前作「神メンタル」で、自分の人生を変えていくのに必要なのは、「メンタル=自己評価」を変えることだ、という観点から、目標を達成のための自己改革の手法をアドバイスしてくれた筆者が、今度は「他人をどう動かすか」についてアドバイスしてくれるのが、本書『星渉「神トーク 「伝え方しだい」で人生は思い通り」(KADOKAWA)』
【構成と注目ポイント】
構成は
第1章 科学的に「人の心を動かす」絶対条件
第2章 あらゆる「人間関係の悩みが消える」伝え方
第3章 自然と見方が生まれ「誰からも好かれる」伝え方
第4章 相手が「自分の思い通りに動いてくれる」新世界へ
第5章 相手の人生さえも変える「究極の神トーク」
となっていて、「人を思うように動かす」と聞くと、何かオカルト的なものかマインドコントロール的なことを想像してしまうのだが、本書でまず勧めているのは「人の心を動かす3つの絶対条件」 である
①話を聞くに値する人と思われる日常での振る舞い
②相手に「安心感」を与える
③相手の「自己重要感」(承認欲求)を満たす
を理解し、そのうえで、「相手が、”自分で気づいた”という錯覚を作り出す伝え方」をする
ということであるので、心理操作というより「コミュニケーション手法」によるスキルといったほうが良いような気がしますね。
なので、「人を動かす」ための前提となるのは、相手に自分の話を受け入れやすくするという下地作りがまず大事で、
私たちが人を動かす影響力を持つうえで大切なのは、相手の安心感を満たしてあげること。そして、安心感を満たすすべての原則の土台となるのが、「絶対に否定をしない」 ということ
であったり、
誰もが一度は「これが大切だ」と言われたことがあるにもかかわらず、実行できている人が圧倒的に少ない行動。そう、「最後まで(相手の)話を聞く」 ことです。 「絶対に否定をしない」+「最後まで話を聞く」
これを実行するだけで、あなたはあなたと関わる人に絶大な安心感を与えることができます
ということであるので、デキると思っている人に限って「相手の話を遮る」や「反射的に相手の意見を否定する」といったことをやりがちであるので、要注意ですね。
こういった下地を作ったうえで、相手の「自己重要感」を高まるための行動をしていく、というのが大事なのだが、これはけして相手に主導権を与えたり、相手の言うことに従って行動する、ということではなく、相手が自分が決めた、と思わせて、こちらの意図するように動いてもらうということで、本書によれば
アドバイスや指示、指摘をしたい時は、「褒める」→「アドバイス(指示、指摘)」→「褒める」のサンドイッチ方式です。これによって、驚くほど、相手はやる気を出して自ら動き出します。
であったり、
アメリカのイリノイ大学の実験では、「やれ!」と命令されるよりも「お願いできるかな?」と疑問形で依頼されたほうが、平均して1・5倍ほどパフォーマンスが上がるということもわかっています。 うまく疑問形を使ってアドバイスを求めることで、相手の行動をコントロールすることが可能となるのです。
といった感じでコントロールするらしく、思わず相手の言うことに乗っかってしましそうになるな、と実感しますな。
さらに
「聞き上手」とは「話を聞くことが上手」なのではなく、「相手に話させるのが上手」なのです。
(略)
相手にしてみれば「質問をされるから」話し始める。この時、会話の主導権は誰が握っているかと言えば、「質問をしている人」です。 会話の行き先は「質問」によって決められているわけです。
といった考えを基礎にした「チャンクサイズ・コントロール」という手法であったり
「人の心を動かす」影響力を持つ人は、「その人と関わるだけで、なぜかやる気が出てきたり、意欲が湧いてくる人」です。
では、いったいなぜ、相手はそのような気持ちになるのか? それは、「自分でやってみたい」と思える「決定権」と、そこから来る高揚感が源となっているのです。
やることを一から十まですべて細かく指示されたら、このような感覚は生まれません。「自分にもできそうな気がする」 という感覚は、言い換えれば「自己重要感」の高揚 なのです。
(略)
そのためには「答えを教えない」と「相手に気づかせる」は、必ずセットで実行しなければなりません、
といったあたりには、「人の悪さ」を感じつつも、「人を動かす」スキルの神髄があるような気がします。
これ以外にも、『「否定をしない」+「気づかせる」+「答えを言わない」+「正さない」 の4つのルールの使い方』であるとか、『相手がミスをした場合の対処法』など、実践で役に立つアドバイスがあるので、初めて部下をもったり、プロジェクトのリーダーを任されたり、人を使うこと、人を動かすことに悩んでいるビジネスパーソンは、一度目を通しておいたほうがよい本だと思います。
【レビュアーから一言】
本書の中で、
人は「役割」を与えられるとその期待や信頼に応えようとする、役割を全うしようとするのです。 特に日本人はアメリカ人よりも、この「与えられた役割を全うする」ことや「ルールを守る」ことが得意
といったところがあるのですが、お国柄を表すとともに、日本人がやりがいをもって働くための「組織づくり」のヒントがあるように思えます。最近の組織論の中には、「肩書」というのを無用なものとして扱わうものも多いのですが、心理的な効果を考えると、あながちバカにできない効果をもっているのかもしれませんね。
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