「教える」より「コーチング」が部下育成のトレンド ー 菅原裕子「コーチングの技術」

最近の職場は、リストラや合理化がいきついてしまって、多くの管理職が、マネジメントに専念できるポジションではなく、プレイイング・マネジャーとなっていることが多い。しかも、職種や経験も多種多様でな部下を抱えながら、「チーム」としての総合力と成果を求められているビジネスマンは多いのではなかろうか。
そんな時に、有効な「手法」としてよく言われるのが、「コーチング」という言葉であるのだが、じゃあ、その中身は、といった具体的なことになると、途端にぼんやりとしてしまうのではなかろうか。
そんな「コーチング」についての入門書が本書『菅原裕子「コーチングの技術 上司と部下の人間学」(講談社現代新書)』。

【構成は】

はじめに
第1章 人の可能性を開くコーチング
第2章 コーチングが発揮される環境とは
第3章 コーチングの技術
第4章 グループコーチングの技術「ファシリテーション」
第5章 セルフコーチングのすすめ
あとがき

となっていて、第1章から第2章が、コーチングの重要性の提案とコーチングが使える場面、第3章がコーチングの主なテクニック、第4章、第5章が、応用編、といった構成である

【注目ポイント】

◯コーチングとは

そもそも「コーチング」とは

コーチングは、対象者が自覚していない潜在的な知識やスキルを引き出し、それを智慧に高め、結果に結びつけていく作業です。「知っていること」と「知っていること」を結びつけ、「知っていること」と「新しい情報」を結びつけ、これまでにない「結果」を作り出すのがコーチング

ということであるのだが、これでは抽象的すぎる。端的にいうと「一方的にああしろこうしろと教え込むのではなく、相手の中の眠っている能力を引き出し、それを高めていくこと」ということで、つまりは、コーチングをする側が誘導するというよりは、コーチング側が受ける側が主導的に動くように仕向ける、ということである。

◯「聞くこと」も意外と難しい

となると、コーチングの基本的な技術としては、まず「聞くこと」が大事になるわけなのだが、そこにもまた

私たちはよく、「聞き耳を立てる」という表現をします。相手の話をよく聞こうと耳を澄ますさまを言います。ところがその「耳」には、人それぞれの「聞き方」があります。ですから「聞く耳を立てて」聞こうとすればするほど、観念という翻訳機が作動してしまいます。

といった落とし穴があって、きちんと「聞く」ためには、本書でアドバイスする「ミラーリング(鏡に写したように相手と同調した動きをすること)」や「ペーシング(相手の話し方ー速度、リズム、抑揚、声の大きさーを合わせる」や「バックトラッキング(相手の話の中からキーワードを見つけ、そのキーワードを繰り返す質問の方法)」といったテクニカルなところを習得しておいたほうがよいらしいのだが、この辺は、独学より、スクールや講座で実地に教わったほうがよい気がしてくる。

◯「望ましいもの」を与える指導法

さらに、効果的な指導方法として「望ましいもの(好子)」を与えるやり方が推奨されるのだが、

実際にやってみると、好子を与える方法は思ったより簡単にできるのですが、大抵の人は罰を与える方を好みます。なぜなら、上手くいっている状態を待つには辛抱が必要だからです。辛抱して待つより、その場で叱った方が、手間をかけずにすむと思うのでしょう。
(略)
ここでもコミットメントが重要な鍵のようです。
コミットメントとは、望んでいることが起こるまで待つ忍耐と、そのためには何でもしようという柔軟性であると述べました。好子を使って相手の行動を強化するためには、まず待つことです。

といった風で、「ちょっとやってみますね」といったようにはいかない気がする。本書では具体例として

部下が読みづらい文書を持ってきたときは、叱るのではなく「どうしたらもっと読みやすくなるだろう?」と質問したり、「ここはこう変えてはどうだろう?」と具体的に提案をします。そして、なかなかいい文書ができたと思うときに、「この文書は読みやすいね。よくできているよ」とか「努力したんだね。前よりグンとよくなった」と、相手の努力を認めるような言葉をかけます

といった例が上げられているのだが、スムーズにこれをやるには、少々トレーニングがいるような気がしますね。

◯セルフ・コーチング

さらに、自分自身への「コーチング」の一端も紹介されていて、セルフコーチングによって

よく売れるセールスマンと、そうでないセールスマンの違いについてある話を聞いたことがあります。よく売れるセールスマンは、「売れるのはこの次かな」と、売れるまでお客様のドアを叩きつづける。ところが、売れないセールスマンは「ここまでやったのに売れないのは結局ダメなんだ」とあきらめる。
この違いは、売れるセールスマンは「売れる」という結果が見えているため、単純にそれがいつかを待つだけ、売れないセールスマンは売れている結果が見えないために、あきらめてしまうということです。

とか

セルフコーチングにおいては、行動のストレッチをお勧めします。ストレッチとは、自分を引き伸ばすことです。普段はやらないようなことに挑戦してみることです。まともでない要求を自分に課すことで、日常の癖から抜け出し、いつにないわくわく感を作り出すことができます。

といったこととなるようで、、なんとなく勇気づけられるような気がしてきますね。もちろん、そのためには、テクニカルなところを身につける必要もあるので、そこは本書をはじめ書物などできちんと抑えておく必要がありそうですね。

【まとめ】

ともかく、コーチングの秘訣は

優れたコーチは、人を勝たせることを喜びとしています。スポーツ界におけるどのコーチを例にとっても、コーチが独自に脚光を浴びることはありません。選手が素晴らしい結果を作り出したとき、その業績を支えた人として、選手がスポットライトを浴びるその脇で多少の光を浴びるのです。ビジネスにおけるコーチも同じです

ということで、あくまでも、コーチングする「相手」が第一。その点で、今までの「デキる上司」が部下たちを引っ張ったり、追い立てたりして成果を上げていくという方法とは、全く異なる手法であることに間違いない。初めて部下を持って、その指導法やリーダーシップに自信が持てない方は、まずは、本書のような入門書でまず基礎知識を身に着けてから、講座やスクールを活用してみてはいかがであろうか。

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