魚系でも立派な”定食”だ ー 今 柊二「お魚バンザイ!」

定食といえば肉、フライといったほうが主流であると思うのだが、年齢を重ねると、そうしたガッツリ系が毎日、というのは辛くなって、「魚」が食べたくなるのが日本人というもののような気が「勝手に」している。ところが、「魚」の料理でなく、「定食」を扱った本というは、そんなに見たことはないのだが、そこをきっとりと押さえているのが「定食」で定評のある 今 柊二氏の「お魚バンザイ!」(竹書房)
構成は
第1章 焼いて、煮て、揚げて!さぁさぁ、お魚道
 定食界の4番バッター・焼き魚
 意外と出会えない煮魚
 ワンダフル・サバ・ワールド!
 海鮮揚げ物道
第2章 回転&お値打ち寿司を食べ歩き
第3章 海の恵みを満喫!!新鮮な刺し身と丼を求めて
第4章 日本一の魚河岸探訪 さようなら・・築地
第5章 中華vs洋食 お魚バトル
となっていて、定番の「焼き魚定食」系から寿司、丼、中華、と「魚」を使った気取らないご飯物を網羅しているのが本書。
訪れている店は、職場や居所のせいもあって、東京・神奈川・千葉が多く、中に大阪、北海道が混ざるといった具合で、西日本や東北在住者は不満が残るかもしれないが、名店案内ではなく、素晴らしい定食のルポ、食物誌ととらえて「良し」とする。
ただ、冒頭で「ガッツリ系」とは書いたが、それは私個人のことであって、筆者は、ご飯は大盛りか追加、”寿司”の時のように寿司を食した後で蕎麦を手繰るというように大食漢は健在。
さて、魚の定食といえば個人的には「焼き魚」が愁眉である気がしていて、そこは筆者もぬかりなく、東京・麹町 「東京厨房」銀鮭定食の
かくして食べ進み、鮭の身の細いところを食べる。ここが脂がのっていて、ムチャクチャおいいしいんだよね。ここの部分だけでご飯一杯食べられますね。さらにおいしいのが皮。しかし皮のうまさがわかるのはおっさんになってからです
や、東京・練馬 「とりみき」 日替わりの焼魚定食(にしんの塩焼き)の
続けてニシンにレモンをサッと搾り、さあ食べるぞ!皮はパリパリ、身はホカホカのいいにしんだ。さらになんと白子もたっぷりと入っている!こりゃスバラシイ「おまけ」付きだよ、とものすごくうれしくなる。・・にしんは小骨がわりとあるけど、身がギシギシ詰まっている感じで適度な脂っぽさがおかず力につながっているよね。かくしてご飯と身の部分を食べ終え、残しておいた白子を〆で食べる。ねっとりとして本当にうまいなあ。
と、焼魚定食の魅力を余すところなく押してくる。

さらに個人的にはずせないな、と思うのが丼系で、チェーン系である神奈川・新横浜「てんや」の

では天丼。さてどれから食べるかな。とりあえず大きなかぼちゃを箸で半分に切って食べる。ホクホク甘くておいしいね。続けて2本あるインゲンのうち1本目をかじり、ご飯をガガガッと食べる。ご飯はやや硬めで、カリカリに揚がった天ぷらと甘めのタレと抜群の相性。ここの天丼はお菓子のようにサクサク食べられるんだよね。

から、海鮮系の東京・渋谷「のじま」ぶり丼の

海苔をめくり、ぶりをめくり、ご飯の層に行き着こうとするんだが、ぶりの層が幾重にもなっていて、ご飯になかなか辿り着かない。ようやく辿り着いたと思ったら、ご飯とぶりの間には大量のゴマが。これはものすごいなと思いつつ、ぶりを食べるとどうも「漬け」仕様になっていて、しかもワサビもしっかり利いていて、すさまじいうまさだ。

東京・自由が丘「和食萬月」ネギトロ丼の

丼の中央にネギトロ、キュウリ、ワサビ、全体に海苔とネギ、そして沢庵の刻んだものが散りばめられていて、なんとも美しい丼だ。小皿に醤油を入れてワサビを溶いて、さあ準備完了。ら〜とワサビ醤油を丼にかけて食べる。ネギトロの爽やかさ、ネギのシャリシャリ、沢庵のコリコリと、具の多彩さを柔らかめのご飯がしっかりと受け止めている。さらに漬物の沢庵とキュウリ、シラスおろしま付いている。このように様々な食材に囲まれていると、女子だけでなく、おじさんの私も幸せになれるね。

といったところまで、豊富にラインナップ。
魚系の丼ってのは、肉系の丼より一手間かかっている風情があってランクが一段高い気がするのは個人的な偏見であろうか。
さらに、こういった定番系とあわせて、築地 「禄明軒」 ホタテバター焼きライス の

このタレが絶品なのだ。レモンを絞ったため酸味とホタテの旨みが染み渡り、すごいおかず力のあるタレとなっている。それならば、ご飯はこのタレをおかずとして食べ、ホタテはホタテとして食べようと計画し、それを実行した。いやあ、こりゃおいしいな。かくしてご飯を食べ終え、ホタテを4つとも堪能した後にはキャベツが残る。当初はこれにソースをかけて食べようかと思ったが、まだあのタレが残っているのだ。そりゃキャベツにこのタレを絡めて最後まで堪能しようとキャベツを食べたのであった

といった変わり種まであるところが「定食もの」の大御所たる所以。
ただ、「人生最後の日、何を食べたいですか?」というお決まりの質問があって、私の場合、じゅうじゅうと音を立てている焼きたての「サバの塩焼き定食」というのが有力候補の一つでもある。そうした塩鯖好きには、やはり、東京・高田馬場「串鐵」 さば+もつ煮定食の

続けて大根おろしに醤油をかけてサバを裏返す。裏返して身の方から食べるのが私は好きなんですよね。いやあ、それにしてもおいしそうなサバだ。いろいろな店でサバを食べてきたけど、ここのサバの焼き加減は抜群なんだよね、と箸を入れて身をとり大根おろしとともに口に運ぶ。おお、相変わらずサバの脂と身のホロホロした具合、そして大根おろしの沢う¥や傘が最高のおかず力。

とか
東京・渋谷 やよい軒「サバ塩定食」の

まずはレモンを全体にかけ、大根おろしに醤油を垂らして準備完了。サバに箸を入れる。素晴らしくパリパリに焼けていて、箸で身をつまむとホロホロと取れる。大根おろしとともに口に入れると、爽やかかつ脂ののった身が素晴らしいおかず力に。ああ、うまい。日本人に生まれてサバ塩を食べられて良かったと本当に思うよ。

といった「お魚定食」の定番系は非常に好印象。
本書にいう「お魚欲求モード」が高まっている年代の方々には、読んでいても胃もたれのしない食べ物本であります。

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