変人臨床医・岸の誕生には親友病理医の病死が隠れている=「フラジャイル」9・10

臨床にでることなく、生体検査や病理解剖などを通じて、病気の原因過程を診断する専門医が病理医。都会の大病院・壮望会第一総合病院の病理部診断科長・岸京一郎と女性見習い病理医・宮崎、病理部たった一人の敏腕臨床検査技師・森井を中心に、臨床をもたずに患者を治療する病理医たちが臨床医たちの誤診と傲慢、製薬会社の横暴や病院の採算のために医療を切り捨てるコンサルたちに立ち向かう活躍を描く医療コミック・シリーズ「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」の第9弾から第10弾。

前巻では、病院の経営改革のために、放射線科に続いて病理部の廃止と外部委託を狙っている経営コンサルタントの窪田の謀みを粉砕した岸と宮崎だったのですが、岸の慶楼大学当時の後輩が、関西の大学で細胞学研究の教員となるため別れを告げにやって来ることで、岸の過去が明らかになっていきます。

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あらすじと注目ポイント

第9巻 変人病理医・岸の病理医転身の理由が明らかになる

第9巻の収録は

第33話 岸先生、後輩が来ました!(前編)
第34話 岸先生、後輩が来ました!(後編)
第35話 若き日
第36話 ハル先生

となっていて、前半部では、岸の慶楼大学の大学病院当時の病理医の後輩・手嶌が壮望会第一総合病院を訪ねてきます。彼は慶楼の大学病院を辞めてアメリカ留学し、現在は細胞生物学の研究者となっているのですが、今回、京都の大学の研究者となるため、その挨拶にやってきた、というわけですね。

手嶌は、相当優秀な病理医であったのですが、なぜ病理医を続けることを諦めて、研究の道に転身したのか、そこには「岸」が関係しているようなのですが、それは・・という展開です。

あらためて、宮崎医師のずぶとさに気づくと思います。

彼は、後巻でも遺伝子治療の関係で慶楼大学の病理のメンバーとともに重要なキャストとして再登場してくるので覚えておきましょう。

中盤部分では、最初、臨床医だった「岸」がなぜ病理医となったのか、が判明してきます。

岸はもともとは「感染症内科」の医師で、慶楼大学の病理には、彼の親友の比日野が勤めていたのですが、恋人で栄養士をしている戸倉(はっきりとは書かれていませんが、岸の悪友の外科医の細木と仲良さそうなので慶楼大学病院勤務か関係者なのでは、と思われます)と一緒に山登りをしたのですが、それ以来、発熱し、ヘソのあたりに痛みと足に紅斑がでています。

マダニに咬まれて紅斑熱に感染したのでは、という感染症内科の岸の指導医の診断から、その治療がはじまるのですが、治療薬は一向に効かず、症状はどんどん悪化していきます。

そして、一緒に山に登った戸倉の気に病ませてはいけない、という比日野の気遣いから、彼女には入院を「夜勤」と偽ったまま、入院から5日後、急死してしまいます。

彼の病気が何だったのか、岸が病理医に転身した理由となるのですが、詳しくは原書で。

ちなみに、この比日野の恋人「戸倉」も次巻で重要な役割を果たしますので要注意です。

最終話は次巻に続く、小児がんを発症している10歳の少年・進士(しんし)晴(はる)の物語です。

彼はもともと脳の血管の治療で壮望会の総外科とリハビリに入退院を繰り返していたのですが、癌が発見されて小児がんの専門病院へ転院。しかし、そこで余命3ヶ月の診断を受け、本人の希望で壮望会へ再度転院してきた、という患者です。何度もここに入院しているので、スタッフとも顔見知りで、病院の中も詳しく、皆からは「先生」と呼ばれています。

彼には癌の告知はしていないのですが、悟っているかのように病院のスタッフや両親にも愛想がよく、体がつらくても治療を頑張ると言っている「良い子」なのですが・・という展開です、

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第10巻 「良い子」を演じる小児がんの少年への変人病理医の仕打ちは?

第10巻の収録は

第37話 今夜は月が綺麗だ
第38話 誰がための嘘
第39話 ふたりきりの青空
第40話 清算

となっていて、前巻の最後で、少年に告知すべきかどうか医師たちの意見が割れる中、ひとまず治療を望む少年の延命と症状緩和を図るため、「バコちゃん」こと火箱直美にすがりつきます。彼女がアミノ製薬当時関わっていた「JS1」の治験に参加できないか、ということですね。

しかし、すでにアミノ製薬を情報漏えいの責任をとって辞職し、他社へ就職している彼女が依頼してもあっさりと断られてしまいます。そこで、彼女は奥の手である、彼女の情報漏えいに巻き込まれて、アミノ製薬を辞職しているある人物に依頼をして・・という筋立てですね。このへんは、鉄の心臓の持ち主「バコちゃん」の本領発揮です。

一方、告知はされていなかったのですが、立ち聞きや医師・両親の様子から、病名や自分の余命が短いことを察知している少年・晴と岸が夜の病院の外の喫煙スペースで出会います。

両親や担当医を含め周囲の人間を心配させないため、病名を知っていることなどを黙っている「晴」に対し、岸は嘘はつかないほうがいい、と告げ翌日、彼に「晴」自身の生体検査の標本を見せ、彼に悪態をついて、「晴」が一所懸命つくっている「嘘」と「気遣い」を破壊します。感情を隠していた堤が崩壊して、一挙に感情がほとばしってくるシーンが印象的ですね。

そして、彼の癌の症例について説明した後、連れて行ったのが、岸の亡くなった親友・比日野の恋人で、現在は小料理屋を営んでいる「戸倉」のところです。岸との間にわだかまりっを抱える戸倉と岸のぎこちないやりとりが続いていくのですが、これが「晴」の心を癒やし、開いていくことにもつながって・・という展開です。

この後、「岸」の過去の清算と、「晴」の新しい出発が見られますのでお楽しみに。

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レビュアーの一言

第10巻で「岸」が「進士晴」くんを連れて行った、比日野の恋人「戸倉」の営んでいる小料理屋で出される昼食の料理がちらし寿司です。

その内容は、夜用の仕込んであった「干瓢」を使い、ランチの残り物のエビと蛸と穴子の具材に、細い玉子とえんどう豆、といったもので、戸倉の「関西弁」とあわせて関西風の、いわゆる「五目ちらし」ではないかと推測します。

関東風の「ちらし寿司」が、酢飯の上にエビやマグロなど寿司ネタで使う生魚や錦糸卵を載せたものであるに対し、関西風は干瓢やしいたけなど具材を混ぜ込んだ酢飯の上に、細かく切ったエビや刺し身、高野豆腐や絹さやをちらしたものが主流のようです。

戸倉が「ごめんも、言えへんくなったらどうするの」といっているところからみると、関西風の中でも「京都風」なのでは、と思うところなのですが。

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