意識の慮外にあった古代マケドニアが以外に面白い ー 岩明均「ヒストリエ 1」

甘めの古代史ものかなという第一印象であったのだが、読み進むつれて、これはしっかりとした古代ギリシアの歴史物語であるとともに、一人の男の子の成長物語でもあるのだな、と認識を改め、きちっとエントリーをしておこうと思い立った次第。

ということで、岩明均「ヒストリエ」の第1巻。

収録は

第1話 地球儀
第2話 故郷カルディア・1
第3話 故郷カルディア・2
第4話 故郷カルディア・3
第5話 図書室・1
第6話 図書室・2
第7話 同じ夢
第8話 スキタイ流
第9話 体育教練

となっていて、将来はマケドニアの柱石となるエウメネスのお披露目と幼年時代が語られるのが第1巻。

 

お披露目の部分では、ギリシアの仇敵であるペルシアでのアルキメデスとの出会い、それに続く故郷カルディアへの帰郷と怪しげな隻眼の商人(?)との出会いが語られ、カルディア入城後の焼け果てたかっての我が家で回想する、幼年時代は、郷里カルディアに起きるスキタイ奴隷の陰惨な事件もまだその端緒であるし、エウメネスの出生の秘密もまだ「霧の中」という牧歌的な時である。

初見のとおり、なんと言っても、ギリシアといえば学校時代の歴史の時間の最初の頃で少しばかり知るのがいいところで、それ以降は忘却のかなたにあるのが通例。しかもその内容も、ギリシアのアテネやスパルタといったところが王道で、マケドニアとなると、アレクサンダー大王が急遽、歴史の檜舞台に登場して、ヨーロッパからアジア、インドまで席巻するのだが、その経緯はよくわからねー、というのが正直なところ。

有名なハルパゴスの「ば〜〜っかじゃねえの」エピソードは、街の高利貸に買われたスキタイ人の奴隷の様子をきっかけに、友人たちに「ペルシア帝国はスキタイ人の残忍さでできた」という話を語るところで出てくる。
ただ、ヘロドトスの「歴史」の原本では、ハルパゴスに残忍な仕打ちをしたアステュアゲスにもそれなりの事情があったようで、娘の子供に自分の王位を脅かされるという予言を阻止するためにハルパゴスに命じたことが無視されたといった混みいった事情があるらしく、なんとも単純にはいかないようではある。

といったところで乱暴に総括すると、なにやら冒険の匂いがふつふつとしてくるのが第1巻である、今後、第2巻以降でエウメネスの放浪の旅が語られるので、そこは乞うご期待というところで、この巻は次回以降のワクワクとした期待感を秘めつつ、これからの主要な登場人物を確認していく、といったところで十分であろうか。
ただ、エウメネスの一筋ではいかない「賢さ」といったところを確認はしておきましょうかね。

Amazon.co.jp

コメント

タイトルとURLをコピーしました