アイヌ娘・アシリパはシリアルキラーのホテルオーナーと対決ー「ゴールデンカムイ」6~7

アイヌの娘「アシリパ」と日露戦争の生き残りで「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一たちが、明治期の北海道を舞台に、かつてアイヌ民族が明治政府打倒のために集めていた大量の金塊を巡って、幕末の新選組の生き残りの土方歳三や日露戦争で頭蓋骨の上半分を失った第七師団所属の情報将校・鶴見中尉を相手に、金塊の在り処を記した「刺青人皮」の争奪戦を繰り広げる、明治の北海道版ゴールドラッシュストーリー『野田さとる「ゴールデンカムイ」(ヤングジャンプコミックス)』の第6弾と第7弾。

第6巻 怪しい札幌のホテルでの宿泊にご用心

第6巻の構成は

第49話 道連れ
第50話 春雷
第51話 殺人ホテルだよ全員集合!!
第52話 無い物ねだり
第53話 不敗の牛山
第54話 ことづて
第55話 鰊七十郎
第56話 松前藩
第57話 水泡
第58話 茨戸の烏合
第59話 雪原の用心棒

キロランケから「のっぺらぼう」の秘密を聞いたアシリパと杉元たちは、彼から金塊強奪事件の真相を聞き出すため、彼が収監されている網走刑務所のある網走へ向かいます。途中、強盗に襲われる場面で、キロランケが陸軍の工兵出身で爆発物の扱い慣れた人物であることが判明します。

一行は現在は北海道の中心となっている「札幌」に到着します。現在は政令指定都市でもあり道庁もおかれて北海道の政治・経済の中心地になっているのですが、この当時、日露戦争の軍需で発展してきてはいるのですが、「まだ小樽には及ばない」と本書では描かれていて、都市の盛衰を感じてしまいますね。

さて、ここで、アシリパと杉元たちは「札幌世界ホテル」という洋風のホテルに宿泊するのですが、ここのオーナーの「家永カノ」と名乗る人物は実は脱走囚人で、ホテルのオーナーだった老夫婦に取り入って乗っ取り、ホテルを迷路のように改装して、ここのホテルに宿泊する客を次々惨殺しています。

「シリアルキラー」であるとともに、体の不調な部分を治すには、食材となる動物の同じ部位を食べるといいという「同物同治」の思想を、「人間の死体」でやってしまおうという危ない思想の持ち主です。白石や牛山に暗殺の手を延ばしてくる家永とアシリパ・杉元、柔道家の牛山との間で三つ巴の大バトルが始まるのですが、詳細は本書のほうで。

一方、土方歳三と永倉新八は、小樽から40㎞東にある河口の町・茨戸でニシン場と博打場を巡って争うやくざ者たちが「刺青人皮」を隠している情報から、彼らの抗争に介入しています。刺青人皮が目的なので、どちらかに加担するというより、隙を狙っての奪い合いのバトルロイヤル状態が出現します。ただ、さすが幕末の動乱を切り抜けてきただけあった、土方、永倉双方の凶暴さはすさまじい威力ですね。

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第7巻 アシリパは競馬のトラブルで羆と対決する

第60話 イカッカラ・チロンヌプ 誑かす狐
第61話 蝦夷地ダービー
第62話 替え玉騎手キロランケ
第63話 モンスター
第64話 悪魔の森のオソマ
第65話 不死身の赤毛
第66話 恐怖の棲む家
第67話 丁半
第68話 侵入
第69話 脱出

札幌で殺人ホテルのオーナー「家永カノ」の魔手から逃れたアシリパたちは苫小牧に滞留しています。白石が札幌でキロランケの爆薬を使い切ったのと、アシリパの所持金を競馬につっこんですってんてんになったためなのですが、そこで白狐の頭の骨を使い、よく当たるというので評判の占い師「インカラマツ」に出会います。

彼女の占いは、自分の頭の上に載せた白狐の頭蓋骨を落として、その表裏で成否を占うというものなのですが、仕掛けは大がかりなのですが、コイントスと変わらないような気もします・・。

そして、彼女の能力を使って白石が競馬で一儲けを企むのですが、これは大損。ただし当たり馬券も一枚は購入しておいて損はしない仕掛けが講じてあるなど、美人占い師占い師「インカラマツ」に翻弄される苫小牧滞在です。

次にアシリパたちが向かったのは日高です。ここに住んでいる大叔母の「フチ」のアザラシの服を買い戻すため、近くのアメリカ人牧場主エディー・ダンの依頼、彼の牧場を荒らす大熊を退治してくれという依頼を引き受けることになります。

この熊退治で逃げ込んだ農家で苫小牧でキロランケが身代わり騎手になって大損をさせた馬主に出会います。実は、この馬主は脱獄囚人で、彼らと熊を相手にした三つ巴の大バトルが展開されます。

複数の大熊を相手にした杉元の銃剣撃とアシリパの即製の槍による大奮闘をお楽しみください(アシリパ得意の弓は、白石のせいで折れてしまい、今回は毒矢が使えない状況での戦いです)。

ついでにいうと、この馬主の親分と子分との純愛物語(?)もサイドストーリーとして展開されているので、BLファンはおさえておいたほうがいいかもしれません。

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【レビュアーの一言】「アシリパ飯」はアザラシ肉の塩ゆで

毎巻、特徴的な食材が紹介されるアイヌ料理「アシリパ飯」は、今回は札幌のホテルなど内地人の街のシーンが多いせいか、控えめな印象です。
あえてピックアップすると、日高の海岸でアザラシを仕留めて食す「アザラシ肉の塩ゆで」しょうか。

今回、アシリパが常備していて肉料理には欠かせない「プクサキナ」と言われる干したニリンソウがなくなってしまったため、こういうシンプルな料理になったようです。もっとも、北極圏のイヌイットの間ではこの塩ゆでが主食ですし、かつての蒙古民族など草原の民の主食は塩ゆでした羊肉ですから、けして不味いものではないように思います。

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