国の温羅将軍を斃し、鬼国の実権を握った日下国の吉備津彦によって吉備国の彼の館へと連行されます。

そこで、彼が事代主に持ち出したのが、出雲の神を日下国の祖神の一人・須佐之男の娘婿と認め、さらに吉備津彦の姉で日下の「日見子」モモソ姫を娶ることです。

もっとも、このあたりは降伏のシンボルとしての条件で、実質的には、出雲のもつ「医学」の力を取り込もうというのが本音ですね。

こちらのほうでは、その後、連行中に日下国から脱出した那とトメ将軍と山社のミマアキによって助け出され、金砂国の出雲大社に潜入したり、日本書紀では大和武尊が使った「剣のすり替え」のトリックで、吉備津彦が出雲の国王ミマトを騙し討したり、と神話・伝説として伝わっている日本古代史の原型が展開されていきます。

そして、いよいよ、日下国の王・フトニ王が出雲に到着し、事代主たちの殲滅を命じたことから、出雲と日下の最終戦争が開戦するのですが、ヤノハの九州連合軍がここにどう介入していくか、気になるところです。

レビュアーの一言

事代主が連行される目的地となったのは、吉備津彦の館なのですが、当時、現在は、岡山市と倉敷市の市街地の大半、西は吉井川から東は高梁川まで、北は山陽自動車道から児島半島の北の山裾までが大きな内海「吉備の穴海」になったいて、その北岸にある設定になっています。

この内海は、戦国時代には干拓地として埋め立てられるのですが、卑弥呼の頃は、内海内に多数の島が散在し、瀬戸内海航路の主要ルートとなっていたようです。船の規模も小さかった当時は、この内海の波の穏やかさと停泊地の多さが大きなメリットだったのでしょうね。

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