「千穂」の地を治めたヤノハをサヌ王の「古族」が狙うー「卑弥呼ー真説・邪馬台国伝」 5

古代史最大の謎「邪馬台国」を舞台に、日向の巫女の娘が、権謀術数の限りを尽くして、生き残り、女王として成り上がっていく漫画版・卑弥呼物語『リチャード・ウー・中村真理子「卑弥呼ー真説・邪馬台国伝』シリーズの第5弾。

前巻までで山社(ヤマト)を手中にして巫女王となったヤノハこと卑弥呼なのですが、暈(くま)、那(な)、日向(ひむか)の国に三方から攻められる中、彼女が「日見子」であることを国中に喧伝するため、「モモソ」の霊の助言に基づいて、鬼が住むと言われている「千穂」へと進軍します。そこで、卑弥呼が、生贄にされる予定の娘たちの中に紛れ込み、「鬼」とどんな戦いをするのかが描かれるのが本巻です。

構成と注目ポイント

構成は

口伝31 価値ある人
口伝32 将軍の告白
口伝33 倭言葉
口伝34 ハシリタケル
口伝35 ウソ
口伝36 ナツハ
口伝37 真の歴史
口伝38 古の五支族

となっていて、まず生贄にされる娘の身代わりなって千穂の地の石の祭壇の周囲を取り囲む太杭に縛り付けられたヤノハやイクメたちのところへ、人の皮でつくった面を被った集団がやってきます。

ヤノハ、鬼たちと対決する

この集団を見て「鬼」と怯えるお付きの娘たちを尻目に、彼らが「人」であることを見抜いたヤノハなのですが、彼女はまっさきに「生贄」として神に捧げるよう祭壇の中央に連れ出されます。ここで、恐怖に負けることなく、相手の隙きをみて攻撃に転じるのがスゴイところですね。

そして、援軍として周囲から攻め込む「ミマキ」将軍のちからを借りて、この「鬼」の集団を制圧するのですが、決め手はヤノハの

という祈りで、彼女は「太陽」の光の力を借りて、太陽神「アマテラス」の再来という演出を施したところにあるのですが、彼女は捕虜としたこの鬼(鬼八荒神)の親玉である十五代目・ハシリタケルに対し日向の真の支配者「サヌ王」の末裔である、という大嘘をつくあたりは、演出家をはるかに超えた「大詐欺師」としての面目躍如です。

ちなみに、このハシリタケルは先祖が、この地の王であったミケイリ王に降伏したときの条件で、この「千穂」の地に信楽するものを滅ぼすことを条件とされ、サヌ王の系列の者以外へ従うことを禁止されてきているので、多くの犠牲をださずに彼らを併合するのはこういう「ウソ」をつくのが一番正解だったとは思うのですが。

と、あっけらかんと言い切るヤノハには敵いませんな。

「日見子」となったヤノハをサヌ王の古族が襲う

「千穂」の地を治めることに成功したヤノハに対して、彼女を「日見子」として扱い、同盟を結ぶことを考え始める国が出てくる一方で、彼女の暗殺を謀らむ勢力が動き始めます。

その背後には、日向の元の支配者である「サヌ王」は実は周辺諸国の王に騙されて追放された人物で、東の国で力を蓄えた後、復讐に戻ってくるという異説があるのですが、そのサヌ王の帰還の手助けをするために九州に潜伏している「古族」が関係していて・・・という展開ですね。

その「古族」の正体については、日向の地を囲む「穂波の国」の重臣が絡んでいたり、彼の仕掛ける罠がヤノハの近くに仕掛けられていたり、とかなり陰謀の度合いを増してくるようです。加えて、ヤノハを暗殺しようとして失敗した男に対するヤノハの一見、温情にあふれているように見えて、実は冷酷な処断がけっこうエグかったりするですが、詳細は原書のほうで確認ください。

レビュアーから一言

「卑弥呼」ことヤノハが、「千穂」の地に攻め込み、ここを領有したことで、日本古代史が南九州地域の話だけにとどまらず、大和朝廷の東征や、邪馬台国の滅亡にかかわる古代史の謎解きに関わる展開になってきましたね。「千穂」というのはおそらく「高千穂」のことでしょうし、ここを支配していた「ハシリタケル」は神話の中の誰のことを表しているのか、そして卑弥呼の最大のライバルでもある「暈」の実質の王ともいわれる「鞠智彦」が出会った「ナツハ」という少年の役割・・・と次巻以降に気を持たせる展開であります。

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