変人病理医は、熱血医師の「燃え尽き」に遭遇する=「フラジャイル」20~22

臨床にでることなく、生体検査や病理解剖などを通じて、病気の原因過程を診断する専門医が病理医。都会の大病院・壮望会第一総合病院の病理部診断科長・岸京一郎と女性見習い病理医・宮崎、病理部たった一人の敏腕臨床検査技師・森井を中心に、臨床をもたずに患者を治療する病理医たちが、臨床医たちの誤診と傲慢や医療業界の理不尽に立ち向かっていく姿を描く医療コミック・シリーズ「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」の第20弾から第22弾。

前巻では、3年前に病死した皮膚がん患者の遺族からの医療訴訟を、遺族の訴えを食い物にした弁護士の仕業と見抜いて、外科医・細木が紹介した胡散臭い「千石」医師と協働して粉砕し、遺族の心のわだかまりも解いたのですが、今回は、九州の病院を飛び出して壮望会へやってきた若き専攻医が16歳のT細胞リンパ腫患者の治療を担当してぶつかった大きな壁がテーマとなります。

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あらすじと注目ポイント

第20巻 変人病理医はヒーロー志願の若き医者に出会う

第20巻の収録は

第79話 英雄志願
第80話 転校生
第81話 検討と検証
第82話 信用と信頼

となっていて、九州の出張から東京へ帰る途中の岸が、機内で突然意識を失った倒れた客の診断と治療に駆り出されるところからスタートします。一回目のアナウンスで、岸の横にいた若い男性が立ち上がり、キャビンへと行くのですが、なぜか、ふたたび「ほかにもお医者様がいらっしゃたら」と再アナウンス。

岸が渋々キャビンへ行くと、そこには先ほどの若い男性と壮年の男性が診断にあたっているところです。怪訝な顔で見守る岸が尋ねると、若い方は内科ながら卒後3年の専攻医、壮年のほうは眼科医で・・という状態です。このため、専攻医、眼科医、病理医という救急医療に不慣れな医者たちが、処置にあたることになるのですが・・という展開です。

幸い、患者の容態は回復し、無事空港で病院搬送できたのですが、空港内で若い方の医者・朝加から、「自分はヒーローになりたくて医者になった」と言う言葉を聞いて、危うさをかんじる岸だったのですが、なんと、彼が壮望会に研修医としてやってくることになって・・と展開していきます。

壮望会に勤務し始めた「ヒーローになりたい」という意欲どおり、子供の診療から酔っ払いの診断と処置までてきぱきとこなし、患者から感謝され、診療科内の評判もよく、そして、T細胞リンパ腫を患っている16歳の少女を担当することとなります。

はりきる朝加は、熱意が先走って御目付け役でもある、緩和医の稲垣の忠告を無視したり、患者の病状に皮肉な物言いをした先輩医師を殴りつけたり、病理医の岸に余計な口出しをしないでくれと牽制したり、あちこちと揉め事をおこしていくのですが、これがどいいう結果を引き起こしていくは、次巻で明らかになっていきますね。

今巻は、突っ走っていく朝加医師と、彼への信頼を深めていく(ように見える)16歳のT細胞リンパ腫患者・天羽ひなたとのやりとりをほほえましく読んでおきましょう。

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第21巻 ヒーロー志願の医師・朝加は、壁にぶつかり、崩壊寸前

第21巻の収録は

第83話 生きる糧
第84話 医者という仕事
第85話 総力戦
第86話 病理医の宿願

となっていて、冒頭から、朝加医師の担当する患者・天羽ひなたの移植前処置が始まります。無菌病棟の中で、死への不安を抱えながら治療に頑張る「ひなた」を一所懸命支える朝加だったのですが、ここからいろんなトラブルが降りかかり始めます。

以前、善意で点滴をした酔っ払いの患者が、連れの酔っ払いを連れてきて点滴をせがんだり、定期通院を条件に退院させた心臓疾患の患者が通勤途上で倒れて脳死状態に陥ったり、担当の「ひなた」からの携帯コールが頻繁になり、その重圧に耐えきれず無視しているうちに、天羽がシャワー中に倒れてしまったり、と朝加医師のメンタルがボロボロになっていきます。そして崩壊寸前になったとき、稲垣と岸の言葉が彼の「医師の心」をラベルアップさせ・・という展開です。

後半部分では、治療の辛さと死の恐怖に耐えかねた「ひなた」が病棟内の資材置き場に隠れて出てこない、と言う事態にレベルアップした朝加の声が、彼女の心を再び治療へと向かわせ、ここから、弟の造血細胞移植成功に向けて、朝加・稲垣をはじめとする移植チームと家族の総力戦が始まっていきます。

そして、移植後でた拒絶反応の診断に、岸たち病理医や他の内科医師を含めた新たな強力チームが立ち上がり・・といった展開です。

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第22巻 ザッキーは晴れて、病理専門医の試験に合格!!

第22巻の収録は

第87話 僕(私)の仕事
第88話 壮望会第一総合病院病理診断科(前編)
第89話 壮望会第一総合病院病理診断科(後編)
第90話 岸 京一郎
第91話 フラジャイル

となっていて、冒頭話は、前巻で移植手術後、拒絶反応のでた「あまね」の症例を明らかにし、治療方針を固めるため、岸のほか多くの内科医が協力体制をひいています。これによって、乱闘騒ぎや酔っ払い患者の受け入れで内科内で孤立し、さらに患者への共感しすぎで崩壊寸前だった、朝加は医師として蘇ってくるのですが、それとともに、かつて無菌病棟を立ち上げたのですが、多忙さと患者の闘病の厳しさに心折られていた朝加の指導医・伴の心も蘇らせこととなるのですが、このあたりは原書のほうで。

少しネタバレしておくと、この騒動の結果、緩和医の稲垣は、思わぬ後継者を得ることになります。

中盤部分は、病理専門医の認定試験を受ける、ヘタレ病理医・宮崎の奮闘記です。岸が中熊教授の後継者として、慶楼大学病院に誘われていることを知り、動揺を覚えているザッキーなのですが、岸の実地指導のもとで知らずしらず実力をつけてきていたザッキーがどう試験をクリアしていったを興味深いところです。

後半の二話では、岸の慶楼大学への転身話の決着がつき、あわせて感染内科医から病理医に転身させた、友人病理医の病死のトラウマの清算もなされていきます。さらに、病理専門医となって浮かれている宮崎医師の、少しばかり高くなった鼻がへし折られ、そのかわりに一人の頼りない新米内科医師が脱皮していく様子をみることができますよ。

Bitly

レビュアーの一言

熱血の専攻医・朝加が変人病理医・岸とでくわすのは、国内線の機内の急病患者の処置の場面なのですが、ANAのHPを調べてみると、国内線にはAED、聴診器、デジタル血圧計や人工蘇生器、使用頻度の高い市販薬のほか、乗り合わせた医師が使用する点滴や注射液のほか緊急措置用の医薬品が積まれているようです。国際線ではこれに加えて縫合セットや気管内挿管セットや血糖測定セットやパするオキシメーターなども。

地上交通のメインである新幹線のほうは聴診器、パルスオキシメーター、血圧計のほかは三角巾や止血パッドどまりのようで、ここらはもよりの停車駅から搬送できる鉄道と緊急着陸はほとんどできない航空機との違いが装備品に如実に出ているようですね。

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