おちかの安産祈願のため休止中の「変調百物語」が再開=宮部みゆき「青瓜不動 三島屋変調百物語九之続」

神田三島町にある袋物問屋「三島屋」の黒白の間で不定期に行われている「変調百物語」。語り手が一人で、聞き手も一人で、語られる話も一つだけ。「語って語り捨て、聞いて聞捨て」を基本において、その場限りで語って重荷を下ろし、聞いてその場で忘れるという「変わり百物語」を最初の聞き手「おちか」が嫁にいったことから引き継いだ、店の次男坊「富次郎」が引き継いだ百物語の第9弾が本書『宮部みゆき「青瓜不動 三島屋変調百物語九之続」(角川書店)』です。

最初の聞き役であった「おちか」の出産も近づき、さらには三島屋の跡取り息子である長男の伊一郎も修行先の商家を辞して実家の跡取り見習いを始めたことから、しばし休止となった「黒白の間での百物語」なのですが、三島屋の古い知り合いが「語り手」として現れたことから、おちかの安産も祈願して「百物語」が再開することとなります。

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あらすじと注目ポイント

収録は

第一話 青瓜不動
第二話 だんだん人形
第三話 自在の筆
第四話 針雨の里

の四話。

第一話の「青瓜不動」は、前巻の最後半でしばらく「百物語」を休止することになったせいで、兄の伊一郎によって、店の商売の手伝いに駆り出され、閉口している「富次郎」のところへ、第2弾の「あんじゅう」で登場した「行然坊」という偽坊主が訪ねてきたところから始まります。彼は、「おちか」に語ったおかげで、凶兆だけでなく瑞兆も見れるようになったと告げた後、「おちか」の安産祈願のためにも「百物語」を再開したほうがよい、と勧め、それに富次郎も同意することとなります。

こうした経緯で「百物語」は再開するのですが、その行然坊が推薦してきたのが、今回の「青瓜不動」の語り手となる東ヶ谷高月村の洞泉庵という尼寺で暮らしている「いね」という女性です。彼女は、三尺ぐらいの大きさの「うりんぼ様」と呼ぶ仏像を背負ってきていて、背中に火焔光背を背負い、右手に剣、左手に投げ縄のような武具を持っているので「お不動様」であろうと思われるのですが、お不動様の特徴の一つである「憤怒の相」があるべき顔には眉も眼も鼻も口もなく、イノシシの子供のうり坊のような縦じまがあるばかりです。

「いね」はその「うりん坊」さまが見つけられた経緯の話を始めます。
それは、高月村で父親のいない赤子をはらんでしまった「お奈津」という女の子が家を追い出され、すでに荒れ寺となっていた「洞泉寺」に住み着いて、昔、嫁いびりのひどかった姑が:化身した「大ムカデ」の呪いで、金気がつよくなり作物がとれなくなった畑に瓜を植えて金気をぬいて再生させ、自分とおなじように家を出ざるをえなくなった女たちを助けていく物語です。

話が終わった後、「おいね」は「おちか」の安産のためといって「うりんぼ様」を置いていくののですが、おちかのお産が始まろうとするとき「黒白の間」に入った富次郎は巨大な畑にイノシシの子供の「うり坊」が植わっている異世界に放り込まれ、人面の「大ムカデ」からこのうり坊たちを救い出す大仕事をすることとなり・・といった筋立てです。

二話目の「だんだん人形」の語り手は、兄・伊一郎の修行先であつた「菱屋」の取引先の味噌屋・丸升屋の三男である文三郎です。彼が丸升屋の初代「文左衛門」が若かった頃に経験した出来事と、その後、彼が起こした丸升屋に起きた出来事です。

まず、初代・文左衛門が出会した出来事は、太平の世が始まる頃、というので江戸の初期の話です、
当時、初代・文左衛門は味噌醤油問屋に奉公していたのですが、そこで売る味噌を生産している三男 倉村を定期的に訪れて産地とすり合わせをしていました。今回、村を訪れてみると、そこを統治していた代官が代わったため、その村の様子が激変しています。

代官は色好みなため、村の美しい娘を側女として差し出させたり、村の特産の味噌を専売にして利益を独占しようとし、それに反対する村人を捕らえて水牢に投獄して・・という筋立てです。

この後、初代・文左衛門は捕えられた村人を救い出し、代官の悪行を藩政府を訴えるため、水牢内に忍び込んでいくのですが、詳細は原書の方で。

さらに、後半では、代官に裁きが下るまでの間側女にされてしまった村娘・おびんが作った「土人形」が丸升屋に伝えられ、店に襲いかかる危難を救っていく話が続いて行きます。

このほか、人気の田楽屋に行く途中にある骨董屋に置かれていた、所有者に素晴らしい絵の才能を与える代わりに、その者の周囲に不幸をもたらす「筆」の魔の物語が語られる「自在の筆」や、ヤマワタリという鳥の火に強い羽毛や生薬となる卵を獲って生計を立てている村に連れて行かれた弧児の男の子が村人の人ならぬ姿を明らかにしていく「針雨の里」が収録されています。

レビュアーの一言

おちかの出産を控えて、「百物語」を一時中断したせいなのか、百物語を聞くことで富次郎の体内に蓄積したきたせいなのか、三話目では、富次郎は物語を聞いた後に、話の封印のために描いていた絵を描くことを断念し、百物語の存続が怪しくなっています。

このあたりは少しネタバレすると、四話目に出てくる「人ならぬ」村人の優しさか富次郎のやる気を呼び起こしているので、一先ず安心というところなのですが、次巻以降に不安の残るところです。三島屋には跡取りの伊一郎も帰還し、富次郎の居場所もだんだんとなくなっているところでもあり、ひょっとすると「聞き手」の交代もありうるかも、ですね

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