「孫子」ビジネスを応用する”コツ”をつかむ — マンガ 齋藤孝が教える「孫子の兵法」の活かし方

プレジデント・オンラインに戦略論と失敗学の権威・野中郁次郎氏の記事「なぜ”孫子”は世界のリーダーに愛されるか」という記事を書いておられる。

「孫子」は、孫正義氏、大前研一氏、ビル・ゲイツ氏、アメリカの元国務長官のコリン・パウエル氏など、多くのリーダーが言及することの多い書であるようで、当方も、爪の垢を煎じようと読んで見ることに。

といっても、本物の古典はちょっとツラいので「マンガ 齋藤孝が教える「孫子の兵法」の活かし方」を読んでみた。

【構成は】

序章 孫子の兵法の基本
1章 環境編>社内の環境を整える秘訣
2章 個人編>ビジネスマンとして成長するには
3章 指導者編>リーダーとして成長するには
4章 競争編>競争・交渉をうまく進める秘訣
5章 失敗・挽回編>失敗した時の対処と予防
6章 チーム編>チームをより強くする

となっていて、章ごとにマンガ、その後に、漫画で登場した孫子の言葉の解説、斉藤先生のビジネス・アドバイスといった造りですな。

【あらすじは】

西東電機というメーカーの商品企画第二課という企画セクションながらお荷物所属に配属された、鼻っ柱に強い若い女性企画マン・麻生千夏が、やる気はあるが空回りする新人・宮川亮太、左遷されている腕利きの元営業マン・高津武典、引っ込み思案で言いたいことも言えないが仕事はきっちりこなす本多摩季、パソコンオタクの幸田ツトム、といったメンバーとともに、課をまとめて新企画をまとめあげ、社内コンペに勝ち上がってヒット商品を連発し・・、といった展開。

基本、ビジネス・マンガお決まりのサクセス・ストーリーであるのだが、物語の展開が主人公が「孫子の兵法」という本を元に組織の改革や新企画に取り組んでいくという設定で「孫子」つながりを出してます。

【なぜビジネスに「孫子」なんだ?】

本書監修の斉藤孝氏によれば、「孫氏の兵法からは、現代のいちビジネスマンに必要な「交渉術」や「現実的な思考力」をまなぶことができるからです」とあるのだが、当方が思うに、ビジネスの場面がいわゆる「戦争」「戦さ」と同一視して語られるというのが一番のところだろう。ライバル企業と「勝った・負けた」を繰り広げながら、最終的にはシェアNo1を目指すと言う構図の羅針盤としては、昔から伝わった「兵法」あるいは「戦術」の書が一番効果がありそうということなんでしょうね。

ちなみに、野中郁次郎先生は、同記事で

第1に、分析的、定量的、サイエンス的思考、いわばMBA的思考に偏っていた人々にとっては、定性的でアートな判断による迅速な意思決定を重視し、知的起動説を説く「孫子」は反省のための書となる。戦いにはサイエンスとアートの両面が相互補完的に必要だからだ。第2に、分析はとは対照的に、自分の経験を頼みに戦い続けてきた人々にとっても、「孫子」の格言を読みつつ顧みると、「あれはそういうことだったのか」と経験が整理される

とこれまで戦ってきた人が自省・自戒するために読む効用をあげおられますな。
一方で、「勝つにはどうするか」の実践論はあまり述べていないので、今の中国人経営者、例えばアリババのジャック・マー会長とかHuawei創業者の任正非氏といったあたりは「毛沢東」がお気に入りということらしいです。

【まとめ】

中国の古典ってのは、インディアンの酋長のお言葉的に、抽象的な言葉が多く、そのままでは漢方薬を煎じるのと一緒で、「読み解き」「解釈」しないと、そのままでは使えない。なので、こういう解説本は必須アイテムではありますね。
もちろん、カチッとしたビジネス本を読んでもいいんだが、こうしたマンガ本がハードルが低く、お気楽、お手軽につまみ食いするにはもってこいでは。

もっとも、例えば

「軍争の難きは、迂を以て直と為し、患いを以て利となせばなり」(=敵の機先を制する難しさは、曲りくねった道を真っ直ぐな道に変え、不利な条件を有利な条件に変えることにある)

といった原文から「事前の根回しこそが大事」といったところまで導くような「強引さ」はあるので、そこはご注意のほどを。

そして、レビュアーから一言。「まずは、読め!」

【このほかのマンガの孫子解説本】

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