変人病理医とヘタレ女医は、臨床医師の「傲慢」を粉砕する=「フラジャイル」1〜2

臨床にでることなく、生体検査や病理解剖などを通じて、病気の原因過程を診断する専門医が病理医。臨床医の気づかない患者の病気の兆候や、臨床医の思い込みからの誤診に気付けるポジションのお医者さんなのですが、現場の臨床医からは直接患者を診断しないところから軽視されたり、疎まれたするセクションでもあります。

都会の大病院・壮望会第一総合病院の病理部診断科長・岸京一郎と女性見習い病理医・宮崎、病理部たった一人の敏腕臨床検査技師・森井を中心に、臨床をもたずに患者を治療する病理医たちの活躍を描く医療コミック・シリーズ「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」の第1弾から第2弾。

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あらすじと注目ポイント

第1巻 自信のない若手医師・宮崎は強烈な変人病理医・岸に出会う

第1巻の構成は

第1話 岸先生、悪人です!
第2話 岸先生、ご立腹です!
第3話 岸先生、助手が変です!(前編)
第4話 岸先生、助手が変です!(後編)

となっていて、シリーズ最初の「岸先生、悪人です!」階段で転び頭を強打して入院してきた17歳の女の子の症例検討会(カンファ)の場面から始まります。念のための追加のMRI検査を主張する南波医師に対し、多数の見解は「腰椎椎間板症」と診断し、心配のしすぎと追加検査を却下します。南波医師の後輩で、その女の子を担当した神経内科の若手医師・宮崎は南波と同じように違和感を感じているのですが、場の雰囲気から言い出せません。

会議の結果は追加検査なし、夕方に退院、という方向に進みかけるのですが、ここに異論を唱えてきたのが、病理部診断科長の岸京一郎です。

彼は挑発的な態度で、カンファに出席している医師の判断にいちゃもんをつけ、会議を揉めさせ、MRIの追加検査を了承させます。

そして、宮崎は追加検査を後押ししてくれた岸のもとにお礼と女の子の再診に協力してくれるよう依頼にくるのですが、岸はその宮崎のプライドと自己防衛をズダボロに引き裂きます。しかし、宮崎から、女の子が転んだ時の様子を聞いた途端、豹変します。彼は女の子の病気が「腰椎椎間板症」ではなく、生命にかかわるある病気の兆候の可能性が高いことを見抜き、宮崎にあることを命じるのですが・・という展開です。

ヘタレで神経内科のお荷物ともなっている宮崎医師が、岸の強権的な唆しで変化していく姿が見ものです。

続く第二話では岸の病理診断にケチをつけてきた呼吸外科の藤原という医師へ岸がやりこめていく過程とあわせて、病理医としての宮崎の適性が試験されていくことになります。

第三話は、病理部ただ一人の臨床検査技師である森井がある患者との出会いでさらにパワーアップしていく物語です。

彼はもともと医学生だったのですが、家庭の経済事情で途中断念した過去を持っていて、臨床検査技師としては凄腕なのですが、やりがいがいまいち感じられないままでいます。

そんな森井が検査したのが、保育園に勤めていたころで末期癌がみつかって生きる気力をなくしていたところに、壮望会の緩和ケア専門の稲垣医師のアドバイスで作曲の公募賞に応募しようとしている青年で・・という展開です。

Bitly

第2巻 変人病理医・岸は臨床医たちの誤診の数々を粉砕する

第2巻の構成は

第5話 岸先生、嘘つきがいっぱいです!
第6話 岸先生がまた何か言ってます!
第7話 岸先生、ご友人です!
第8話 岸先生、指導医です!

となっていて、第5話の「岸先生、嘘つきがいっぱいです!」では、このシリーズで以降、病理部の岸先生や宮崎を翻弄する外科の細木医師や、製薬会社のMRの火箱直美が登場します。火箱のほうは森井と宮崎の呑み会にしっかり参加して食い込みを開始しています。彼女の意図がどのへんにあるかは第3巻あたりでみえてきます。

第6話では、急性アルコール中毒を起こした時計職人が運び込まれてくるのですが、追加検査が必要という岸の指示書を託された宮崎が、救急医の倉木と大揉めに揉めるところから始まります。もっとも、宮崎のほうは一方的に倉木から怒鳴られている構図のなのですが、彼の鼻をあかすため、患者の妻に倒れた時の詳細を聞き取りにでかけます。そこで、宮崎は妻が患者が酒を呑むのを制限していて、小遣いも減らしていることと、倒れる直前、棚がひしゃげ、天井が崩れた幻想を見たことを告げられます。

それを聞いた岸は患者の経営する時計店を訪れ、そこに置いてあるたくさんのウィスキー敏の中かた、薬っぽい匂いが特徴のシングル・モルト「ラフロイグ」に注目して・・という展開です。

酒呑みは、酒がなかったら「味醂」でも呑む、という落語のエピソードを思い起こしますね。終戦直後は、この患者と同じことをして失明した人もでたそうですからね。

そして、彼の行動と発言は一人の救急医を変えることとなりますね。

このほか、岸と妙に意見があったと親近感を示してくる消化器内科の中西医師の思い込みによる誤診を暴き、彼の自信をこなごなにする「岸先生、ご友人です!」、子宮がん疑いで外科の細木医師のところへ入院してきた患者に新たに家族性大腸腺腫症が見つかるのですが、即時の手術をすすめる細木に対し、岸の異例の「要経過観察」の泣かせる意図が描かれる「岸先生、指導医です!」が収録されています。

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レビュアーの一言

医療ドラマ、医療コミックは現在とても人気の高いジャンルなのですが、臨床ではないので患者は直接診断も手術もしない。相手をするのは病院内の医師だけで、主人公三人の性格は一人は極悪、一人はヘタレでビビリ、最後の一人は無関心層、という、熱血主人公の多い医療コミックには珍しいキャスティングです。

ただ、この一癖も二癖もある三人にかかると、傲慢そのものとも思える医師たちが見事粉砕されていくので妙な爽快感を味わえる物語となってます。

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