スタバ流の「優秀な人材」を育てるコツは? — 岩田松雄「いつ、どこでも求められる人の仕事の流儀」

会社や組織の効率性を高めるために、仕事のやり方を見直したり、労働時間を見直したり、といった「外形」の対策はいろいろ講じられるのだが、なんとなくチグハグで、「形」ばかりということが悩みのタネの組織は多いハズ。本当のところは、そこで「働く人」の心持ちが一番基本にあるので、そうした人物像を目標にした意識付けをしようと思っても、じゃあ具体的な人物像は、となると、突然茫漠としてしまって悩みこんでしまうことも多い。そういうオーソドクスなところを、スターバックスコーヒージャパンの元CEOの筆者が熱く語っているのが本書である。

【構成は】

はじめにーどんな働き方でも変わらない「大切なこと」
1章 期待以上に働く
1 周囲に「小さな感動」を起こす人
2 「役割」をとことん全うする人
3 まわりに「活気」を生み出す人
4 「先頭」に立って動く人
2章 形にして見せる
1 何を考えているかが分かる人
2 経験をどんどんオープンにする人
3 目的がいつも明らかな人
4 何でも具体的に示せる人
3章 言葉を惜しまない
1 思いを「言葉」にできる人
2 心からあふれた言葉を使う人
3 「しっかり伝わる」話をする人
4章 考えがぶれない
1 目先にとらわれない人
2 楽しそうに働く人
5章 組織を強くしていく
1 未来のために、今動く人
2 仲間のために頑張れる人
3 仕事場に「いい空気」をもたらす人
4 「問いかける力」がある人

となっていて、筆者がスターバックスやの本コカ・コーラ、ザ・ボディショップなどの経営経験から、仕事ぶりで周囲の信頼と尊敬を得て、長い間語り継がれる成果を上げている「レジェンド」と呼ばれる人の”共通項”を紹介する、というのが基本の展開。

で、その展開に沿ってレビューしてもいいのだが、少々真面目すぎてそれではつまらない。今回は、本筋とは全く関係なくも、当方が「ほう」と思った

①スタバに「レガシー」が生まれる理由(わけ)
②リーダーは役割
③イノベーションは「マーケティング」からは生まれない

の3つをご紹介。

【スタバに「レガシー」が生まれる理由(わけ)】

スターバックスといえば、そのスタッフの感動的な対応が頻出することでも有名で、本書でも「注文を間違えられて怒る「怖もて」の客が壁に投げつけた、新しい商品を黙々と片付けるスタッフ(P15)」や「心臓を患った女子高生が手術のために渡米する際、日本での最後の食事に、スターバックスのシナモンロールを希望する彼女に、勤務時間外の早朝に、それを届けたスタッフ(P30)が紹介されている。

筆者はそういった行動ができるのは、

スターバックスが特別な理由は。「人々の心を豊かで活力あるものにする」というミッションが、全店のすべてのパートナーに行き届いているから(P22)

としている。たしかにスターバックスの研修や教育のシステムは有名で「マニュアルがない?スターバックスの感動サービスは”考える接客”からきている」とか「スターバックスコーヒー マニュアルの無い究極のホスピタリティ」など、それを紹介する記事はかなりあるのだが、掘り込んで考えるべきは、なぜ、「それが行き届くようになったのか」ということ。

当方が思うに、教育の熱心さとかはあるのだろうが、一番のところは、CEO自身が、社員向けのニュースレターで紹介したりといった「褒める」行為があってのことであるように思う。やはり、組織のトップが「何が優先されるのか」「何を顕彰するのか」をはっきり示す、ということが効果的だと感じますね。

これに加えて、

私がスターバックスの研修でアメリカ・シアトルの本社に行き、お店まわりしたときに感心したのは、地区会議の冒頭でみんながよい出来事を共有化していたことでした。
いい話からはじめれば、ミーティングは雰囲気が明るくなり、ポジティブな話し合いができます(P42)

といったように、「良いこと」を共有する、ということが日常に組み込まれていることが原動力であるように思える。

多くの場合、日本人は悪いことだけを共有しようとするし、褒めることは最も苦手な項目である。このあたりは、ムリにでも改善したいところだな。

【リーダーは役割】

次は、リーダーの性質についての

私は、リーダーとは役割だと割り切ることが大切だと思っています。・・組織やチームのミッションを遂行するために与えられた一つの役割なのです。そう割り切って、そのリーダーとしての役割を演じきることが必要です(P26)

という記述がとても興味深い。リーダ論というと、どうもその精神性や道徳性が強調されすぎるきらいがあるのだが、こういう「役割論」で割り切るのは賛成。特に「社員教育」を全面に出す企業は、「精神論」を全面に打ち出すことが多くてシラケることが多いのだが、あえて「機能論」的に冷静に割り切るあたりが、只者ではない。

というのも、「役割」として見ることで、ではリーダーとしての立ち居振る舞い方であるとか決断の仕方というものを、属人的な能力ではなく、万人が利用できる「技術」として構成する可能性が大きくなるのがメリット。
よく「リーダーが育っていない」という苦情を、経営層から聞くんだが、それは、その組織の求めるリーダーの「行動パターン」や「決断パターン」を言葉にできずに、「心構え」の問題としてとらえているからことが多いからではないだろうか、と思えるのですね。優れたリーダーの「振る舞い」が全てコピーできるとは思わないが、一定レベルまで行動パターンを文章化・類型化して「学べるもの」にすることが大事なように思いますね。

【イノベーションは「マーケティング」からは生まれない】

これは、イノベーションについて語っている本には、頻繁にでてくるのだが、「じゃあ、どうすんだ」というと朦朧としてくる話奈おだが、本書では、

ユーザーの声を聴くことで「エボリューション(漸進的進化・改良)はできるかもしれません。(P76)
でも、真にオリジナルな「イノベーション(革新)」はマーケティング調査では生み出すことはできません。人はブランドの裏にある「ストーリーとしてのレガシー」を求めて商品を購入する(P81)

と、「ストーリーとしてのレガシー」というフレーズを持ち出してきている。

ここを基本に考えると、イノベーションを生むのは、自分(自社)は何を提供したいんだ、ということを、とことん追求することにあるような気がしますな。

「こだわり」がイノベーションを生む、ということかも。

【まとめ】

今回は、当方の関心の引いたところを、気ままに引用したので、原書に忠実なレビューにはなっていないが、原書は、スターバックス元CEOによる「求められる人物」論というところを抑えてあるので、そこのところは、読者はご安心を。

奇をてらったところはないので、少々地味だが、ゲーム会社「アトラス」では3期連続赤字を解消したり、ザ・ボデイショップでは売上を2倍にし、さらにスターバックスでは過去最高売上を達成するなど、経営手腕には間違いない筆者の「人材論」は「基礎は大事」ということを改めて噛み締めさせてくれますね。

そして、レビュアーから一言 「まずは、読め!」

 

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