土方歳三は、新政府軍の攻撃をしのぎ、米沢で永倉新八に再会する=赤名修「賊軍 土方歳三」6

新選組の副長として、近藤勇を支えるとともに、その冷徹さと智謀で知られ、倒幕の志士や薩長を恐れさせた「土方歳三」の、明治維新以後を描いたシリーズ『赤名修「賊軍 土方歳三」(イブニングコミックス)』の第6弾。

前巻で東北王朝を樹立する松平容保や土方歳三たちの動きを無視するかのように東京奠都を決定して、正当性をアピールした明治政府。その後、伊知地正治・板垣退助と土方歳三に恨みをもつ百田発蔵らの率いる新政府軍は、会津へと軍を進めます。そうした中、土方は会津の松平容保のもとへ向かうのが本巻です。

あらすじと注目ポイント

構成は

第36話 大切な人
第37話 武士の恥
第38話 甲州の因縁
第39話 武士の勲章
第40話 米沢の狼
第41話 近藤の真意
第42話 帰還
第43話 別れのあとに

となっていて、冒頭では、蝦夷地の割譲を条件にプロイセン軍の援軍を考えている松平容保に対し、土方歳三はプロイセン軍は籠城する会津城が陥落するまでに間に合わないと決死の覚悟で制止します。当時の感覚でも、勅許のない領土割譲は切腹ものの行動なので、容保を罪人にしたくない土方は必死です。

しかし、容保の決意を揺るがず、会津勢は籠城戦へと傾いていくのですが、容保の意図は会津城を守り抜くことではなく、もっと大きな視野で考えていたようですね。
土方は、この容保の行動に、甲州鎮撫隊で汚名を一身に引き受けた「近藤勇」の姿をオーバーラップしています。

一方、会津へ入り込んだ新政府軍は、会津城周辺に布陣している新選組の一掃を狙って攻撃を開始します。この攻撃軍の指揮をとるのが、幕末の京都、池田屋事件の際に、土方歳三によって「逃げ傷」をつけられ、武士としてこれ以上ない恥辱をうけた「百村発蔵」です。

土方は、自分を討とうと逸る百村を逆に利用して、滝沢村に足止めをくらっている松平容保を若松城へ退避させようとあえて、新選組の段平の羽織を着、隊旗を掲げて彼を挑発し・・という筋立てです。ここで、土方と百村の抜刀による激闘と百村を援護するため、回転式のレボルバー銃をつきつける板垣退助の攻撃を土方がどうかわすか、といった迫力ある戦闘シーンが連続しますので、詳細は原書のほうで。

後半では、板垣と百村ら新政府軍の攻撃をかわし、塩川で大鳥圭介と合流した土方は、援軍の要請のため、庄内藩へと向かいます。庄内藩は酒井忠篤を藩主に抱く譜代の藩で、幕末には洛中取締役となった会津藩に対し、江戸市中取締役として「新徴組」を率い、主として放火や押し込みをする薩摩の不逞浪士を取り締まっています。このため薩摩の恨みをかい、大山格之助率いる「奥羽鎮撫軍」が派遣されるのですが、スペンサー銃をはじめとする最新の武器で武装し、半数が領内の農民や町民で組織した4500名の軍で対抗し、奥羽地域では最後に降伏をしている強藩です。

土方は、この庄内藩へ援軍要請に向かう途中、米沢藩に立ち寄って武器・弾薬の融通を頼もうとするのですが、幕末は佐幕派であった藩論は、すでに新政府側に傾いており、武器・弾薬どころか、藩内の通行すらも許可をだしません。

困り果てる土方は、ここで、江戸でケンカ別れをした永倉新八と再会します。永倉は土方たちを追い払うよう、米沢藩の重臣たちから頼まれてやってきたのですが、ここで刑死した近藤勇が永倉たちと袂を分かった真意や、江戸で別れた原田左之助のその後の行動を知り・・という展開です。

少しネタバレしておくと、米沢を通行できなかったため、土方は仙台へと向かうのですが、庄内藩からの援兵があれば、会津城の運命も少し変わっていたかもしれませんね。

賊軍 土方歳三(6) (イブニングコミックス)
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レビュアーの一言

永倉新八は本巻では、沖田総司の付添として庄内藩にいる彼の姉のもとへと赴いているのですが、史実では、会津城落城後、江戸へ帰還し、松前藩士として帰参しています。
その後、小樽で樺戸集治監の剣珠師範、現在の北海道大学(当時の東北帝国大学農科大学)の剣道部指南などに就いています。
新選組が「人斬り集団」という評価を脱し、再評価されたのは彼の著述の功績ですね。
ちなみに、アイヌの少女「アシリパ」の活躍を描いた「ゴールデンカムイ」では、土方歳三とともに第7師団と戦っているのですが、もちろんフィクションです。

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