反・藤原北家の旗手・伴善雄の暗殺事件勃発。道真どうする ー 灰原楽「応天の門 5」(バンチコミックス)

反・藤原北家の旗手・伴善雄を不吉な夢見の影響から救って、再び戦闘力を回復させた、菅原道真なのだが、今巻では、宮中の専権支配を狙う藤原基経の謀略が炸裂し、そのため、道真は藤原北家の反対派勢力にどんどん近づいていくのが今巻。

【構成と注目ポイント】

構成は

第二十二話 都にて、魂鎮めの祭の開かれること 一
第二十三話 都にて、魂鎮めの祭の開かれること 二
第二十四話 都にて、魂鎮めの祭の開かれること 三
第二十五話 都にて、魂鎮めの祭の開かれること 四
第二十六話 長谷雄、唐美人に惑わされること 一

となっていて、まずは、藤原基経が、宮中の中で民衆を呼んで、「魂鎮めの儀式」をやっては、というところがからスタート。
これが、彼の「反・藤原北家」を殲滅する謀略の幕開けらしい。

ではあるのだが、話のほうは魂鎮めの宴にいくために、闇商売の昭姫のところに「香」を買いにきたところ、針を失くしてしまって、仕事も無くしそうなお針子の女の子に出会うところから、道真の「針探し」が始まるという筋立て。

針は家の土間の藁の中に紛れてしまっているようなのだが、ここで人海戦術ではなく、

といった当時の最先端技術を投入するところが道真の本領発揮ですね。見つからなければ、別の針を調達すればいい、と思っている道真に対し、懸命に針を探す彼女の

というところで、道真が再び開眼したように思いますね。

そして基経の陰謀のほうは、帝の前で、伴善雄に酒を賜るところで仕掛けは完成。

ところが、ここで伴一族の外れものが、良房めがけて矢を射掛けるハプニングがおきるのだが、結果的に、これが善雄が致命傷を負わないで済むことになるのが幸運というものでしょうか。

この、伴善雄が飲まされた毒が、前巻で「百鬼夜行」が運んできた毒薬らしいので、基経の悪巧みも国際的な仕掛けになってますな。
ただまあ、書物で得た知識にすぎないのだが、それを使って

といった風に、伴大納言の命を救ったということで、道真は「反・藤原北家」とみなされることになりますね。

第二十六話の「長谷雄、唐美人に惑わされることは次巻に続く話になるのだが、闇商売の昭姫の秘密が明らかになる話でもある。
今巻は、密航してきた唐人を陵辱しようとした港役人が、返り討ちにあって殺されるのだが、その手口とか唐人の正体は「次巻を待て」というところでありますね。

【レビュアーから一言】

宮中の支配権をめぐる権力争いの虚々実々の騙し合いも面白いのだが、その間の庶民の「すきっ」とした物語は、脂っこいものが続いた跡の浅漬けのようなサッパリ感が味あえるのだが、今巻の「お針子の娘」のエピソードはまさにそれですね。

もちろん、道真は嫌がりながらも、その学識がかわれて、政争に巻き込まれていく様子も興味深く、そこらもしっかり楽しめること請け合いです。

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