がん治療薬の治験をめぐって仲の良い患者二人の思いが交錯する=「フラジャイル」23〜24

臨床にでることなく、生体検査や病理解剖などを通じて、病気の原因過程を診断する専門医が病理医。都会の大病院・壮望会第一総合病院の病理部診断科長・岸京一郎と女性見習い病理医・宮崎、病理部たった一人の敏腕臨床検査技師・森井を中心に、臨床をもたずに患者を治療する病理医たちが、臨床医たちの誤診と傲慢や医療業界の理不尽に立ち向かっていく姿を描く医療コミック・シリーズ「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」の第23弾から第24弾。

前巻で、自信過剰からくる所属科内の孤立や、移植治療の難しさや患者の拒絶によって、燃え尽きそうになっていて「ヒーロー志向」の強い若い専攻医を救った、岸と稲垣たちだったのですが、今回は、突然の師長昇格によって浮いてしまった看護師を再生させるとともに、マスコミの過熱報道で治験に悪影響の出始めた「JS1」の騒動に岸とザッキーが巻き込まれていきます。

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あらすじと注目ポイント

第23巻 夢の癌治療補助役「JS1」は、若い二人の癌患者の運命を切り裂く

第23巻の収録は

第92話 アジュバント
第93話 50%のくじ
第94話 スタートライン
第95話 時間

となっていて、冒頭では泌尿器科の勉強会に呼ばれる変人病理医・岸とヘタレ病理医・宮崎が描かれます。招待したのは看護師長の「六川」で、彼女は急に退職した前任の後を継いで急遽、師長となったのですが、気負いが前面に出過ぎて、部下の看護師たちにかなりのプレッシャーを与えているようです。

このため、看護技術を磨く目的で勉強会を定期に開催しているのですが、参加者はゼロ。六川はこれも自分の人望のなさと考えているのですが、彼女の採血の様子を見ていた岸は、その原因が彼女の「技術の古さ」にあると見抜いて・・というのが前ぶりになっています。

そして、今回の本題の「JS1」問題のほうでは、あるマスコミが「JS1」を抗がん剤治療の夢の特効薬と持ち上げる報道をします。このため、治験を募集している症例以外の患者からも治験希望が殺到して、アミノ製薬がパニックに陥いります。

それは、ここ壮望会の病院でも同様で、治験を募集していないユーイング肉腫の患者二人、五味と門川という若い患者が担当医の荻野目に強硬に治験を要請してきます。「JS1」の治験には多くの関門があるのですが、「JS1」がなかなか承認申請に至らないことに、何か内部的な障害があることを察知した岸は、間瀬に今回の壮望会の案件を治験の対象に強引に押し込んでいきます。

ここで、治験に挑戦しようとする二人に激励の言葉もかけられない、担当医の荻野目と看護師長の六川は坂本雅からダメ出しをされてしまいます。このシーンから、今まで真面目すぎて「型」にこだわりすぎていた六川看護師長がガラッと変わっていきますね。

しかし、もともと治験で「JS1」投与の対象となるかどうかは不明で、この仲の良い二人に「JS1」が使われているかはわからない中で、副作用の出方とか、様々なところで差異がでてきます。そして、とうとうそれは腫瘍の状況という結果に如実にあらわれてきて・・という展開です。

このあたりは、「治験」という制度の残酷さを感じさせるところですね。

フラジャイル(23) (アフタヌーンコミックス)
JS1。天才研究者が創ったこの革新的な薬は、臨床試験において圧倒的な結果を示し̅...

第24巻 最後の望み「EAP」に抵抗する担当医を粉砕せよ

第24巻の収録は

第96話 もうひとつの選択肢
第97話 リスタート
第98話 パートナー
第99話 言えなかったこと

となっていて、おそらくJS1の対象外となった、門川の症状が進行してしまった状況を見て、ザッキーと六川師長は、最後の望みである治験のEAP(拡大アクセスプログラム)に望みをつなぎ、火箱、そして間瀬へと直接要請を行います。

間瀬からは、冷静な回答しか返ってこず、落胆するザッキーだったのですが、それは彼女が間瀬の「OKサイン」を見逃しているらしく、と事態は一挙に好転していきます。

しかし、ここで最後の障害となるのが、担当医である荻野目で、彼は門川の性格から単に雰囲気に載せられているだけだと従来の治療でやるべきだ、と主張します。ここに異を唱えたのが岸と、腎移植のパイオニア・大月医師です。それでも、EAPを試みるのを躊躇する荻野目医師に対し、六川看護師長のある発言が決め手となり、担当医の思い込みを粉砕します。

そして後半部。こんな状況になっても、門川のJS1の治験の復活の可能性を教示しようとしない、荻野目に対し、ザッキーと六川が最終突破を果たしていきます。

フラジャイル(24) (アフタヌーンコミックス)
天才研究者が創った新薬・JS1。治験フェーズ3でも、この革命的な薬は圧倒的な結果0...

レビュアーの一言

第24巻の門川に対するJS1のEPA申請のカンファレンスででてくるのが「アイゼンクの性格分類」です。

アイゼンクはドイツ生まれで、ロンドン大学で教授も務めた心理学者で、人間の心理類型を「内向性」「外向性」「神経症的傾向」「精神病的傾向」の組み合わせから

  • Aタイプ(平凡タイプ)=内向・外向どっちつかずで、自己はしっかりもっているが空気を壊してまで自己主張はしないタイプ
  • Bタイプ(危険性格)=自分への関心が高く、「強いうぬぼれ」を持ったかと思うと、突然「自己嫌悪」に陥ったりと外向的で情緒不安定なタイプ
  • Cタイプ(おだやかタイプ)=喜怒哀楽のふれは少なく、静かに淡々と物事をこなすタイプ
  • Dタイプ(リーダー性格)=外交的で目立ちたがり屋。競争心も強く、他者からの評価に敏感なタイプ
  • Eタイプ(変わり者)=内向的で、周囲から何を考えているかわかりづらく、本音が見えにくいタイプ。自分の考えを一貫して持っている個人主義な」タイプ

という5つに分類しました。タイプによって罹りやすい病気とそうでないものがあるといわれているのですが、果たして真偽のほどはどうでしょうか。

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