最高難度の「メモ術」の極意を身につけよう ー 斎藤孝「思考を鍛えるメモ力」

仕事を上手く進めるためには、上手な情報収集と相手とのコミュニケーションが基本、とはよくいわれるのだが、その基礎の基礎となるところに、実は「上手にメモをとる」という能力が隠れていることに気づいている人は多いはず。

ビジネスで一番トラブルのもとになるのが、言った言わない、約束したはず・していない、指示したはず・聞いてないといったことなのだが、それもメモ力を高めていけば、本書によれば

メモカをきちんと身につけた人同士は、コミュニケーション能力がひじょうに高くなります。
指示を出すほうは、漏れや取りこばしがありませんし、指示されるほうも、見当はずれな方向で理解するといったことがありません

という風に揉め事の多くを防止できるものであるらしい。

そんな「メモ力」のノウハウを、四色ボールペンの活用に始まって、  読解力などなど幅広い分野で活躍する筆者がアドバイスしてくれるのが本書『斎藤孝「思考を鍛えるメモ力」(ちくま新書)』である。

【構成と注目ポイント】

構成は

はじめにー思考力のある人は手で考える
第一章 メモの活用とは何か
第二章 まずはメモ力初心者からはじめよう
第三章 「守りのメモ力」から「攻めのメモ力」へ
第四章 クリエイティブなメモ力を習得しよう
第五章 達人たちの「鬼のメモ力」
第六章 「鬼のメモ力」実践篇

となっていて、第一章でメモ力を磨いた時のメリットを述べた後、順次、初心者から中級者、そして「鬼のメモ力」の習得までを段階を追って伝授してくれ構成となっている。

その内容は、例えば、初心者向けの

私の場合は、メモ帳もかねたスケジュール手帳と、ファイルにはさんだA4の裏紙をいつも持ち歩いています。
A4の紙はプリントアウトした資料の裏紙などを使うと便利でしょう。
A4ぐらいの大きさがあると、文字だけでなく、イラストや図もどんどん書き込むことができて、あとでふれる高度なメモカを習得したときに便利です。
緑色を含む三色または四色のボールペンを用意する理由は、あとから述べます。
とにかくここで重要なのは、メモは紙に手で書く、ということです。
私は、いつも手書きならではの効力を感じています。

といったところから始まって、中級者向けの

私の場合、とでも重要だと思ったキーワードが出てきたときは、箇条書きにメモした番号の上(余自がなければ横でもいいです)に、そのキーワードを抜き出して書いておきます
(略)
講演会で話を聞くときも、箇条書きでメモしておくことをおすすめします。
1、2、3という番号は重要な順ではなく、たんに話の順番でいいのです。
「ここで話が変わったな」というときに2という番号を書き、重要だと思われる言葉やセンテンスを書いておきます。
また違う話に移ったら、3という番号を書き、重要なことを書いていきます。
そうやってメモを取れば、30とか50くらいまで番号がいって、「ずいぶん話のポイントがあったな」ということになります。

メモを取ることにある程度慣れてきたら、相手の話だけでなく、「自分ならどうする」ということを一緒に書き込む引慣をつけましょう。
相手の言葉をそのままメモするのが「守りのメモカ」だとしたら、「自分ならどうする」を書き込むのは、「攻めのメモカ」と言えます。

といった中級者向けのメモ術。そして、

資料が渡されると、私はその資料にパパッと目を通して、キーワードと思われるものに赤で丸をしていきます。するとこれがメモ代わりになるのです。
(略)
資料について説明が始まったら、それを聞きながら、大事な要点やキーワードにはどんどん赤丸をしていきます。
そして自分が疑問に思ったことや自分の考えを、緑色のボールペンで書き込んでいきます。赤いボールペンで丸をつけることで、相手の言葉を十分に受け止める守りのメモ力の構えができます。さらに緑色で自分を関わらせるのですから、守りのメモカから攻めのメモカヘ会議の資料が変化していきます

という上級者のメモ術まで、かなり具体的な方法も含めて紹介されているので、自ら実践しながらメモ力を高めていくノウハウ本として、レベルの高いつくりになっている。

このほか、エジソンやレオナルド・ダ・ヴィンチのメモ術や、筆者が明治大学で実施した学生のメモ術を高める授業の紹介など、かなりの実践例が盛り込まれているので、お得な仕上がりになっていることは保証いたします。

【レビュアーからひと言】

「メモは大事」とは思っていても、いざメモをとるとなると、講師や説明者の言うことをありのままメモをしてしまったり、ダラダラとしたものになって高度利用ができなかったり、という経験は誰にもあると思う。メモの手法というのは、こうしたノウハウ本でしっかり基礎固めをするのが大事と思うところです。

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