新しい日見子「田油津日女」出現の本当の狙いは何?=「卑弥呼ー真説・邪馬台国伝」10

古代史最大の謎「邪馬台国」を舞台に、日向の巫女の娘が、権謀術数の限りを尽くして、生き残り、女王として成り上がっていく漫画版・卑弥呼物語『リチャード・ウー・中村真理子「卑弥呼ー真説・邪馬台国」』シリーズの第10弾。

前巻で日下国に到達したトメ将軍とミマアキは、日下国の日見子・モモソから、日下の王であるフトニ王の筑紫島への侵略計画を聞き、山社への帰還を急ぐのですが、日下国の将軍・シコオと暗殺集団・八咫烏に追われ、フトニ王とは一線を画する「當麻一族」の支配地へと逃げ込んでいきます。一方、妊娠したことがわかったヤノハは、出雲の事代主王から授かった「厲鬼」の伝染病の予防策を同盟国へ伝えた後、伝説の地「千穂」へ向けて出発していきます。

あらすじと注目ポイント

構成は

口伝71 本物の日見子
口伝72 生命の選択
口伝73 勝ち抜き
口伝74 田油津日女
口伝75 タケル会議
口伝76 真の王
口伝77 天照の神託
口伝78 志能備の掟

となっていて、まずは「千穂」を目指して進む「卑弥呼」一行の動きです。その道筋には、「厲鬼」によって死んだ後、当時の葬儀形式であった「甕棺」にいれられることなく火葬されている遺体や、伝染病に襲われた人の住んでいた家を焼き払った跡が続いています。

さらに、道々で卑弥呼に「厲鬼」から助けてくれるよう祈ってくる民衆に対してヤノハは、制止する護衛兵を振り切って、輿を止めて、あることを民衆に告げるのですが、その内容は・・という筋立てです。

天照大神からのお告げという形をとって、伝染病の拡大防止策を普及し、あわせて領民の逃散を防止する、彼女の宣伝力はたいしたものですね。

そして、ヤノハの治める山社とその連合国に退治する「暈国」では、「厲鬼」に対する初動の遅れが響いて感染がおさまらない状況です。またヤノハが出雲の事代主から教わった感染防止法も伝わってこないので、手探り状態となっているようです。

そんな暈国に現れたのが、村々をめぐり、疫病を退散させている「田油津日女」という祈祷女です。彼女の評判をききつけた鞠智彦は彼女を宮殿に招くのですが、彼女は手土産として、ヤノハが事代主から授かった疫病の防止法を記した竹簡を持参し、暈国の民衆を「厲鬼」から救う土産をもたらしてくれます。

この「田油津日女」の動きを見て、鞠智彦の専制に不満を持ち始めていた、「暈国」の祭祀王である五人のタケルが彼女を新しい「日見子」として推戴しようという動きを見せ始めるのですが、実は彼女の正体は・・というところで、真相は原書のほうで。少しネタバレしておくと、倭国の平穏を願う「ヤノハ」の深謀遠慮がここでも活きてきています。

一方、日下国のシコオ将軍と暗殺集団・八咫烏の襲撃から逃れたトメ将軍とミアアキは日下のフトニ王を信用していない「當麻一族」に迎えられ、一応、歓待を受けるのですが、どうやら、彼らの真意は、この地域の重要儀式である「相撲」に山社の者を参加させ、マウントをとろうという作戦のようですね。

この誘いを逆手にとって、トメ将軍は自ら名乗りをあげ、當麻の首領へ挑戦状をたたきつけるのですが、その勝負の行方は・・というところは原書のほうでどうぞ。

Bitly

レビュアーの一言

「千穂」に行く途中にある「日鷹」で、ヤノハは、彼女が殺害した「真の日見子」になる可能性のあった「モモソ」を葬った塚へ詣ります。ここで、以前のように「モモソ」からの夢の予言を求めるのですが、夢の中でモモソが告げたのは「ヤノハが生む子のせいで、多くの民が死ぬ。だが、その子を殺せば、もっと多くの人が死ぬ」という謎の言葉です。

この子は一体、日本歴史あるいは日本神話の中にでてくるどういう人物なのか、といったあたりが次巻以降のキーワードですね。

当方が思うに、卑弥呼の子供で、卑弥呼の跡を継いだ男王による国内混乱をおさめた女王・豊与か、神功皇后の子供である応神天皇がヒントになりそうな気がするのですが・・。

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