「雑談」はビジネスを回す最高の道具だ ー 斎藤孝「雑談力があがる話し方」

「議論」や「ディベート」というのは、最近、学校教育でもビジネス現場でもその重要性を指摘されていて、その手法などについて、社員研修のカリキュラムも組まれているところも多いのだが、本書で

周囲の人に安心感や信頼感を与え、より多くの出会いやチャンスをつかむために。
社会性とコミュニケーション能力という、人生を豊かにし、仕事はもちろんのこと、あらゆる場面で必要とされる最強の能力

と持ち上げられる「雑談」については、いまだ、仕事の上では「ムダ」扱いされているところも多いのではなかろうか。

本書は、そんな「雑談」について、その重要性をあらためて明らかにし、さらにはビジネス上で大きな力にもなる「雑談力」をどう磨いていくかについてのアドバイスが本書。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめにー「沈黙は怖い。でも雑談は苦手」な人が増えている
第1章 トークや会話術とは違う、雑談の5つのルール
第2章 これで気まずくならない!雑談の基本マナー
第3章 すぐにできる、雑談の鍛え方&ネタの仕入れ方
第4章 ビジネスに使える雑談力
第5章 人、漫画、テレビ。あらゆる達人からテクを学ぼう
第6章 雑談力は雑草力。厳しい時代を「生きる力」そのもの
おわりにー雑談力は、生きることそのもの

となっていて、まずはじめのほうで「雑談には、「中身がない」からこそ、する必要があるのです」というのは、いきなりの牽制球である。とはいっても、筆者は意味のない言葉の応酬をしろ、というのではなく、「その場にいる人たちと同じ空気を共有するため、場の空気をつくるために雑談がある」といってるように、「雑談」の用途が、議論やディベートといった「白黒をつける」ことではなく、共通の意識を共有するといった「コミュニケーションの場をつくる」という用途としてとらえるべきことを示している。

そう言う観点から見ると、「雑談はあいさつ+α」」とか「雑談に結論はいらない」といった筆者のいう雑談のルールもすとんと腹入りするのである。

さらに、雑談の究極目的を、コミュニケーションの場をつくり、コミュニケーションの場を広げるととらえると

自分は話下手だから雑談は苦手。
そういう人こそ、雑談上手になれる可能性が高いのです。
言い方を換えれば、「相手本位になりましょう」ということ。
雑談は、自分よりも相手に主導権を握らせるほうが盛り上がるのです。
ここでいう「主導権を握らせる」とは、自分の話ではなく相手から話題を引き出すということ。つまりあなたが話し上手である必要など、まるでないのです。
それよりも大事なのは、「相手から出てきた言葉」に、「質問」という形で切り返す力です

雑談では、結論というゴールを求めてシュートを打ってはダメなんです。パス回しが重要なのです。

といったように、雑談の名手には「オレが、オレが」と前に出てくる人よりも、いつも一歩下がってしまいがちな人のほうが適格性があるようで、シャイで口下手で悩んでいるビジネスマンへの「朗報」といえる話になってくるのである。

そして、

相手の興味関心というフックに、「自分もそうなんです!」といった具合に話題を引っかけていくと、相手も反応を見せてくれる。
共通の話題ゆえに話も盛り上がります。
共通点相手との「具体的なフック」をひとつ見つけるそして、そのフックは具体的であるほどいい。

であったり、

伝聞情報を集めるのも雑談のネタを仕入れるひとつの方法なのです。
(略)
雑談が上手な人は「拝借したネタの伝言」が上手です

といった雑談を上手にするコツのあたり読むと、控えめなビジネスマンの方の「雑談」についてのハードルはさらに下がって、自分でも簡単にできそうに思えてくるのではなかろうか。

【レビュアーからひと言】

筆者によれば

雑談力、それは雑草の持つ生命力のようなものです。
どんな土地でもへそれこそコンクリートからでも、ちょっとしたすき間を見つけては生えてくる都会のタンポポのように、孤狡で心を閉ざしている人や不機嫌そうな男性がいでも、気にせず雑談を仕掛けて、社会とつながっていく。
雑談力がある人とは、そんな雑草力のある人であるような気がします。

といったことであるらしい。であるならば、先行きが不透明で、誰しもがイライラしがちな現代こそ、「雑談力」が求められている時はないといえる。
「自分は内向的で話下手だから」と悩んでいるビジネスマンは、雑談力を磨いてステップアップにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

雑談力が上がる話し方――30秒でうちとける会話のルール
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