京都の老舗の跡取り娘の「呪詛」は解けるか?ー三好昌子「縁見屋の娘〜京の縁結び」

京都の堀川通りを南に下り、東西を貫く四条通りとの角地にある、口入業を営む「縁見屋」は、代々、男の子は生まれず、しかも娘は26歳になると突然死する「祟りつき」の家、そんな家の跡継ぎの一人娘・お輪を主人公にするのが、本書『三好昌子「縁見屋の娘〜京の縁結び」(宝島社)』。

【あらすじと読みどころ】

物語は、愛宕山の行者が、縁見屋を来訪するところが発端。縁見屋は、宗教者への寄進にも熱心で、その行者「帰燕」を、世話をしている近くのお堂の「火伏堂」の管理人にし、彼がお堂に住むことになるというところからスタートする。

本筋は、縁見屋にかかっている「男の子が生まれない」「娘も26歳で急死する」という呪詛を、この行者・帰燕、縁見屋の娘・お輪とともに、解いていく話。
呪詛の発端は、お輪の曽祖父である「正右衛門」の悪行と正右衛門によって息子を失った「千賀」という女の愛情と恨みである。この母親の魂が、縁見屋の代々の娘を「器」として、彼女たちの中に混在し、失った息子を探し求めることが、縁見屋の「祟りつき」の原因なのだが、さて、この恨みをどう晴らすか、そして、この呪詛を晴らすという行者・帰燕がどうやら、この千賀と関わりがありそうなのだが、といったことが話をややこしくするのである。
そして、正右衛門の悪行も、我が子の命を救うためなので、無闇に非難ばかりできないのが切ない。
付け加えると、山で正右衛門を救う「天狗」や捜し物の在り処を示唆する「天狗之秘図」など怪異譚につきもののアイテムもしっかり用意されてますね。

伏線の筋は、行者は「イケメン」で、行者としての腕もいい、ということで、料理屋の女将・お園をはじめたくさんの女性ファンがつく。お輪も、彼に惹かれ、彼女の幼馴染・徳次は気が気でなくて、二人の間をあれこれと邪魔をしようとするが・・・、といったところで、こうした「恋話」で因縁話の暗さを和らげている効果もあるのだが、一面、徳次の義母が我が子を想うところが、かえって、母親の業というものを強調しているところもありますな。

結末の「呪詛」からの「お輪」の解放は、京都の大火として有名な「天明の大火」を使って、呪詛の「輪」を閉じる、という手法を使うのだが、詳しくは本書でご確認を。

【レビュアーから一言】

老舗の跡取り娘の「呪詛を解く物語」と「叶わない恋愛もの」がセットになっているので、色調はちょっと暗めではあるが、主人公の「お輪」が健気で、思わず感情移入して、「頑張れ」と言いたくなる展開。最後のところの「大団円」で、「お輪」の想いが報われてるところに思わず「ほっ」としてしまいますな。

 

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