アイヌの娘「アシリパ」と日露戦争の生き残りで「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一たちが、明治期の北海道を舞台に、かつてアイヌ民族が明治政府打倒のために集めていた大量の金塊を巡って、幕末の新選組の生き残りの土方歳三や日露戦争で頭蓋骨の上半分を失った第七師団所属の情報将校・鶴見中尉を相手に、金塊の在り処を記した「刺青人皮」の争奪戦を繰り広げる、明治の北海道版ゴールドラッシュストーリー『野田さとる「ゴールデンカムイ」(ヤングジャンプコミックス)』の第8弾。
構成と注目ポイント
第8巻の構成は
第70話 アムール川から来た男
第71話 職人の鑑
第72話 江渡貝くん
第73話 女の季節
第74話 チカパシ
第75話 阿仁根っ子
第76話 カネ餅
第77話 まがいもの
第78話 夕張炭鉱
第79話 大非常
第80話 伝言
となっていて、札幌世界ホテルで崩落した建物から家永カノを救出した牛山辰馬と茨戸で刺青人皮と引き換えに仲間となった尾形を加え、土方たちは次の作戦を練っているのですが、ここで土方から、アシリパの父「のっぺらぼう」とキロランケがアイヌになりすました極東ロシアの「パルチザン」ではないか、という推理が披瀝されます。
日露戦争の頃は、帝政ロシアがロシア共産党らの革命勢力に苦しんでいた頃で、今シリーズでは極東アジアのほうでは、少数民族によるパルチザン(ゲリラ)勢力が結成されていることになってます。どうやらこれはロシアの革命勢力内のパルチザンとは「別物」のようですね。
物語は鶴見中尉率いる第七師団の別働隊のほうへ移ります。
彼らは現在、夕張のほうへ遠征してきているようなのですが、その狙いは夕張で剥製づくりをしている「江渡貝弥作」という人物。彼が墓地で墓荒らしをして「人皮」を入手しているのに目をつけたようですね。
彼は墓地から盗掘した死体の皮を使って皮を使った衣服や手袋をつくったり、自宅内で母親に似せた人皮人形をはじめ複数の人形たちと疑似家族をつくって暮らしているのですが、鶴見中尉の目的は、彼に偽の「刺青人皮」をつくらせ、土方や杉元たちの人皮捜索を混乱させることにあります。
この剥製作家・江渡貝を自分のシンパにしていく鶴見中尉の「人誑し」の技術は相当なものですが、これに感激して繰り広げられる江渡貝の人皮衣装のファッションショーはかなり不気味ですのでお気をつけください。
一方、アシリパの村に長逗留している谷垣には天涯孤独な子供「チカパシ」といった子分格もできてきて、すっかり村の住人にも馴染んでいるようです。
ただ、美人占い師のインカラマツが見抜いたように、彼がマタギを捨てた訳、それは妹を殺した彼の夫である幼馴染を自らの手で始末した理由にあるのですが、その経緯と彼が鶴見中尉に出会い、彼の密偵として働いている理由が明らかになります。さらには、美人占い師のインカラマツにも中尉の息がかかっているようなのですが、インカラマツの占いによってアシリパに危難が迫っていると心配した彼女の祖母の頼みで、谷垣+インカラマツ+チカパシのメンバーで、アシリパのあとを追って村を旅立ちます。
ちょうどその頃、江渡貝のつくったニセ人皮をめぐって、杉元+白石、尾形、土方歳三一派、鶴見中尉の第七師団の間での争奪戦が、夕張の炭鉱や炭鉱街で繰り広げられます。炭鉱坑内で発射された銃弾が炭層ガスに引火しての爆発事故が起きる中で、銃弾が飛び交うは迫力あるトロッコ・カーチェイスと銃撃戦が展開されますので、しっかり原書のほうでお愉しみください。
レビュアーの一言>アシリパ飯はサクラマスのオハウ
今巻の「アシリパ飯」は春の息吹を受けた山野草とサクラマスですね。
野草のほうは、鍋の具材にするほか、アシリパは杉本から味噌をとりあげてフキやギョウジャニンニクにつけて、生で食していますね。まあ、こういう食べ方が山野草の食べ方としては一番うまいかもしれません。
さらに、獲れたてのサクラマスをぶつ切りにして、ふきのとうの茎、フキ、ギョウジャニンニクをいれて塩で味付けした「イチャニウのオハウ」はとても魅力的な「春の鍋物」です。
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